意匠登録を受けられない意匠(意匠法5条)をやさしく解説

意匠登録を受けられない意匠(意匠法5条)をやさしく解説

意匠は「新規性」「創作非容易性」などの要件を満たしていても、公益上の理由から登録できない場合があります。これを定めるのが意匠法5条です。審査では、次の3類型に当たると不登録になります。

公序良俗に反する意匠(5条1号)

  • 公の秩序を害するおそれがある意匠
    • 例:国内外の国旗・元首の像、皇室や外国王室の紋章など、国や皇室・王室の尊厳を害するおそれがある表示がされた意匠
    • 出願人と無関係の人の肖像や個人情報等を表した意匠も同様の扱い
    • 運動会の万国旗のように、特定の国や皇室等の尊厳を害するおそれがない態様は除外
  • 善良の風俗を害するおそれがある意匠
    • 例:わいせつな表示など、健全な心身を有する人の道徳観を不当に刺激し、しゅう恥、嫌悪の念を起こさせるもの

他人の業務に係る物品・建築物・画像と混同を生ずるおそれがある意匠(5条2号)

  • 例:他人の周知・著名な商標やそれに紛らわしい標章を意匠に表したため、当該人・団体の商品等と混同されるおそれがある場合

機能・用途上不可欠な形状・表示のみからなる意匠(5条3号)

技術的機能や規格に必然的に従う“形(または表示)”だけでは、意匠権による独占は認められません。

  • 物品の機能や建築物の用途から必然的に定まる形状のみ
    例:パラボラアンテナ内面の放物面、ガスタンクの球形本体など
  • 互換性確保や標準化された規格どおりの形状のみ(準必然的形状)
    例:JISで形状が規格化された磁心、点字ブロックの規格形状(プラットフォームの一部として)
  • 画像の用途に不可欠な表示のみ
    例:道路標識表示、ISO7000等で規格化された機器用図記号など

部分意匠の審査での見方

  • 5条1号・2号(公序良俗/混同)は、意匠全体(登録を受けようとする部分+その他の部分)で判断
  • 5条3号(不可欠形状・表示)は、登録を受けようとする部分のみで判断します。

実務でのチェックポイント

  • 標章・シンボルの扱い:国旗・紋章・著名ロゴの取り込みは避ける(混同・公序良俗リスク)。
  • “機能で決まる形だけ”にしない:代替形状の余地(デザイン上の選択)を設け、意匠的創作のある部分を盛り込む。
  • 規格部は切り分け:規格・インターフェース部は破線化(登録を受けようとする部分から外す)して、創作的部分を実線で示す(登録を受けようとする部分とする)図面設計を。
  • 画像意匠:標準記号や道路標識等、用途上必然の表示だけの出願は避け、レイアウトや動き等の視覚的特徴を設計・表現。
  • 混同回避:周知・著名標章に近いモチーフは排除し、出所誤認の恐れを事前調査で確認。

まとめ

  • 5条1号:公序良俗を害するおそれ → 不登録
  • 5条2号:他人の業務との混同のおそれ → 不登録
  • 5条3号:機能・用途上不可欠な形/表示のみ → 不登録
  • 部分意匠では、1・2号は全体、3号は部分で判断されます

図面設計(実線/破線の切り分け)と、機能必然・規格部分の扱い次第で、5条リスクは大きく左右されます。出願前の設計段階からのチェックをおすすめします。