今回取り上げるのは、こちらのニュース。
・「新聞など100社の記事1万3000本を無断で社内共有か コンサル会社代表ら書類送検」(産経新聞)
https://www.sankei.com/article/20250530-DYECZY5O55K3BKBIEBM3DN2RHQ/
2025年5月30日、新聞や雑誌の記事を無断で社内共有したとして、投資コンサル会社代表らが著作権法違反で書類送検されました。
約100社・1万3000本に及ぶ無断コピーが問題視された今回の事件は、情報収集を日常業務とする企業にとって他人事ではありません。
知財を軽視すれば、思わぬ法的リスクに直面します。
本記事では、著作権の基本と企業がとるべき対応策について解説します。
事件の概要:情報共有がなぜ違法に?
書類送検されたのは、投資コンサルティング会社の代表と社員、および同社法人。
業務の一環として新聞記事をコピーし、社内システムやメールで共有していた行為が「複製権の侵害」にあたるとして問題視されました。
事実を伝えるだけの短文記事を除き、多くの新聞・雑誌記事には著作権があるため、利用には許諾が必要とされています。
著作権の基本:どこまでが合法?
著作権法では、個人が私的にコピーする行為(私的使用)は許されますが、業務目的での複製・共有はこれに該当しません。
また、無料記事でも著作権は保護されており、無断転載や全文コピーは違法です。
例外的に許諾なしで使えるのは「引用」の場合。これはあくまで自分の意見が主であり、出典明記と必要最小限の引用であること等が前提です。
※「引用」の要件については、過去の記事を参照してください↓
企業がとるべき対策:リスクを回避する4つの選択肢
- 引用ルールを守る:業務資料やSNS投稿では、自身の意見を主とした上で、必要な範囲の引用にとどめましょう。
- 記事のURLを共有する:記事全文のコピーを避け、タイトルや要約を添えてリンクで紹介するのが最もリスクが低い方法です。
- 記事そのものを共有する:新聞や雑誌そのものがある場合、コピーせずに記事を回覧したり、棚等に置いて社員が読めるようにしたりしておくのは、「複製」に当たらないのでOKです。
- 正式に許諾を得る:著作物の複製利用したい場合、日本複製権センター(JRRC)などの許諾機関と契約することが必要です。
まとめ
日々の情報共有やナレッジ蓄積のために、つい軽視されがちな著作権。
しかし、著作権は記者などのクリエイターの権利であり、法令順守は信頼される企業経営の基本です。知財を「守る」だけでなく「使いこなす」視点が、中小企業の競争力にもつながります。
この機会に、自社の情報活用体制を見直してみてはいかがでしょうか。