「おにぎらず」は商標登録できる?

2017年5月8日
持続可能なブランドコミュニケーションをつくる

「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。

「おにぎらず」って、知ってますか?
私の家族が作っていた記憶がありますが、

クックパッドを見ると、よく出てきますね。

そのクックパッドの説明によれば、

マンガ『クッキングパパ』(講談社刊)22巻で「超簡単おにぎり」として紹介されているレシピなんです。ラップの上にのりを乗せて、真ん中にご飯を平たく乗せ、さらに具材をのせて、のりの四隅を折って四角にするもの。これならご飯を握る必要がなくて手が汚れず、食べやすいと大人気なのです。そして、何よりも握らないから「おにぎらず」というネーミングが面白い♪♪

(クックパッドニュース「話題の「おにぎらず」って一体なんだ?」より)

というもの。
「クッキングパパ」が最初だった、というのは有名な話らしいですね!
だったら、
「おにぎらず」って言葉は、その漫画家さんの権利じゃないの?

と思うかもしれませんね。

あるいは、

一般人も普通に使ってる、一般名称だから、誰の権利にもならないと思うでしょう。

ところが、
この「おにぎらず」、商標登録されたのです。

商標権者は「ぐるなび」です。

「それはおかしい!」と思いますか?
実際、この登録を不満に思って、異議の申し立てがされました(異議2016-900299)。
この商標登録がおかしいかどうかは、

出願で指定した商品・役務(サービス)によって、決まります。

指定商品が「おにぎり」だったら、
「おにぎり」って名前を商標登録するのは、おかしいです。
他の会社が商品「おにぎり」に、「おにぎり」という名前をつけて売ることができなくなってしまうからです。「おにぎらず」も同様で、

上記で引用したクックパッドの説明の通りの商品(おにぎらず)に、

「おにぎらず」という商標登録は、おかしいわけです。

しかし、ぐるなびの「おにぎらず」は、
「広告」や「顧客情報の収集・分析」といった分野の役務(サービス)を指定して、登録を受けたのです。
いわゆるマーケティング関連のサービスですね。だから、指定した役務(サービス)との関係では、別に何もおかしくないと。

マーケティングのサービスに「おにぎり」って名前をつけようが、「おにぎらず」って名前をつけようが、

他の会社にとっても、現状何も困らないわけですね。

(もちろん、もともと「おにぎり」って名前でマーケティング関連のサービスをしていた会社は困りますが…それは早く出願しなかったことの過失です)

確かに、「おにぎらず」という言葉を創作したわけでもないのに、
商標登録されるのは、納得がいかないかもしれませんが、

法律では、商標を創作しただけでは価値を認めてもらえないのです。

そんなわけで、異議申し立ては認められませんでした

ちなみに、「ぐるなび」は、「飲食物の提供」の分野の役務(サービス)も指定して、出願していますが、
こちらはさすがに、審査で拒絶を受けているようです。
(まだ、不服申し立ての可能性がありますが)これが登録されてしまうと、他の会社の飲食店で「おにぎらず」の名前で提供できなくなってしまう可能性があり、さすがに困ってしまうからかもしれません。

ついつい、一般的に使われている言葉、話題になった言葉が商標登録されると、
「けしからん!」「やられた!」
と思いがちなのですが、
その前に、「どの分野の商品・役務(サービス)で商標登録されているのか?」を、よくよく考えてみるといいですね。