画像の意匠権の例|GUI・アイコン・画面遷移はこう守る

画像の意匠権の例|GUI・アイコン・画面遷移はこう守る

スマホアプリの画面、医療機器のメーター、車のインパネ表示、アプリアイコン——いまや物品から離れた「画像」そのものが競争力の源泉です。日本では改正意匠法により、画像(GUI/アイコン/投影画像/画面遷移等)が幅広く意匠登録の対象になっています。ここでは、実在の登録例とあわせて、どんな画像が守れるのか・どう出願設計すべきかを弁理士目線で整理します。


登録できる「画像意匠」類型

  • 機器の操作の用に供される画像(操作画像)
    • 操作用画像(GUI)
      例:ボタン・ナビゲーション・注文画面のフロー・設定画面 など
    • アイコン画像
      例:アプリを起動するためのアイコン用画像 など
      ⇒ただし、PCやスマホ等の装飾目的の壁紙画像は保護されません
  • 機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(表示画像)
    • 機能表示画像
      例:計測結果・警告・時刻・車両情報表示・画面遷移 など
      ⇒ただし、ゲームや映像作品のコンテンツ画像は保護されません
    • 投影画像
      例:プロジェクターで床や壁に投影される操作パネル等
      ⇒ただし、装飾目的で建造物に投影されるプロジェクションマッピングの画像は保護されません

ポイント:産業の発達に寄与する「操作画像」か「表示画像」であることが前提です。このいずれにも該当しない「装飾画像」や「コンテンツ画像」は、文化の発展に寄与することを目的とするものであるため、意匠権ではなく著作権で保護する対象となります。


実在の登録例

タイトル意匠(参考図)登録番号使われている場面
情報表示用GUI(一点鎖線で囲まれた部分を除く)意匠登録第1696923
(Apple Inc.名義)
地図情報等を表示するための画像
アイコン用画像(実線部分のみ)意匠登録第1781214
(Google LLC名義)
YouTube公式編集アプリのアイコン
列車混雑度表示アプリ用アイコン画像意匠登録第1677062
(東日本旅客鉄道株式会社名義)
列車混雑度等の情報を表示するアプリを起動するアイコン
睡眠情報入力用画像(赤色で着色した部分を除く)意匠登録第1748699
(サスメド株式会社名義)
睡眠に関する情報の入力操作に用いる画面。リング状バー上の2ボタンをスライドし、位置に応じてアナログ時計の時刻を入力する

※上記は代表例です。ほかにも、自動車のメーターパネルの表示、家電タッチパネル、券売機の操作画面、スマートウォッチの文字盤など、多数が登録されています。


権利を強くする出願設計のコツ

1. 部分意匠で“肝”を押さえる

  • 画面全体ではなく、模倣されやすい特徴部のみを実線で特定。周辺は破線化等して権利の芯を明確に。

2. 連続(動的)画像で遷移を一体保護

  • ローディング→入力→確認→完了といった一連の画面を、統一デザインとして提出。断片出願より実効性が高い。

3. 関連意匠でバリエーションを面で守る

  • ダーク/ライト、ボタン位置微修正、季節テーマなど、バリエーションを関連意匠で網掛け。派生UIの逃げ道を潰す。

4. 秘密意匠でローンチまで非公開(最長3年)

  • 競合にUIを見せたくない期間は、秘密意匠の申出で公報掲載を遅らせる。

図面・写真作成の作法

  • 視認性重視:線の太さ・余白・コントラストを適正化。小要素は拡大図を併記。
  • 破線の使い分け:権利化したい要部は実線、その他は破線または省略。枠線の有無も一貫性を。
  • 連続画像:番号付与(図1〜図n)で時間順を明確化。切替条件を特徴記載に簡潔明示。
  • アイコン:背景・角丸・陰影など、識別に効く特徴を丁寧に表現。

よくある落とし穴

  • 公開前出願が大原則
    出願前のWeb掲載・展示会出品により、新規性を失い登録できなくなります。やむを得ない公開は新規性喪失の例外(グレースピリオド)の申出と証明書を忘れずに。
  • 「機能で決まる配置」は拒絶リスク
    画面配置が純粋に機能要請だけで決まると、創作非容易性で苦戦。視覚的特徴の設計を。
  • 一枚絵だけでは射程が狭い
    模倣は微修正で逃げます。部分意匠+関連意匠+連続画像で階層防御を。
  • 商標との分担を失念
    アプリアイコン名・ロゴは商標も併走が有効。UIは意匠、ネーミングは商標で長短を補完。

使い分けの指針(商標・著作権との連携)

  • 意匠:画面レイアウト・アイコン形状など“見た目”を25年保護(出願日起算、更新不可)。
  • 商標:アプリ名・ロゴ・アイコンの出所表示を長期保護(10年更新・半永久)。
  • 著作権:UI内イラスト・独自ビジュアル素材等の装飾画像の創作性を補完保護(登録不要・死後70年)。

まとめ

  • 画像(GUI/アイコン/画面遷移/投影画像)は、いま最も実務効果の高い意匠のひとつ
  • 部分意匠・関連意匠・連続画像・秘密意匠を組み合わせると、模倣耐性が段違いに上がります。
  • 公開前出願・図面設計・商標との併走まで含めた“画面デザインの知財設計”が勝ち筋です。

登録可能性の即時診断、図面・特徴記載の設計、関連意匠の組み立て、秘密意匠や海外(ハーグ)まで、案件に最適化してご提案します。