他社の権利を侵害せずに差をつける──異業種から学ぶ“合法パクリ”の3ステップ

他社の権利を侵害せずに差をつける──異業種から学ぶ“合法パクリ”の3ステップ

※2024年10月1日配信メルマガVol.300より抜粋(一部加筆修正あり)

盗みのすすめ

さて、創刊号から読んでくれている方は、
本メルマガの最初の配信のタイトルを覚えていらっしゃるでしょうか?

そのタイトルは「盗みのすすめ」という、
およそ弁理士らしからぬ(?)タイトルでした。

盗みのすすめ
※2019年1月8日配信メルマガ創刊号より、一部加筆修正の上抜粋 さて、米Appleの創業者、スティーブ・ジョブズが引用した "とある言葉"が大変興味深かったの…
samuraitz.com

スティーブ・ジョブズがiPhoneを作るとき、
「もしソニーがiPhoneを作ったとしたら、どんなものになるだろうか?」
と問いかけながらデザイナーにサンプル(モックアップ)を作製させたのは有名ですよね。

ちなみに、特許制度も、発明の内容を公開する代わりに、
独占的な権利を与える制度となっているのですが、
これも「内容を公開するから、これをもとに新しい発明をしてね」
という趣旨です。

“丸パクリ”が危険な4つの理由

このように、世の中のビジネスは、
程度の差はあれど、
既存のビジネスをもとにして(=盗んで)できています。

とはいえ、当然ですが、
そのまんま丸パクリしたら問題が生じ得ることも理解しなければいけません。

商標や特許権などの知的財産権侵害になることもあれば、
侵害とはいえなくても、SNS等で炎上するリスクが高いです。

さらに、そもそも既存のビジネスを丸パクリしても、
所詮二番煎じに過ぎないので、
パクリ元を上回ることができません

それに、自社の文化や自分の特性に合わず、
全くうまくいかない
可能性もあります。

異業種を真似る2大メリット

ではどのようにパクったらいいのでしょうか?
1つのやり方としては
異業種のうまくいった事例をパクる
ことです。

異業種をパクるメリットは2つあります。
1つ目は「目をつけられにくい」ということです。

同業種だと当然目をつけられやすい上に、
パクリがバレると悪い噂が広まりやすいです。

一方、異業種からはチェックされにくい上に、
バレても競合じゃないから気にしないことが多いです。
また、採り入れる際は、うまくいった理由の本質を捉えて
自分の業界にフィットするようアレンジが必要なので、
そもそも丸パクリにはなりにくいからです。

2つ目のメリットは「同業との差別化になりやすい」ことです。

成功事例を真似する場合、
どうしても真似しやすい同業の事例を参考にしがちなので、
似たり寄ったりになります。

一方、異業種の事例には、
自分の業界にはなかった考え方や取り組みが含まれている場合があり、
それが差別化につながりやすいのです。

「ヤマト運輸」が、牛丼一筋で高収益を上げていた「吉野家」や
JALのパッケージツアー「JALパック」を参考にして、
個人向け宅配事業を始めたのは有名な話ですね。

知的財産権には注意

なお、当たり前ですが、パクる際には
特許や商標、著作権などの知的財産権侵害にならないように注意しましょう。

逆に、自社の守りは知的財産権を取得して固めて、
同業他社からパクリ放題にならないようにしてください。

合法パクリ3ステップ

以上より、合法的にパクるためには、「抽象化」→「再設計」→「権利チェック」の3ステップで取り組んでみることをおすすめします。ヤマト運輸の例に当てはめてみると、

  1. 抽象化 ─ 例:吉野家 → “単品特化+回転率”
  2. 再設計 ─ 宅配に置き換え「単品(小口配送)×高頻度」へ転換
  3. 権利チェック ─ 「ヤマト運輸」のネーミングやロゴは商標、ユニフォームのデザインは意匠、荷物のピッキングシステムや仕分け方法は特許等、先行する権利がないか調査

ということになります。

なお、権利チェックについては、パクリではなく、たまたま他社の権利に似てしまっただけでもアウトなので、私たち弁理士の力も借りながら慎重に行うようにしてください。

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