値上げしない企業がハマる落とし穴──質を下げた瞬間、客は戻らない

値上げしない企業がハマる落とし穴──質を下げた瞬間、客は戻らない

※2023年1月17日配信メルマガVol.211より抜粋(一部加筆修正あり)

相次ぐコスト高からの値上げ

コロナ禍でダメージを負った飲食業が、
現在はコスト高による価格改定(値上げ)に追い込まれています。

例えば日本マクドナルドは、
2023年1月16日から約8割の商品・メニューを
10~150円値上げすると発表しています。
https://toyokeizai.net/articles/-/644642

ハンバーガーが150円から170円、
ビッグマックが410円から450円、
マックフライポテトSサイズが160円から190円、
プレミアムローストコーヒーSサイズが100円から120円、
といった形です。

ネット上では値上げに対する悲鳴の声が上がる一方、
値上げするのが当たり前でしょ」という意見も上がっています。

値上げで業績を落とした会社も

「値決めは経営」と言われるように、
値上げに踏み切るかどうかは、
非常に重要な経営判断でしょう。

値上げで業績を落とした会社もあります。
スシローは、黄皿を10円、赤皿を15円、黒皿を30円値上げしましたが、
前年同期比で65.8%も営業利益が減少しています。
(スシローの場合は「おとり広告」の不祥事も影響していると思います)

こういうニュースを聞くと、
なかなか値上げに踏み切れないという企業も多いのではないでしょうか。

「値上げしない」方針を示す企業

他方で、「値上げしない」方針を示して注目を集めている企業もあります。
イタリアンレストランの「サイゼリヤ」です。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000282996.html

当面は値上げしないことで、お客さんの利用頻度が上がり
お客さんの数が増えて、店舗数が増えて、
売上が大きくなるという考えのようです。

サイゼリヤの売上は、コロナ前の95%まで回復しているそうで、
業務効率化により、価格を維持することができるとのこと。

ところが、私の周りのサイゼリヤの利用客に話を聞いてみると、
やや心配な声が上がっています。

「以前は美味しくて好きだったパスタが、今は麺が太くて柔らかくて、不味い」
「チキンサラダは調味料で誤魔化している」
「ガーデンサラダは前より苦くなった」
「小エビのサラダの劣化がひどい。コクとか濃厚さがないと感じた」

のような声がありました。

私自身も、2ヶ月前にサイゼリヤに行って「リゾット&牛肉のシチュー」を頼みましたが、
正直あまり美味しくありませんでした。
お肉は柔らかかったのですが、
リゾットのべちゃべちゃ感やシチューの味の薄さで、
申し訳ないですが、途中で飽きてしまいました。

もし料理の質を落として価格を維持しているのだとしたら、
これは悪手ではないかと思うのですね。

「美味しくない」と思われたら、
お客さんの利用頻度は上がらず
客数が減って店舗数が増えず
売上が減るからです。
前述の理由で価格を維持した意味がありません。

こんな時こそ「目的」から考える

人は何のために外食するのでしょうか?
「単にお腹を満たす」だけなら、
手料理すればいいでしょう。
「料理や洗い物をしたくない」なら、
外食でなくても、
コンビニのお弁当など中食でもいいはずです。

外食の目的は、
家では作れない美味しいメニューを味わえる
お店の雰囲気や食事相手との会話を楽しむ
といった、非日常感にあるのではないでしょうか。
この非日常感に対する満足度を維持することが、
飲食業にとって大切だと思えるんですね。

「満足度を維持するため」の値上げは必要

そうすると、この「満足度を維持するため」に必要なら、
やはり「値上げ」も必要な決断だと思います。
もし「値上げ」ができないのだとしたら、
量を減らす」方がマシです。
「量を減らす」と、「もう1品頼む」に繋がり、
客単価が上がるかもしれません。

一番良くないのが、「質を下げる」ことではないでしょうか。
一度客離れを起こしてしまったら、呼び戻すのが大変です。

今回は飲食業を例に挙げましたが、
他の業界にも言えることなので、
意識していきたいですね。

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