はじめに
今回取り上げるのは、こちらのニュース。
・「AIキャラチャットアプリ、「鬼滅の刃」「ヒロアカ」のキャラを“無断で広告利用”か Xで物議に」(ITmedia AI+)
https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2506/09/news078.html
2024年6月、人気マンガ「鬼滅の刃」や「僕のヒーローアカデミア」のキャラクターが、AIキャラチャットアプリ「Saylo」の広告に無断で使用されているのではないか、という指摘がSNSで広まりました。
生成AI技術の発展と共に、こうした“グレーゾーン”の活用が広がる一方、知的財産の保護とのバランスが改めて問われています。
何が問題視されているのか?
アプリ「Saylo」は、画像生成や音声読み上げ機能を備えたAIキャラチャットアプリで、ユーザーが自作キャラを公開・共有できる設計です。
ところが広告では、実在の人気キャラ「甘露寺蜜璃(鬼滅の刃)」「爆豪勝己(ヒロアカ)」とのチャット風景が表示され、まるで公式コラボのような印象を与えていました。
実際、アプリ内でもこれらのキャラ名・外観に酷似したものが確認されており、ユーザーによる投稿であっても、それを広告に使ってしまった場合、企業責任が問われる可能性があります。
利用規約の免責と現実のギャップ
同アプリを運営する「X Original」は、利用規約上で“知的財産権の侵害を禁止”しながらも、「ユーザーが発信する情報は当社見解を表したものではない」「違反があれば削除・制限措置を取る」といった形で、コンテンツの責任から距離を置いています。
ただし、こうした免責条項は、あくまで運営側の論理であり、実際に第三者の著作物が広告や商用利用されていれば、著作権者側からのクレームや法的措置は免れない可能性があります。
中小企業・個人事業主としての視点
この事例から学べるのは「生成AI時代の知財リスク管理」の重要性です。特に以下の3点は、実務に直結するリスクポイントといえるでしょう:
- ユーザー生成コンテンツ(UGC)と商用利用の線引き
→ 自社プラットフォームやSNSでユーザー投稿を取り扱う場合、その内容が第三者の権利を侵害していないか確認が必要です。 - 免責条項だけでは足りない
→ 規約で「責任を負わない」と明記していても、実態として第三者の著作権を侵害するような活用の仕方をしていれば責任を問われる余地があります。 - 広告活用時の素材確認
→ 特に広告に使用する場合は、著作権や肖像権の確認を徹底すべきです。
まとめ
生成AIやUGCを活用したサービス展開は、コストを抑えつつ顧客接点を増やす魅力的な手法ですが、知的財産権への配慮を怠ると、ブランド毀損や訴訟リスクに直結します。中小企業や個人事業主であっても、コンテンツ使用時の「許諾・引用・自主制作」の原則を再確認し、健全なクリエイティブ運営を心がけていきましょう。