すでに同じ読み方の商標が登録されている場合、商標登録は不可能?

すでに同じ読み方の商標が登録されている場合、商標登録は不可能?

結論から言うと、「読み(称呼)が同じ」=「登録できない」とは限りません
商標の類否は、外観(見た目)・称呼(読み/音)・観念(意味)の3要素を総合して、需要者が出所を誤認・混同するおそれがあるかどうかで判断されます。

そのため、称呼が同一でも、外観や観念の違いが効いて「非類似」と判断されるケースは現実にあります。


類否判断の基本:外観・称呼・観念を“別々に見て、最後にまとめる”

商標の類否判断は、次の流れで行われます。

  1. 外観(見た目):文字の綴り、漢字/ひらがな/カタカナ/欧文字、図形の有無、全体のまとまり
  2. 称呼(読み・音):同じ音に聞こえるか、どこが強く発音されるか
  3. 観念(意味):同じ意味として理解されるか、意味が出ない(造語)か

これらを個別に判断しつつ、全体として取引者・需要者が混同するかを見ます。
さらに、取引の実情(実際の売られ方・呼ばれ方)も踏まえて最終結論が出ます。


「称呼重視だった時代」→「外観・観念も丁寧に見る判断」へ

実務感覚として、かつては称呼(読み・音)を重視する運用が強く、
「読みが同じなら厳しい」と判断されがちでした。

ただ近年は、称呼が同じでも

  • 外観がかなり違う
  • 観念が明確に違う
  • 全体として別の印象を与える(図形・構成・表記)

といった事情を丁寧に拾い、商標全体として非類似とする判断が目立つ印象があります。


称呼が同一でも「非類似」とされた最近の審決例(一覧)

※以下はご提示いただいた審決例です(原稿執筆時点の整理)。

本願商標引用商標判断審判番号ポイント(要旨)
「ISA」
「アイ エス エイ」
非類似不服2024-8746本願商標は外観上まとまりよく一体的な印象を与える。「出入国在留管理庁」の文字及び「Immigration Services Agency」並びに「ISA」の文字を関連付けて理解し、認識する
「トーサイ」非類似不服2024-20030外観・観念において相紛れるおそれがない→総合判断すれば、両者は
互いに相紛れるおそれがない
「BUG」非類似不服2025-713引用商標のキャラクター図形内の「BUG」の文字は、その直下にあるキャラクター名の略称等として理解し得る→キャラクター名と無関係の単なる「BUG」として把握するといい難い
「PAL」非類似不服2025-5242引用商標の左側図形と右側文字は、視覚的にまとまりよく一体的に表された印象を与える→構成文字全体から生じ得る「パルチャンパル」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るから類似しない
非類似不服2025-2065引用商標の頭部分が図形と認識されたら称呼が異なるし、欧文字「M」と認識されても、外観及び観念において相紛れるおそれはない
「翔」「SYOU」非類似不服2025-3317漢字と欧文字の外観の差違があり、「翔」の漢字を欧文字表記しても、必ずしも「SYOU」と表記されるといえない→記憶に残る印象が相違する
非類似不服2025-4117引用商標には送り仮名は付されておれず、人名と理解されるべき事情もない→「薫」の一般的な読みである「クン」と読まれるから、明瞭に聴別できる
非類似不服2025-7440「HOLDINGS」の文字は、他の文字と結合して、持株会社の商号の一部として用いられることが少なくない→「TASUKI」ではなく「TASUKI/HOLDINGS」で抽出され要部になる
非類似不服2025-7614本願商標下部に「Laundry Land」の欧文字部分が引用符で囲われており、図形枠内の「laundryLAND」が一連一体と印象づけられる→「LAND」部分を分離抽出し、引用商標と比較することは許されない

じゃあ「同じ読み」があっても、どんなときに勝ち目が出る?

称呼が同一でも、次のような事情があると「非類似」判断の可能性が出てきます。

  • 外観がはっきり違う
    (漢字一字 vs ローマ字、図形付き vs 文字のみ、長いフレーズ構成など)
  • 観念が明確に違う/片方は観念が出ない
    (同音でも意味が別、片方は造語など)
  • 全体として“別の塊”として把握される
    (共通部分があっても、他の要素が強く、全体印象が分かれる)
  • 商品・役務の関係性が薄い
    (同一・類似の商品役務でなければ、混同のおそれが下がる)

とはいえ注意:同じ読みがあると「拒絶されやすい」のも事実

ここは誤解が起きやすいのですが、
「同じ読みでも通ることがある」=「通りやすい」ではありません。

称呼が同一だと、審査ではどうしても警戒されやすく、
外観・観念の差が弱い場合は、ストレートに類似とされる可能性は十分あります。

また、類否(4条1項11号)をクリアしても、

  • 識別力(3条)
  • 指定商品・役務の設計(6条含む)
  • 混同(4条1項15号など)
  • 先行周知商標・不正目的など

別の理由で止まることもあります。


最後に:同じ読みがあるなら「諦める前に、設計」で勝負できます

称呼が同じ商標がすでにあると、そこで思考停止しがちです。
でも実務では、外観・観念・指定商品役務の設計次第で、勝負になることがあります。

「自分の商標は類似になりそうか?」「他の拒絶理由に引っかかっていないか?」
判断が難しい場合は、早い段階で専門家に確認するのが安全です。

サムライツ®︎知財事務所では、商標の類否判断だけでなく、出願全体を見たうえで
「通しやすい設計」と「通らなかった場合の打ち手」まで含めて整理します。
迷う段階でこそ、ご相談ください。