登録商標が二段併記の場合、片方だけ使用していれば不使用取消を免れる?

登録商標が二段併記の場合、片方だけ使用していれば不使用取消を免れる?

ローマ字+カタカナ、漢字+カタカナなど、読み仮名を二段併記して出願・登録するのはよくある方法です。
1件でまとめられれば費用面のメリットもあります。

一方で、商標には不使用取消(商標法50条)があり、指定商品・役務について3年以上使用していないと、第三者の請求で取り消される可能性があります。

※参考記事:「商標を使っていないと危ない?不使用取消審判の仕組みと防衛策

商標を使っていないと危ない?不使用取消審判の仕組みと防衛策
商標は登録したら終わり…ではありません。 商標登録が無事に完了すると、多くの方が「これでもう安心」と思ってしまいます。しかし、商標は“使い続けなければ取り消され…
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では、二段併記の登録商標について、上段だけ/下段だけを使っていれば「使用」として認められるのでしょうか。

結論から言うと、認められる場合もありますが、認められない場合もあります
カギは「登録商標と社会通念上同一といえるか」です。


片方の使用でも「社会通念上同一」ならセーフになり得る

不使用取消の場面では、登録商標と完全一致していなくても、社会通念上同一と認められる範囲であれば、使用として扱われ得ます。

二段併記(例:ローマ字/カタカナ)の一方のみの使用が「社会通念上同一」とされる場面は、実務上も一定数あります。


ただし落とし穴:片方だけだと「称呼・観念」がズレてアウトになることがある

ただし、注意が必要で、片方のみの使用が「社会通念上同一」と認められない場合もあるのです。下記の事例がまさに典型です。

取消2024-300561(登録商標:AKA/エーケーエー、使用:AKA)

登録商標使用商標
AKA

登録商標が上段「AKA」/下段「エーケーエー」の二段併記であるのに対し、商標権者は請求に係る商品について、商標「AKA」を使用していることを立証し、使用の事実自体は認められました。

しかし「AKA」の欧文字は、下段の読み仮名が付いていない形で用いられると、
「エーケーエー」だけでなく、「アカ」の称呼、さらに「赤」「垢」といった観念が生じ得ます。

そのため、登録商標(AKA/エーケーエー)と使用商標(AKA)は、称呼・観念が相違し得て、社会通念上同一の商標とは認められないとして、登録が取り消された、という内容です(取消2024-300561)。

このケースが示すポイントはシンプルで、
二段併記は「読みを固定する効果」がある反面、片側だけ使うと別の読み・意味に分岐して“別物扱い”されることがある、という点です。


実務での判断軸:どんなときに“片方だけ使用”が危なくなる?

二段併記の片側使用が問題になりやすいのは、ざっくり次のような場面です。

  • 片側だけだと別の称呼が自然に生じる(例:ローマ字が一般語・人名・色名として読める等)
  • 片側だけだと別の観念が立つ(例:一般語として意味が出る/別の意味に引っ張られる)
  • 二段併記によって「読みを特定」していたのに、片側使用で特定効果が消える
  • そもそも登録の意図が「この読みで呼ばせたい」だった(=読み仮名側を外すと別物になりやすい)

逆にいえば、
上段と下段が同じ称呼・同じ観念に収束するタイプ(ローマ字とその片仮名表記など)で、取引上も一体として把握されるなら、「社会通念上同一」とされやすい傾向があります。


じゃあ二段併記は避けるべき?―おすすめの考え方

二段併記自体が悪いわけではありません。
ただし、“不使用取消リスク”まで含めて設計した方が安全です。

実務的には、次のどちらかが堅いです。

  • 登録した態様(二段併記)でそのまま使う(これが最も安全)
  • どうしても片側だけで使う運用なら、最初から別々に出願しておく
    (特に、ローマ字側が「別の読み・意味」を持ち得る場合は要注意)

「費用を1件分に抑えたい」が先に立つと、登録後に“使い方”が原因で権利が落ちる、という本末転倒が起き得ます。


最後に:二段併記の登録は「登録後の使い方」で差が出ます

二段併記は、登録の取り方としては便利です。
でも不使用取消の局面では、片側しか使っていないことが争点になりやすく、しかも称呼・観念のズレがあると、今回のように取り消しになり得ます。

  • いまの使い方で「社会通念上同一」といえるか?
  • 二段併記にしたことで、別の称呼・観念が立っていないか?
  • そもそも不使用取消に耐える証拠(いつ、何に、どう使ったか)が揃うか?

このあたりの判断が難しい場合は、サムライツ®︎知財事務所にご相談ください。
登録の可否だけでなく、登録後に権利が落ちない使い方まで含めて、現実的な設計をご提案します。