デザインは商品やサービスの差別化の源泉ですが、意匠権を取得しないまま販売を続けると、思わぬリスクに直面する可能性があります。
この記事では、意匠権を取得しない場合のリスクを弁理士がわかりやすく解説します。
意匠権を取得しない場合の主なリスク
1. 他社に模倣されても止められない
意匠登録をしていなければ、他社が同じようなデザインを製品化しても、差止請求や損害賠償請求をすることはできません。
模倣品が出回れば、価格競争の激化やブランドイメージの毀損につながります。
2. 競合が意匠登録してしまうリスク
自社が先にデザインを公開・販売していれば、原則として競合は意匠登録できません(新規性喪失)。
しかし、実務上は次のようなリスクがあります。
- 公開した事実を証明する証拠が不十分だと、特許庁に認められない
- 特に、販売数量が少ない・展示会での公開証拠を残していないなどの場合、無効審判で「本当に公然知られていたのか」が問題になることがある
- 海外では日本のような新規性喪失例外規定がない国もあり、外国で競合が登録してしまう可能性がある
仮に競合に登録されてしまうと、自社は「無効審判」を請求して争う必要があり、時間やコストの大きな負担となります。
3. 海外展開でのリスク
意匠権は国ごとに権利が発生するため、日本で公開してしまうと、海外では「新規性喪失」として登録できない国があります。
グローバルに展開する場合は、権利化を求める国へ公開前に出願しておくことが不可欠です。
4. M&A・資金調達の際の価値低下
デザインが事業の中心となっている場合、意匠権を保有していないと知的財産としての評価を得にくくなります。
M&Aや投資の場面でも「権利で守られていないブランド」と見なされ、企業価値が下がる可能性があります。
実務上のポイント
- デザインを公開・販売する前に必ず出願(新規性を守るため)
- バリエーション展開は「関連意匠制度」でまとめて保護
- 部分的に特徴を守りたい場合は「部分意匠」を活用
- 海外展開を視野に入れる場合は、国際出願(ハーグ協定)を検討
まとめ
意匠権を取得しないと、
- 他社に模倣されても止められない
- 競合に登録されるリスクがある(証拠不十分・海外市場では特に注意)
- 事業資産としての評価が下がる
といった深刻なリスクがあります。
「公開してしまったからもう遅い…」と諦めず、新規性喪失例外の活用や無効審判による対応も可能ですので、ぜひ早めにご相談ください。
弊所では、
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「自社のデザインをどう守るべきか」とお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。