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スケボーのストリート男子で
堀米雄斗選手が、見事金メダルに輝いて、
今注目を浴びていますよね。
若くしてアメリカのロサンゼルスに拠点を置いて、
数々の大会で優勝するなど、
アメリカでもその実力を認められているプロの選手です。
そんな堀米選手の、小学校の時の卒業文集が、
今とても話題になっているのをご存知でしょうか?
一部引用させていただきますと、
と書かれています。
まさにその通りになっていますよね。
有言実行、なかなかできることではないので、
この頃から明確なビジョンを持って、
それに向かって着実も道のりを進んでこられたんだなと、
とても感銘を受けました。
★子供時代の文集を載せるのは著作権侵害?!
それで、よくアスリートとかが活躍すると、
その生い立ちにスポットを当てるために、
小学校や中学校などの卒業文集を紹介することって
よくあるかと思います。
過去には、イチローさんとか、
本田圭佑選手とかの卒業文集が話題となりました。
それで、この卒業文集の画像をネット上に載せたり、
全文を書き起こしたりすることってありますよね。
先程の堀米選手も、直筆の卒業文集の画像と、全文の書き起こしが、
ネットニュースに掲載されています。
https://hochi.news/articles/20210725-OHT1T51125.html
こちらは堀米選手のお父さんが画像提供したということで、
おそらくご本人から許可を得て掲載されていると思うのですが、
もし許可を得ていない場合や、元クラスメートなどの赤の他人が勝手に提供した場合、
やってもいいことなのでしょうか?
結論としては、著作権の複製権侵害や、公衆送信権侵害になる可能性があります。
★家族が許可してもダメ?
これ、家族が許可をしたとしてもNGなんですよね。
もちろん、文集を書いた人が今も未成年とかで、
許可をする人が親とかの、法律上「親権者」「後見人」と呼ばれる立場にある人であれば、
その人の許可で掲載できます。
普通に現在は成年で後見人もいないような場合は、
身内の許可では掲載できません。
(本人が身内に公開を許可していれば、身内が公開してもOKです)
要は、子供が書いた文章でも著作権は発生し得るし、
成年になった後は、基本的には本人の許可がないと、
文集の全文を掲載するなどの行為はできないということです。
ただし、もし文集に載せた文章の著作権を、
学校に移転する旨の明示/黙示の約束があったならば、
著作権を持っている学校の許可を得られればOKということになります。
★全文掲載は引用になる?
では、形式的には著作権の侵害であるとしても、
例外でよく出てくる「引用」に当たらないのか?
という疑問も出てくるかもしれません。
引用に該当すれば、著作権侵害ではなくなるからですね。
しかし、全文の掲載は、やはり引用には該当しません。
引用の要件の中に、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」という要件がありますが、
全文の掲載は、この「引用の目的上正当な範囲」を超えていると考えられるんですね。
また、「引用部分がサブで、自分のコンテンツ部分がメインであること」という要件もありますが、
全文載せて、そこに少し自分のコメントを載せる程度では、
「自分のコンテンツ部分がメイン」とは言えません。
したがって、全文を掲載する行為は引用とは認められません。
★実際の事件
実際にあった事件で、サッカーの中田英寿さんの中学時代の文集の全文が、
写真に撮られて無断で書籍に掲載されたのが、
著作権の複製権侵害に当たると判断されたことがあります。
サッカーと関係のない詩であり、本文の内容とも関連がなかったので、
引用と認められなかったんですね。
(東京高裁平成12年12月25日判決 平成12年(ネ)1617号事件)
★一度許可を得ている画像なら、それを使ってもいい?
では、一度マスメディアなどが本人から許可をもらって、
全文をTVや新聞屋ネットなどに載せたとした場合、
それはもうクリアになってるから使ってもいいのでは?
と思うかもしれません。
しかし、あくまでも許可をもらったのは、
そのメディアであって、
自分ではないので、やはり認められないということになります。
画像を使いたいのなら、本人なり、本人の著作権を管理するところなりに、
許可をもらうしかないんですね。
なので、今回の堀米選手の文集の画像は、
ネットには出回ってしまってますが、
私は許可をもらっていないので載せておりません。
もしどんな文集か気になる方は、
こちらのネットニュースなどで
確認されてみてください。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。