※2019年8月27日配信メルマガVol.34より抜粋(一部加筆修正あり)
パクリで成功した海外のIT企業
パクリを推奨する弁理士がいるとしたら、みなさんどう思われるでしょうか?
職業倫理的に問題があるとか、仕事をなくすぞ等のご意見があるかもしれませんね。
しかし、誤解を恐れずに言えば、私はパクリ自体は否定していません。
むしろ、パクリは創造性を進化させ、産業の発達に役立つ面もある、とすら思っています。
ドイツで、パクリを繰り返すことで成功したIT企業があります。
「Rocket Internet」(https://www.rocket-internet.com/)というのですが、
ここは、既に成功しているITのスタートアップのビジネスモデルをそっくりパクった上で、米国と中国以外で素早く展開することで、成功し続けています。
ビジネスモデルそのものに特許が存在することは稀ですし、
ビジネスモデルの一部に特許があったとしても、
その技術を使わず別の方法で回避することができれば、
理論上は同じようなビジネスが作れるのですね。
海外パクリ成功企業の事例
例えば、2012年に「Rocket Internet」により開設された
「東南アジア最大のECサイト」「Lazada」は、
自社の倉庫の商品を消費者へ販売する「Amazon」型のビジネスモデル。
「Amazon」の「Seller Central」に似た注文管理や、
「Fulfillment by Amazon」に似た配送代行サービスを行っており、
昔はウェブサイトのデザインまで「Amazon」に似ていました。
https://www.lazada.com/
「Amazon」の利用者数が手薄な地域にて、
市場に合わせた形で発展して優位性を確保し、
一方で多額の資金調達を成功させて規模を拡大し、
2016年3月には年間総流通総額が13億6,000万ドルを記録したことで、
「東南アジア最大のECサイト」と称するようになったとのことです。
その直後に、「Lazada」は中国の「アリババグループ」が経営権を握ることになりました。
つまり、「Rocket Internet」は、他者のビジネスモデルを適用して事業を立ち上げ、
成長させた後、会社を売却するまでが1つの流れになっていた、というわけですね。
「Rocket Internet」は他にも、
乗用車配車アプリ「Uber」に類似する、ブラジルの「Easy Taxi」(http://www.easytaxi.com/br)や、
共同購入型クーポンサイト「Groupon」に類似する「CityDeal」(https://www.citydeals.com/)、
民泊仲介サイトの「Airbnb」に類似する「Wimdu」(https://www.wimdu.com/)、
SNSサービスの「Facebook」に類似する「StudiVz」(https://www.studivz.net)などを立ち上げ、スケールさせた後に売却しています。
買収する側としても、1から立ち上げるよりも、既にある程度成功してる事業を買う方が楽なので、ウィンウィンというわけですね(ただし、買収後も上手くいってるものばかりではありません)。
特許法もパクリを推進!?
ちなみに、特許法で最も重要な第1条によれば、
「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する」
ことが法目的として掲げられています。
新しい発明を世の中に公開する一方、
独占的な権利を与えることで、発明者(特許権者)の利益を守り、
さらなる創作意欲を掻き立てるための制度なのですね。
ここで注目なのが「利用」の文言です。
つまり、「保護」だけでは「産業の発達に寄与する」ことは想定されておらず、
「利用」がセットで初めて目的が達成されるのです。
したがって、私は「特許権のある発明」については、きちんと保護すべきで、
無断でパクる「利用」行為に対しては差止めや損害賠償等の法的措置が取られるべきだと思っています。
一方で、「特許権のない発明」や「そもそも発明でないもの」は、「保護」すらされません。
積極的にパクる「利用」をすることが、産業の発達にとっては良いことだと考えているのですね。(当然、意匠権や商標権、著作権等の他の知的財産を侵害しないことが大前提です。)
とはいえ、パクリは、法的な側面だけでなく道徳的にも受け入れ難い心理が多分にあるかと思います。
知的財産を侵害しない方法や、良心の傷まない方法で、他者の優れた点を上手に取り入れて、まだ市場のないところに応用することを検討してみるのは良いのではないでしょうか。
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