※2019年12月3日配信メルマガVol.48より抜粋(一部加筆修正あり)
知財の分析が未来の売上を作る
業態も売り上げの規模も特許出願の件数も、
ほぼ同じA社とB社があるとします。
そして、知的財産の担当部員の数だけが、
A社10名、B社20名と大きな開きがある場合、
B社の知財担当部員は、「特許出願以外」のことをしている可能性が高いです。
その「特許出願以外」の業務で、最近各社が力を入れているのが、
「データ(知財)分析」です。
特許の情報は、一般に公開されるので、
その公開された情報を分析したり他の情報と組み合わせたりすることで、
他社の戦略や研究開発の方向性、他社同士の連携の関係等を読み解くことができますし、
業界の将来のトレンドや技術分野別の強弱等をつかむこともできます。
基本的に、自社の技術情報のようなものは、
製品・サービスとしてリリースする前に、
他社に知られたくないものです。
しかし、特許出願をすれば、強制的に公開されてしまいますので、
合法的に見に行くことができるのですね。
特許情報は、世界の技術情報の70%にもなると言われてますから、
この情報を有効に活用することで、事業を有利に進めていく可能性が増えます。
こういう知財の情報分析や活用のことを、最近では「IPランドスケープ」と言います。
富士フイルムの大胆な事業転換は知財(特許)分析がカギだった
例えば、「富士フイルム」は、写真フィルムでトップシェアを誇っていましたが、
デジタルカメラの普及と、カラーフィルムの衰退の波を感じ、
「このままでは代替されてしまう」と、
早い段階で事業の構造転換を検討し始めました。
そこで、自社の技術や資源、強みを整理し、
それが適用できる市場や商品・サービスを検討したのです。
新しく進出する分野の情報は、まだ十分に持っていないため、
特許情報の分析を行いました。
分析結果をベースに、成功の確度の高い事業を軸に据えたのですね。
その結果、バイオ薬品・化粧品・医療用機器、高機能材料、複合機等のドキュメント事業、
等に重点的に取り組むことになりました。
著名な例が化粧品の「アスタリフト」です。
長年研究してきた「写真の色あせを防ぐ抗酸化技術」と「成分データベース」から、
「肌の酸化を防ぐ有用な成分を角層まで浸透・吸収させる技術」を生み出しました。
それがヒット商品となり、
富士フイルムは、今や「ビューティー&ヘルスケア」のメーカーとしても認知されています。
商標の分析も事業に役立つ
特許だけでなく、商標も分析に値する価値ある情報になることがあります。
先ほどの例でいえば「アスタリフト」は2007年9月に発売されましたが、
商標出願は富士フイルム名義で2007年1月10日にされていて、
その情報は、同年2月1日にはすでに公開されています。
指定商品には、「アスタキサンチンを配合してなる化粧品」や
「アスタキサンチンを主成分とする(中略)加工食品」などが含まれており、
富士フイルムから「アスタキサンチン」を使った商品が発売されるかもしれない…
といったことが事前にわかります。
特に化粧品分野は、ブランドイメージの維持が至上命題であり、
商標出願や意匠出願に力を入れることが多いです。
まずは自社の強みを棚卸ししよう
特許の有無に限らず、
まずは、自分の強みを具体的に棚卸しすることが大切です。
そのための「自社知財(データ)」の分析ですね。
その分析結果を抽象化して、より上位の概念で考えてみる。
その上で、様々な情報媒体から「他社知財(データ)」に触れることは、
他の分野に応用できる可能性を見出し、
新しい事業の道を開くことでしょう。
富士フイルムが「写真の色あせ防止技術」を「抗酸化」というキーワードで抽象化させ、
「化粧品」に応用したのが好例です。
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