令和7年 税関の「知財侵害物品」差止データから読み解く、中小企業の模倣品対策

令和7年 税関の「知財侵害物品」差止データから読み解く、中小企業の模倣品対策

税関が公表した「令和7年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)」を見ると、模倣品・海賊版の流入は依然として大規模であり、しかも“日常品”の領域まで広がっていることが分かります。

※参考:「令和7年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)」
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2025/20260306a.html

中小企業にとっては、「自社は狙われない」ではなく「いつ狙われてもおかしくない」前提で、権利取得と水際対策(税関差止申立て)をセットで考える必要がある時代です。


1. 令和7年の差止実績:件数は高止まり、点数は大幅減

税関が差し止めた知的財産侵害物品の実績は以下のとおりです。

  • 輸入差止件数:31,760件(前年比3.8%減)
  • 輸入差止点数:763,504点(前年比41.1%減)
  • 輸入差止価額(正規品換算):約180億円
  • 1日平均:87件、2,091点を差止

点数は大きく減っていますが、件数は依然として3万件規模です。
つまり、小口の侵害品が日常的に大量に流入している構造は変わっていない、と読み取れます。


2. 仕出国(地域):件数も点数も中国が最大、点数は周辺国が伸長

件数ベース(差止件数)

  • 中国:26,292件(構成比82.8%)
  • ベトナム:2,785件(8.8%)
  • 韓国:597件(1.9%)
  • 台湾:451件(1.4%、前年比948.8%増)

点数ベース(差止点数)

  • 中国:509,793点(構成比66.8%)
  • ベトナム:127,258点(16.7%、前年比180.3%増)
  • 香港:64,112点(8.4%、前年比34.7%増)
  • バングラデシュ:32,668点(4.3%、前年比3707.5%増)

「件数」は中国が圧倒的ですが、「点数」ではベトナム・香港・バングラデシュなどの増加が目立ちます。
調達・製造・物流の分散が進む中で、特定国だけを想定した対策では足りないという示唆です。


3. 侵害される権利:中心は商標、著作権も増加傾向

件数ベース

  • 商標権侵害:29,685件(構成比92.1%)
  • 著作権侵害:1,746件(構成比5.4%、前年比26.5%増)

点数ベース

  • 商標権侵害:469,878点(構成比61.5%、前年比5.9%増)
  • 著作権侵害:213,569点(28.0%、前年比32.7%減)
  • 意匠権侵害:46,112点(6.0%、前年比84.5%減)

中小企業に直結するのは特に商標です。
模倣品対策の基本は「商標登録」ですが、実務上は 登録しただけでは止まらず、税関の差止制度を組み合わせて初めて“水際で止める”ことが可能になります。


4. 品目:衣類・バッグの定番に加え、携帯付属品・家庭雑貨が増える

件数ベース(差止件数)

  • 衣類:10,660件(30.0%)
  • バッグ類:7,560件(21.3%)
  • 靴類:3,597件(10.1%)
  • 携帯電話および付属品:2,413件(6.8%、前年比46.5%増)

点数ベース(差止点数)

  • 家庭用雑貨:113,453点(14.9%、前年比325.6%増)
  • 衣類:49,947点(6.5%)
  • 電気製品(イヤホン等):38,341点(5.0%)
  • バッグ類:31,878点(4.2%)
  • その他(53.9%):シール、たばこ・喫煙具、化粧品等

ファッション・雑貨に限らず、スマホ周辺、日用品、電気製品、化粧品など、ECで回転しやすい領域が広く狙われています。
D2Cや地域ブランド、中小メーカーにとっても無関係ではありません。


5. 輸送形態:郵便物が「件数の大半」=小口輸入が主戦場

  • 差止件数:郵便物 27,459件(86.5%)、一般貨物 4,301件(13.5%)
  • 差止点数:郵便物 238,442点(31.2%)、一般貨物 525,062点(68.8%)

件数は郵便物が中心で、点数は一般貨物が多い。
つまり、小口で拡散する偽物と、まとまった数量で入る偽物の両方が存在します。
中小企業の被害は、まず小口(郵便)から始まるケースが少なくありません。


6. 差止回避の工作も高度化:見えないようにして入れてくる

税関資料では、差止回避のための工作例も紹介されています。

  • 標章部分をワッペンやシールで覆う
  • 他の貨物に隠匿する
    ⇒開披すると別の標章が出てくる

「ロゴが見えないから大丈夫」という発想は通用せず、侵害品側も“見つからない工夫”を前提に動いているのが現実です。


7. 税関差止申立ては増加:受理件数は816件(前年比4.5%増)

令和7年末時点で、税関が受理している輸入差止申立ては 816件(前年比4.5%増)
権利別の内訳は以下のとおりです。

  • 商標権:534件(65.4%)
  • 意匠権:148件(18.1%)
  • 著作権:91件(11.2%)
  • 特許権:34件(4.2%)

「登録したら終わり」ではなく、税関で止める運用が広がっていることが分かります。


8. 中小企業が今すぐ考えるべき「模倣品対策」の優先順位

中小企業の現実に合わせると、優先順位は概ね次のとおりです。

  1. 商標登録の整備(ブランド名・ロゴ)
    まずは“止められる権利”を持つことが前提です。
  2. 主要商品の意匠・特許の検討
    「形」や「構造」で守れる領域があるなら、早期に手当てします。
  3. 税関差止申立て(必要性の高いブランドから)
    侵害が出てからではなく、出やすい業界・商品は先に備えます。
  4. EC監視・削除導線(プラットフォーム対応の型を持つ)
    模倣品は流通スピードが速いため、初動設計が重要です。
  5. 真正品識別(パッケージ、真贋判定の要素)
    対応コストを下げ、顧客被害を減らします。

まとめ

模倣品対策は、「商標登録」だけでも、「税関」だけでも不十分です。
権利取得(商標・意匠・特許)→ 水際対策(税関差止)→ 流通対策(EC削除・警告)まで、実務の流れをつないで設計することで、初めて効果が出ます。

サムライツ知財事務所では、

  • 商標・意匠の出願方針(守る範囲の設計)
  • 税関差止申立ての要否判断と手続サポート
  • 模倣品・冒用への対応(警告、削除、交渉方針)
    を、中小企業の実態に合わせて支援しています。

「うちはまだ被害がないから」と先送りにせず、被害が小さいうちに“守る仕組み”を作ることが最も費用対効果の高い対策です。
模倣品対策や税関差止申立てを検討されている場合は、サムライツ知財事務所までご相談ください。