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オリンピック・パラリンピックの東京2020大会ですが、
 開催の是非をめぐって、今でも様々な議論が巻き起こっていますよね。
 ただ、決定権が「IOC(国際オリンピック委員会)」にある点で、
 なかなか難しく、今のところ中止になる気配はなさそうです。
それで、開催するしないは別として、
 一般的に五輪は4年に1度の一大イベントということで、
 なんとかこの盛り上がりに乗っかってマーケティングしたい、便乗したい、
 という事業者さんも、多いのではないでしょうか。
しかし、五輪に関する情報発信は、
 IOCやJOC、オリパラの組織委員会などが管理する知的財産があるため、
 注意しないと法律違反になってしまう可能性があります。
※参考:
 「東京2020オリンピックに関する知的財産保護・日本代表選手等の肖像使用について」
 https://www.joc.or.jp/games/olympic/tokyo/pdf/marketing_guideline.pdf
 「大会ブランド保護基準」
 https://gtimg.tokyo2020.org/image/upload/production/ujqwxe8cojnsrmewsbfa.pdf
★五輪関連の知的財産
五輪に関する知的財産の一例として、
 まず、5色の輪がつながった、オリンピックシンボルがあります。
 これはみなさんご存知ですよね。
それから、大会のエンブレムマーク。
 最初に決定した案は、パクリ問題で取下になってしまいましたが、
 その後に採用された、
 3つの四角形を組み合わせた藍色の市松模様(チェッカーデザイン)のマークです。
そして、「TOKYO2020」という大会の名称。
 1年延期になりましたが、
 こちらの名称は変わらず用いられます。
それから大会マスコットの画像も知的財産です。
 「ミライトワ」や「ソメイティ」などがあります。
 この2人は、今の時代を反映して性別が決められていないみたいですね。
その他、五輪関連の用語、
 例えば「United by Emotion」という大会のモットーだったり、
 「オリンピアン」というオリンピック選手を表す言葉、
 日本代表選手団のマークや名称、
 「がんばれ!ニッポン!」というスローガンまで、
 商標権が取られています。
あとは選手団のユニフォームだったり、肖像写真、大会画像、メダルのデザインといったものも、
 過去のものも含めて、無断で使うことができません。
このように、五輪関連のロゴや用語や画像などは、
 商標権や著作権、不正競争防止法、肖像権、パブリシティ権
 といった権利でガチガチに固められているんですね。
★アンブッシュマーケティング
こういった権利で守られたロゴや用語を使って、
 自社の商品やサービスの広告宣伝や販売促進等ができるのは、
 きちんと契約を交わしたパートナーやスポンサーだけになります。
これらのパートナーは、
 まずオリンピックとパラリンピックとで分かれていて、
 さらに「ワールドワイドオリンピックパートナー」と、
 東京2020の
 「ゴールドパートナー」、「オフィシャルパートナー」、
 「オフィシャルサポーター」に分かれているんですね。
これらのパートナーでもないのに、
 紛らわしい表示をしたり、
 知的財産を使ったりすることは、
 「便乗商法」を意味する「アンブッシュマーケティング」とみなされて、
 警告書が届いたり、訴えられたりする可能性があります。
「アンブッシュ」というのは、「待ち伏せ」を意味していて、
 イベントの知名度に便乗しようと、待ち伏せている様子を表します。
組織委員会がまとめた「大会ブランド保護基準」によると、
 ちょっとでもオリンピックをイメージさせる文字やグラフィックの表現は、
 「待ち伏せ」とみなして、使用を禁止するよと言っているんですね。
また、この制約は、基本的には、選手の所属先とか個人スポンサーも受けることになっており、
 所定のルールを守った場合を除いて、
 例えば自社所属の選手がメダルを取ったとしても、
 そのことを自社サイトやSNSなどに掲載できないことになっているんですね。
 その所定のルールも、かなり面倒な手続が必要だったりして、
 側から見ると気の毒な感じがします。
とにかく、とんでもなく厳しい制約が設けられているということなんですね。
★厳しすぎる制約、気にしなくていい?
もちろん、こういったルールによって、
 憲法上の「表現の自由」が奪われるんじゃないかという、
 批判の声もあります。
それから、個人の商店レベルで何かやったとしても、
 よほど派手に便乗してなければ、
 いちいち摘発されることはないと思うんですよね。
ただ、もしものことを考えて、
 少しでも疑わしいことはやめておくことは、
 安全・安心なビジネスを続けていく上で重要だと思います。
もしギリギリのところを狙うのであれば、
 「オリンピック」や「東京五輪」「金メダル」
 「がんばれ!ニッポン!」といった言葉は使わず、
 もちろん五輪関連のイメージも使わないで、
 「アスリート応援」とか「突き進めニッポン!」
 といった、五輪とは関係ない言葉でほのめかす程度にされることをおすすめいたします。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。
