生き残るために、世界一だった事業と別れる

生き残るために、世界一だった事業と別れる

※2020年4月21日配信メルマガVol.68より抜粋(一部加筆修正あり)

世界一の事業を持つ会社がピンチに

大きなピンチに遭ったとき、方針を大きく転換することで乗り切り、
全く新しい企業に生まれる事例は少なくありません。

例えば、ノーリツ鋼機という、1部(現・東証プライム)上場企業があります。
この会社は、世界で初めてモノクロフィルム現像工程の自動化に成功するなど、
写真処理機器(ミニラボ)の分野で世界一の実績を誇っていました。
1996年には上場も果たします。

ところが、2000年代に入り、デジタルカメラが普及し始めると、
写真の現像が不要になり、持ち前の技術を活かす場面が少なくなってしまいました。
それでもなかなか変わらない社内。
2004年3月期のピーク時に900億円あった売上高は2010年には3分の1に。
ピーク時に1200人だった国内の従業員も、3回の大規模リストラにより、2012年には半数以下にまで減少したそうです。

経営陣の退陣、祖業の譲渡…痛みを伴う改革で再生

潮目が変わったのが2008年。
現社長が社員だった当時、株主総会で動議を出して、当時の経営陣全員に退陣してもらったのです。
その後、自身が取締役、代表取締役に就任し、
「社会が必要としているもの」から逆算して事業を創造する方向に、大きくシフトしました。

具体的には、バイオベンチャーなどと提携し、
先端医療の技術開発や予防医療の事業に参入しました。
「時代遅れ」になってしまった事業から、「最先端医療」の事業に転換したのですね。
他にも、DJ機器やペン先などでトップシェアのメーカー達をグループに迎え
事業ポートフォリオを再構築していきました。

2016年には、ついに祖業である写真処理機器事業を譲渡するに至ります。
元は世界トップだった事業ですから、
ここまで思い切って決断するのは、なかなかすごいことですよね。

もちろん、いきなり事業を切り捨てたわけではなく、
少しずつ縮小してソフトランディングさせつつ、
同時並行で、新規事業の立ち上げや、M&Aを進めていたようです。
よほどの強い決意と、優秀な人材、潤沢な自己資金がなければできませんね。

長期の目標は固めすぎない

こうして考えると、今の変化の激しい世の中で、
何年も先までガチガチに定まった目標を持つのは考えものです。
今やっていることが、数年後には需要がなくなっている、なんてことは普通にあり得る話ですよね。
ましてや「ウィズコロナ」の時代で、方向転換を余儀なくされている中、
頑張って今の仕事を何も変えずに続けようとするところと、
いち早く方向転換して新しい取り組みを始めるところでは、
後者の方が生き残る確率は高そうです。

事業を要素分解して、一部だけ変えてみる

とはいえ、何をどうやって転換すれば良いのか?いきなり言われてもわからないですよね。
その場合は、要素分解してみると、わかりやすいかもしれません。

例えば、今の自分の事業を、
①商品・サービス、②地域、③客層、④営業方法(対見込み客)、⑤顧客フォロー(対既存顧客)、⑥組織、⑦資金調達
の7つの要素に分解してみます。
そのうちの1つでも、今のままでは問題があるものや、変えることができるものを考えてみると、
新しい方向性が見えてくるのではないでしょうか。

特に③客層は、これが変わるだけで、他の全ての要素も変えざるを得なくなるほど、
とてもウェイトが大きい要素だと思います。
客単価1万円くらいのこじんまりとした小料理屋が、
営業できなくなったため、
富裕層向けに、十数万円で自宅に出向いて料理を振る舞う、
「出張シェフ」みたいな取り組みを始めた話も聞きます。
あるいは、あえて食材代・交通費だけを受け取っていたところ、
気に入られて、専属料理人になったなんて話も。

強みは抽象化する

自分の強みを捨てる必要はないと思いますが、
強みを具体的に捉えすぎると、そこからの発展が難しくなります
強みを抽象化しつつ、他の領域に当てはめて具体化することで、
活路が開けてくるかもしれません。

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