商品のデザインや店舗の内装、アプリの画面など、私たちの身の回りには多くの「デザイン」があります。
しかし、そのすべてが意匠登録できるわけではありません。
この記事では、弁理士の視点から「意匠登録できるもの・できないもの」について、具体例を交えてわかりやすく解説します。
目次
意匠登録できるもの(保護対象)
意匠法2条では「物品、建築物、画像」などの形状・模様・色彩(またはその結合)であって、視覚を通じて美感を起こさせるものが登録対象とされています。
具体的には以下のようなものです。
1. 物品の形状・模様・色彩
物品の一例:
- 家電製品(例:扇風機、トースター、掃除機、アイロン、照明器具等)
- 文房具(例:はさみ、ペン、ノート、定規、印鑑等)
- 家具(例:椅子、机、棚、ソファ、ハンガーラック等)
- 衣類(例:シャツ、ズボン、帽子、靴、ベルト等)
- 日用品(例:マスク、歯ブラシ、タオル、クッション、皿等)
2. 包装・容器
- 化粧品のボトル
- 飲料容器
3. 建築物
- 建物の外観デザイン(例:商業用建築物、住宅、工場、競技場、橋梁、煙突等)
4. 内装デザイン
- 店舗や事務所の内装(例:店舗のインテリアデザイン、ディスプレイデザイン、オフィススペースのデザイン)
5. 画像デザイン(GUI)
- スマホアプリの操作画面
- 地図アプリや検索アプリのアイコン
- 車のメーターパネルなどのディスプレイ画像
意匠登録できないもの(非対象・拒絶される例)
1. 物品や建築物の形状等、画像でなく、視覚を通じて美感を起こさせないもの
①物品と認められないもの
意匠法でいう「物品」とは、有体物のうち、市場で流通する動産をいいます。
- 不動産(例:土地、土地の定着物)
- 固体以外のもの(例:電気・光・熱などの無体物、気体・液体など固有の形状等を有しないもの)
- 粉状物及び粒状物の集合しているもの
- 物品の一部であるもの(例:靴下のかかとなど、通常の取引状態で独立の製品として取引されないもの)
②物品等自体の形状等と認められないもの
「物品等自体の形状等」とは、物品等そのものが有する特徴又は性質から生じる形状等をいいます。
- ラテアートのようなものは、そのままの形状等を保ったまま流通することができないことから、物品等自体の形状等には該当しない
③視覚に訴えないもの
全体の形状等が、肉眼によって認識できるものをいいます。
- 粉状物又は粒状物の一単位
- 通常の取引状態において、外部から視認できないもの
- 肉眼によってはその形状等を認識することができないもの
④視覚を通じて美感を起こさせないもの
- 機能、作用効果を主目的としたもの
- まとまりがなく、煩雑な感じを与えるだけのもの
2. 工業上利用できない意匠
- 自然物を主たる要素として使用したもので量産できないもの(例:自然石をそのまま使用した置物など、量産不可能なデザイン)
- 純粋美術の分野に属する著作物(例:一点物の芸術作品)
意匠は産業上の利用を前提としているため、製造・販売に活用できないものは登録できません。
3. 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠
- 物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状(必然的形状)からなる意匠
- 物品の互換性確保等のために標準化された規格により定まる形状(準必然的形状)からなる意匠
4. 公序良俗に反するもの
- 公の秩序を害するおそれがある意匠(例:日本若しくは外国の元首の像又は国旗を表したデザイン、の皇室の菊花紋章や外国の王室の紋章に類似したデザイン)
- 善良の風俗を害するおそれがある意匠(例:わいせつ物等、健全な心身を有する人の道徳観を不当に刺激し、しゅう恥、嫌悪の念を起こさせるデザイン)
5. 新規性が失われているもの
出願前にすでに公知(公開・販売済み)のデザインは登録できません。
新しいデザインは「公開前に出願」が鉄則です。
6. 他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがあるもの
- 他人の著名な標章とまぎらわしいデザイン
実務上のポイント
- 出願のタイミングが重要
デザイン公開後は新規性を失うため、必ず公開前に出願しましょう。 - 部分意匠制度の活用
商品全体ではなく、特徴的な部分だけを意匠として登録することが可能です。 - 関連意匠制度でバリエーション保護
基本デザインに加えて、色違いや少し形状を変えたバリエーションもまとめて保護できます。
まとめ
- 意匠登録できるのは「物品・建築物・内装・画像」の見た目のデザイン
- 技術的機能や公序良俗に反するもの、すでに公開済みのものは登録不可
- 公開前に出願し、部分意匠や関連意匠を活用することでより強力に保護可能
弊所では、
- 意匠登録の可否調査
- 出願戦略の立案
- 商標・著作権との組み合わせによる防衛策
までトータルでサポートしています。
「自社のデザインをどのように守るべきか知りたい」という方は、ぜひご相談ください。