※2021年3月9日配信メルマガVol.114より抜粋(一部加筆修正あり)
農業の世界は「知的財産」がいっぱい
最近、とある農業系のプロジェクトに関わることになりました。
それで、色々調べていくと、
農林水産分野ほど、数多くの種類の知的財産が関わるものはないなと
驚く毎日です。
まず生産の段階で、
種苗の新品種については育成者権が存在しますし、
生産技術については、特許権と、ノウハウにするものは営業秘密があります。
次に加工の段階に移ると、
加工技術について、特許権と、ノウハウにする営業秘密、
そのうち加工機械の構造については、実用新案権も関わってきます。
そして販売の段階では、
商品の産地表示について地理的表示、
商品名とロゴについて商標権(地域団体商標権)、
包装容器などのデザインについては意匠権、
その他著作権など、さまざまな権利が関わってくるんですね。
農林水産分野はまだまだ知財活用が足りない!?
とはいえ、実際のところは、
農林水産の事業者は小規模事業者が多く、
まだまだ知的財産に無関心だったり、
知的財産権の取得にコストをかける経済的な余裕がなかったりします。
そして、独自の技術や良い点を持ちつつも、
それを生かして独自に商品化するまでは至らないことが多いようです。
もちろん、販路の問題もあるでしょう。
それでも私にお声がかかったのは、
付加価値の高い商品を開発したいという意欲の表れであり、
そのための手段として知的財産が有効であると、
期待されているのだと思いました。
オレンジ農家がイクラを作る!?
ところで、色々調べているうちに、
1つ面白い事例を発見しました。
熊本県水俣市で、
人工のイクラを製造している「オレンジ農家」があるのです。
それが「Mr.Orange」というオレンジ農家で、
元々はBtoCビジネスの経験が全くない、
普通のオレンジ農家だったそうです。
当然、なかなか商品化には至らなかったのですが、
スペインのシェフが考案した「スフェリケーション」という、
液体の周りをゼラチン質で覆う技法を応用して、
開発に成功しました。
特許も取得しています(特許第6334029号)。
Mr.Orangeの人工イクラは、
しょうゆ、わさび、梅酢、ミントシロップ、レモン等、
味のついた液体に漬け込む事だけで粒への味付けを可能とし、
さらに時間が経ってもプチッとした食感を維持できます。
自由に味付けをすることができるプレーンということで、
料理・スイーツ・カクテル・ドリンクなど用途を選ばず、
料理人たちに重宝されているそうです。
http://mr-orange.net/?mode=f6
そしてこの商品を単に「人工イクラ」とするのではなく、
「MIZUTAMAGO/みずたまご」とネーミングをして、
商標登録した上でブランド展開をしています(登録第5982554号)。
飲食店・外食産業向け食材のため、
一般販売はしていませんが、
かなり売上を伸ばしているようです。
このMr.Orangeのように、
「農業」という枠にとらわれない取り組みができるといいですね。
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