はじめに
今回取り上げるのは、こちらのニュース。
・「れいわ新選組の山本太郎代表がガンダムコスプレで物議。サンライズが「認可してない」と否定声明を出す事態」(Yahoo!ニュース「エキスパートトピ」、筆者:篠原修司氏)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c9680b8891adf228a315d4b2dae240af824abf12
2025年夏、れいわ新選組の山本太郎代表が披露した「ガンダムのクワトロ・バジーナ風コスプレ」に関する騒動が、SNS上で大きな波紋を呼びました。
キャラクターの衣装のコスプレは著作権侵害?
この件について、まず確認しておきたいのが「キャラクターの衣装は著作物に該当するのか?」という点と、「その無断制作・公開は著作権上どのような権利を侵害しうるのか?」という点です。
キャラクターの衣装は、色や形状、装飾などが創作性を持っていれば、著作権法上の「美術の著作物」として保護されることがあります。特にアニメやゲームに登場するキャラクター衣装の中には、作者の創作的表現が認められ、保護対象となるものが少なくありません。
そして、それをもとに無断で衣装を制作し、ネット上に公開・配信する行為は、「複製権」(第21条)や「翻案権」(第27条)、「公衆送信権」(第23条)を侵害する可能性があります。特にビジネスや選挙活動での利用は、単なる私的使用の範囲を超えていると評価される可能性が高いでしょう。
このように法的リスクのある行為が、なぜ政治家によって行われ、なぜ問題視されたのでしょうか?
無断利用の“代償”とは:ブランドと信頼性への影響
今回の山本代表のコスプレ行為は、比例代表で出馬した声優・岡本麻弥さん(ガンダムのキャラクター・エマ・シーン役)の応援という文脈で行われました。
しかし、問題は「企業や作品のブランドを政治的な文脈で無断利用した」点にあります。株式会社バンダイナムコフィルムワークス(サンライズ)は、コスプレが「認可されたものではない」と公式に否定し、特定候補者の支持も行っていないと明言しました。
この件が象徴するのは、「注目を集めれば成功」という一時的な戦略が、ブランドとの信頼関係や知的財産権の尊重という“基盤”を損なう危険性です。たとえば、自社製品の模倣が許されないのと同様に、他者のブランド価値を無断で利用することは、法的にも倫理的にも大きな問題を孕んでいます。
中小企業・個人事業主にこそ求められる「知財リテラシー」
商標や著作物は、企業や事業者にとって「信用そのもの」と言っても過言ではありません。誠実なブランドづくりを重視する中小企業・個人事業主こそ、他者の知財にもリスペクトを持つ姿勢が求められます。
話題作りが目的であっても、権利者との信頼関係を損ねてしまっては元も子もありません。SNS発信や広告・キャンペーンでも、「これは誰の権利か?」「許可は取っているか?」という視点を忘れずにいたいものです。
今回の一件は、政治や芸能界の話題にとどまらず、日々のビジネス活動における知的財産の重要性を改めて考えさせられる出来事でした。
知的財産を「守る」ことは、他者からの信頼を「得る」ことにも直結する──それはすべての事業者に共通する、大切な心得ではないでしょうか。