※2024年10月29日配信メルマガVol.304より抜粋(一部加筆修正あり)
目次
「100円セール」をやめたら業績回復
日本で1000店舗以上を展開している
唯一のドーナツチェーン「ミスタードーナツ」。
あなたも一度は利用したことがあるかもしれませんが、
ミスドの名物セールだった「100円セール」は
実は2016年に終了しています。
この「100円セール」をやめた後、
ミスドの売上や利益はどうなったでしょうか?
運営するダスキンによると、
フードグループの売上が最高だったのは2007年の553億円で、
それ以来2019年まで減収し続けました。
が、その後はV字回復して、2024年3月期決算では584億円と、
過去最高の売上となりました。
営業利益も、2014年から2017年までは営業赤字を計上しましたが、
2018年から黒字転換し、2024年3月期決算では69億円と好調です。
つまり、「100円セール」をやらなくなって、
しばらくしたら業績が回復していったんですね。
「100円セール」で業績悪化した理由とは?
そもそも、「100円セール」で多くのお客さんを集客してきたはずなのに、
業績が悪化してきたのはなぜなのでしょうか?
それは、「100円セール」で来るのは
セール目的のお客さんだったから。
セール期間中にはたくさん買ってくれるのですが、
それ以外の時は「わざわざ定価で買わなくても、セールまで待てばいいや」
といって買いに来なくなる人ばかりで、売上が伸びなくなってしまったんですね。
セールでしか買わないお客さんが増えると、
結局またセールをして売上を上げるしかなく、
利益が全く出ない負のループに陥ってしまいます。
コラボ商品を中心とした”ファン作り”に方向転換
そこでミスドは、思い切って「100円セール」を廃止して、
代わりに付加価値を高めた商品をリリースすることで、
「ミスドのファン」を増やす方針に転換していきました。
具体的には、コラボ商品を中心とした、
プレミアム価格の商品を次々にリリースすることで、
高くても買ってくれるお客さんを増やしていったんですね。
例えば、「ポケモン」や「すみっコぐらし」などのキャラクターとコラボしたり、
宇治茶専門店の「祇園辻利」、フルーツ大福の「MOCHICREAM」、
シェフの「Toshi Yoroizuka」、
「GODIVA」「ピエールマルコリーニ」「ピエールエルメ」「ヴィタメール」などの高級チョコ、
最近ではチョコ菓子の「ブラックサンダー」ともコラボしていました。
他の知的財産とのコラボにより、付加価値を高める戦略です。
1個300円を超えるものもありますが、
ミスドでしか食べられなかったり、憧れのブランドとのコラボだったりで、
喜んで買うお客さんがいるんですね。
レギュラー商品の値上げで一気に客単価アップ
そこにプラス、エンゼルクリームやフレンチクルーラー、オールドファッションなどの定番商品も、
50円ほど値上げしました。
コラボ商品目当てで来店して、1個では物足りない人が2個目に定番商品を選ぶので、
「100円セール」の頃に比べると、一気に客単価が上がります。
他にも、以前ニュースでも紹介したように、
飲茶などの食事メニューを充実させるなどして、
客単価を上げることに成功しました。
※参考記事:「ミスドが「脱ドーナツ屋さん」を急ぐ納得の理由、マックやスタバを脅かす“鉄板ビジネス”の中身」
https://diamond.jp/articles/-/351963
高付加価値化戦略で負のループから抜け出せ
もちろん、数年ごとに訪れるドーナツブームの波に乗っていることもありますが、
ミスドの付加価値を高める戦略が功を奏したと言っても差し支えないでしょう。
安売りは一時的なカンフル剤としては機能しますが、
続けてしまうとブランド力を下げてしまい、
売上も利益も下がり続ける負のループに突入する恐れがあります。
コラボそのものは、ミスドのブランド力があるから組めた点はありますが、
高付加価値路線を選ぶ点は、規模の小さな中小企業にこそ必要だと言えます。