「製品を展示会で発表してしまった」「自社サイトに載せてしまった」
この場合、“公然知られた(公知)”状態となり、新規性を失っているため、意匠登録出願したとしても原則として審査で拒絶されてしまいます。
それでも、一定の条件を満たせば公開後でも出願できる“新規性喪失の例外(グレースピリオド)”が使える可能性があります。
本稿では、適用できる場面・手続・証拠・落とし穴を、実務目線でコンパクトにまとめます。
目次
1. どんな公開が“例外の対象”になるの?
次のような公開が典型です(いずれも公開から1年以内の出願が条件)。
- 出願人(創作者)自身の公開
例:自社サイト・SNS・プレスリリース・カタログ配布・展示会出品・先行販売 など - 出願人(創作者)から得た第三者による公開
例:取引先の紹介、メディア掲載 など - 博覧会・見本市等への出品
公的・公認の展示会での発表
実務ポイント
招待制の展示会や少量販売でも、秘密保持義務が無ければ“公然知られた(公知)”と判断されがちです。
「限定的だから大丈夫」と思い込まず、公開=原則NG、救済は例外手続で確保が原則。
2. いつまでに何をすればよい?
タイムリミット(国内)
- 公開から1年以内に出願。
- かつ、例外適用の申出を出願と同時に、証明書を出願日から30日以内に提出。
必要書類(代表例)
- 例外適用の申出(願書の所定欄へ記載)
- 公開事実の証明書(公開の事実として、①公開日、②公開場所、③公開者、④公開した意匠を記載)
- 展示会…出展証明・主催者証明、展示状態の写真、招待状・出展カタログ等
- 雑誌等への掲載…掲載誌名、掲載ページの写し(URL・掲載日・取得日付き)、紙媒体は発行日・号数が分かる奥付等の原本やコピー等
- 販売…販売場所、販売の事実を証明できるもの(納品書・請求書・出荷記録)、販売時の写真等
- Web上での公開…Webページのアドレス、掲載ページをプリントアウトしたもの、公証役場での確定日付取得、第三者機関発行のタイムスタンプ付きデータ、ウェブアーカイブの写し等
コツ:いつ/どこで/誰が/何を公開したかを一目で示せる一次資料を揃える。
3. 使えない/効かないケース
- 公開から1年超での出願、出願時の例外適用の申出忘れ:救済不可。
- 第三者が先に独自公開:自らの公開起因でない場合の先公開には効かない。
- 証明書不備、提出期限徒過:申出だけでは足りず、期限内立証が要件(不責事由がある場合に限り、期限の例外あり)。
- 海外出願:国により制度・要件が異なる場合あり(後述)。
4. 海外出願との関係
- 国ごとにグレースピリオドの有無・長さが違う。
例:EU意匠・米国は自己開示から12か月、中国は限定的な場合に限り6か月など。 - 最善策:公開前にまず出願。海外も視野なら、日本先願 → 6か月以内にパリ優先で各国へ。
5. 落とし穴チェックリスト
- 「社外者参加の社内発表」は“公然知られた(公知)”となる可能性(秘密保持義務がなければ、新規性喪失の例外手続が必要)
- 招待制展示会でも秘密保持義務が無ければ公知
- 申出漏れ(願書記載忘れ)は致命的
- 証明書の日付・発行主体が曖昧だとアウト
- 海外も日本と同じと思い込みは厳禁
6. 実務テンプレ
- 公開不可避が判明 → 公開日・内容の特定、証明書収集開始
- 国内出願(例外申出を同時に) → 30日以内を目安に証明書提出
- 海外:6か月以内に優先権主張で主要国へ。各国要件を事前照合
7. まとめ
- 公開後でも、新規性喪失の例外(グレースピリオド)で救える可能性。
- 成否は申出+証明書+期限管理にかかる。
- 海外は取扱いがさまざま。基本は公開前出願、やむを得ない公開は証明書のための証拠化とスケジュール管理が生命線。
ご相談ください
- 適用可否の即時判定(公開態様・日付・証拠)
- 申出記載・証拠パッケージ作成
- 海外出願(パリ優先/ハーグ)を踏まえたスケジューリング
公開予定・公開済みのどちらでも、早めの対応が鍵です。いつでもご相談ください。