「意匠とデザインって同じ意味じゃないの?」
ビジネスの現場でよく混同されるこの2つの言葉ですが、実は大きな違いがあります。
この記事では、弁理士の視点から「意匠(いしょう)」と「デザイン」の違いをわかりやすく解説します。
1. デザインとは?
デザインは一般的な用語で、広い意味を持ちます。
- 見た目の美しさ(プロダクトデザイン、グラフィックデザインなど)
- 使いやすさや機能性(UI/UXデザイン)
- ブランドの世界観(店舗デザイン、広告ビジュアルなど)
つまり、見た目や機能、構造を計画的に組み合わせて、目的を達成するために作り出されたもの、という広い概念をします。
法律的な制約はなく、創造活動そのものや結果を生み出すプロセスを意味します。
2. 意匠とは?
一方「意匠」は、ここでは法律用語を指しており、意匠法に基づいて保護される「デザインのうちの一部」を指します。
意匠法では次のように定義されています。
「物品(製品)、建築物、画像などの形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」
対象は以下のとおりです。
- 製品の形状(例:スマートフォン、家具、家電)
- 包装容器(例:化粧品ボトル、飲料容器)
- 建築物・内装(例:店舗デザイン、住宅デザイン)
- 画像(例:アプリのGUI、アイコン、操作画面)
つまり「法律上、登録により独占できるデザイン」が意匠です。
3. 意匠とデザインの違い
観点 | デザイン | 意匠 |
---|---|---|
意味 | 造形・設計全般の広い概念 | デザインのうち、法律で保護される対象 |
法的性質 | 法律上の概念ではない | 意匠法で定義され、権利として保護される |
範囲 | 見た目・使い勝手・ブランド体験まで広い | 形状・模様・色彩など「視覚的デザイン」 |
保護手段 | 著作権や不正競争防止法などで一部保護可能 | 意匠登録によって独占権が発生 |
ポイント:
- デザインは創造活動そのものや結果を生み出すプロセス
- 意匠はその中で「登録して守れる部分」
4. 意匠登録するメリット
デザインを「意匠」として登録すれば、次のようなメリットがあります。
- 模倣品を差し止められる
- 損害賠償請求が可能
- ブランドの差別化を強化
- 権利としてライセンス・譲渡・担保設定が可能
実際の事例
- サーモス(THERMOS)
ステンレス製の魔法瓶の特徴的なフォルムを複数カ国で意匠登録し、市場で差別化。意匠権に基づいた侵害警告や輸入差止等の権利行使により模倣品を効果的に排除し、世界有数のステンレス製魔法瓶メーカーとなっています。 - ReFa(リファ)
美容用ローラーやヘアドライヤー等の美容機器の形状を意匠登録し、技術力に裏打ちされた高級感や高性能あふれるブランドイメージを保護。外観のみを真似する粗悪な模倣品を排除し、イメージの悪化を防いでいます。
これらは「デザインそのものをブランドの核として守る」典型例です。
5. 実務上のポイント
- 新しいデザインは公開前に出願(新規性を守るため)
- 複数パターンは「関連意匠制度」でまとめて保護
- 部分的に特徴を守るなら「部分意匠」を活用
- 商標や著作権と組み合わせて強固な防衛策を取る
6. まとめ
- デザインは広い概念(創造活動全般)
- 意匠はその中で「意匠法で保護されるデザイン」
- 登録すれば、独占権を持ち、模倣対策や資産活用が可能
事業にとって重要なデザインは「意匠」として守ることが、ブランド戦略のカギとなります。
弊所では、
- 意匠登録の可否調査
- 出願書類の作成
- 商標との組み合わせによる保護戦略
までワンストップで対応しています。
「自社デザインをどのように守るべきか」とお悩みの方は、ぜひご相談ください。