結論から言うと、「似ていない」と判断された審決がありましたが、裁判(知財高裁)では「似ている(類似)」にひっくり返った事案です(令和6年(行ケ)10104号)。
したがって実務的には、「略語+〇〇」と「フルスペル+〇〇」の商標は、「似てる可能性が高い」と考えるのが安全です。
目次
特許庁は無効審判で「非類似」と判断
本件は、商標登録無効審判(不成立)の審決に対する取消訴訟です。争点は商標法4条1項11号(先行商標との類似)でした。
- 本件商標:「COSME MUSEUM」
- 引用商標:「Cosmetic Museum」(標準文字)
特許庁(審決)は、両者とも全体で一体不可分として、
- 外観:区別可能
- 称呼:「コスメミュージアム」vs「コスメティック(チック、テック)ミュージアム」→中間音の違いで非類似
- 観念:どちらも特定の観念なし
として、非類似と判断しました(無効2024-890015)。
でも裁判所は「類似」と判断した(ここが重要)
知財高裁は、結論として両商標は類似と判断し、審決を取り消しました(令和6年(行ケ)10104号)。
ポイントは次の3つです。
1) 「COSME」は「Cosmetic」の略として一般に理解される
裁判所は、「コスメ」が「コスメティック/コスメチック」の略として知られており、「COSME」は「Cosmetic」の略として一般に認識される、と見解を示しました。
2) 外観・称呼の差は「それほど大きくない」
外観は「tic」の有無など差はあるものの、共通する文字が多く差異は大きくない。
称呼も「チック/ティック」の有無が違うだけで、前後の「コスメ」「ミュージアム」は共通し、語感が大きく異なるとはいえないとしました。
3) 観念は「化粧品の博物館」で同一
審決は「観念なし」でしたが、裁判所は両方から「化粧品の博物館」程度の観念が生じるとして、観念同一を認定。
そして、観念の同一性が外観・称呼の差を上回るとして、全体として紛れるおそれがある=類似、と判断しました。
役務と商品の類似も認定
さらに裁判所は、本件商標の指定役務(例:化粧品等の小売又は卸売の業務において行われる便益の提供)と、引用商標の指定商品(例:化粧品等)について、類似関係を認定し、4条1項11号該当(無効理由あり)と判断しました。
実務的な学び:「略語」と「フルスペル」は、想像以上に近い扱いになる
この事件が教えてくれるのは、
- 略語(COSME) と フルスペル(Cosmetic) は、取引の実情次第で「略称」として強く結び付けられる
- そうなると、外観・称呼の差があっても、観念同一で“類似”に寄り得る
という点です。
まとめ:似てる?→「似ている」と見られるリスクが高い
「COSME MUSEUM」と「Cosmetic Museum」は、特許庁では非類似とされたものの、裁判所は
- COSME=Cosmeticの略
- 観念同一(化粧品の博物館)
を重視して、類似と結論づけました。
同じように「略語 vs 原語」で出願を考えている場合、“行けそう”に見えても後から崩れることがあります。
もし、先行商標との距離感が微妙で判断が難しい場合は、出願前に一度、専門家の目で全体設計(商標の選び方・指定商品役務・拒絶理由の見立て)を確認するのが安全です。
サムライツ®︎知財事務所では、商標の類否判断だけでなく、出願全体を見たうえで
「通しやすい設計」と「通らなかった場合の打ち手」まで含めて整理します。
迷う段階でこそ、ご相談ください。
