成分名を含んだサプリの商品名は商標登録できますか?

成分名を含んだサプリの商品名は商標登録できますか?

サプリの商品名を考えていると、こんなモヤモヤが出てきやすいと思います。

  • 「ビタミンCサプリ」って、そのまま商標登録できるの?
  • 「NMNプレミアム」とか成分名を入れたネーミング、権利的に大丈夫?
  • そもそも、成分名って商標で守れるの? それとも誰でも自由に使うもの?

結論からいうと、

「成分名そのもの+サプリによくある一般語だけ」の商品名は、原則として商標登録はかなり難しいです。

ただし、

  • 成分名に造語やブランド要素を足している
  • 成分名はあくまで説明的なサブ要素で、全体としては固有のネーミングになっている

といった場合には、登録の余地が出てくることもあります。

この記事では、

  • なぜ成分名だけのサプリ名は登録が難しいのか
  • どんなパターンなら登録の余地が出てくるのか
  • 実務でどうネーミングを設計すればいいか

を、できるだけ噛み砕いて解説します。


1. なぜ「成分名だけのサプリ名」は登録が難しいのか

商標として登録されるための前提は、

その名前が「自分のサプリ」と「他人のサプリ」を見分ける“目印”になっているか
自他商品識別機能があるか

です。

ところが、例えばこんな名前だとどうでしょう。

  • 「ビタミンCサプリ」
  • 「鉄分タブレット」
  • 「NMNサプリメント」
  • 「DHA・EPAカプセル」
  • 「乳酸菌チュアブル」

どれも、

  • 何の成分が入っているか(ビタミンC・鉄・NMN…)
  • どんな目的のサプリか(栄養補給・健康維持)

などを説明しているだけで、
「どこの会社の商品か」までは分からないですよね。

こういう

成分・品質・効能・用途を「普通に説明しているだけ」の名前

は、商標法第3条第1項第3号に当たるとして、
「識別力がない」=原則登録NGと判断されやすくなります。


2. 登録が難しいパターン/工夫次第でチャンスが出るパターン

登録がほぼ無理な典型パターン

次のようなパターンは、ほぼ説明語だけで構成されているため、登録がかなり難しくなります。

① 成分名+「サプリ」「タブレット」「カプセル」だけ

  • 「ビタミンCタブレット」
  • 「鉄サプリ」
  • 「NMNカプセル」
  • 「DHAサプリメント」

② 成分名+効能ワードをそのまま並べただけ

  • 「コラーゲン美肌サプリ」
  • 「DHA記憶力サポート」
  • 「鉄分貧血対策サプリ」
  • 「乳酸菌腸活タブレット」

どれも “説明ワードの寄せ集め” なので、

  • 誰が作ったかは分からない
  • 「あの商品」としてのブランド性が弱い

商標としての識別力が弱く、拒絶されやすいです。


工夫次第で登録の余地が出てくるパターン

ポイントは一つ。

成分名が入っていても、全体として「固有のブランド名」として機能しているか

① 成分名+造語・ブランド要素の組み合わせ

イメージとして、こんな感じです。

  • 「DHC Super Collagen」(登録第5953108号)
  • 「NMNPURE」(登録第5966592号)
  • 「ザバスジュニアプロテイン」(登録第6426080号)
  • 「美鉄習慣」(登録第6602876号)
  • 「マカと亜鉛の恵み」(登録第6235366号)

ここでの肝は、

  • 「DHC」「ザバス」といった部分がブランドの“核”として機能している
  • 「NMNPURE」「美鉄習慣」「マカと亜鉛の恵み」のように、商標全体で造語化されている
  • 成分名(Collagen・NMN・プロテイン・鉄・マカ・亜鉛)は、それを補足する位置付け

というバランスになっていることです。

こうした構成なら、

  • 登録できるかどうかは個別審査次第ですが、
  • 「成分説明名」よりは、商標としての識別力が認められる余地がある

と言いやすくなります。

② 造語ブランド+成分名は“サブネーム”にする

もっとおすすめなのは、

コアになるブランド名(造語)をきちんと決めて、
成分名は「説明文」にまわしてあげる設計です。

例えば:

  • ブランド名(商標のコア):
    「Nature Made(ネイチャーメイド)」
  • 商品表示:
    「Nature Made 亜鉛」

この場合、

  • 商標として守るべきは「Nature Made/ネイチャーメイド」
  • 「亜鉛」は商品の説明文

という整理ができます。

出願も、

  • 「Nature Made」単体
  • またはロゴ化した「Nature Made+図形」

など、造語部分を中心に検討するのが実務的です。


3. 成分名そのものを商標登録できるケースはある?

一般名称として広く使われる成分名はほぼNG

たとえば、

  • 「ビタミンC」
  • 「鉄」
  • 「亜鉛」
  • 「NMN」
  • 「コエンザイムQ10」
  • 「乳酸菌」

といった名称は、サプリ業界全体で一般名称として当たり前に使われている言葉です。

こういった名前は、

誰でも説明のために自由に使えるべきもの

とされており、特定の会社だけが商標として独占することは認められません

一方で、素材ブランドとしての「成分名っぽい造語」は登録されていることも

一方で、

  • ある会社が開発した独自素材の名前
  • 一般名称ではなく、その企業オリジナルの造語

であれば、その名称自体が商標登録されていることはあります。

イメージ:

  • 「マリンプラセンタ」(登録第4995785号他)
  • 「メタプロール」(登録第6209140号)
  • 「フラバンジェノール」(登録第4580641号他)
  • 「コアポリフェノール」 (登録第6698536号他)など

こうした素材ブランド名は、

  • 成分“っぽく”見えても実は造語
  • 特定企業が商標権を持っている

ということが多いです。

この場合、

  • 商品名に勝手に入れてしまうと
    逆に他人の商標権侵害リスクが出てきます。

なので、

成分名ぽい造語=自由に使えるとは限らない

という点も、あわせて注意が必要です。


4. 「登録できない=その名前を使ってはいけない」ではない

ここ、よく誤解されるポイントです。

  • 「ビタミンCサプリ」
  • 「NMNタブレット」
  • 「乳酸菌カプセル」

といった名前は、商標として独占するのは難しいですが、

商品名の一部やパッケージ上の説明として使うこと自体は、原則問題ありません

(※もちろん、他人の登録商標をそのまま真似していれば別問題です)

つまり、

  • 「登録しづらい=名前として使ってはいけない」ではなく、
  • 独占権として守りにくい」という意味合いです。

大事なのは、

  • どの部分を独占的に守りたいブランド名(商標のコア)にするか
  • どの部分は“誰でも使う説明ワード”として割り切るか

を意識して、ネーミングを設計することです。


5. 実務的なネーミングのコツ

サプリのネーミングで迷ったときは、次の考え方をベースにするのがおすすめです。

ステップ1:まず「ブランドの核」になる造語を決める

  • 企業ブランド(ハウスマーク)
  • サプリシリーズ名
  • 各商品のペットネーム(商品固有の名前)

いずれも、

説明語ではなく、“固有の名前”として読めるか?

という視点でチェックしてみてください。

例:

  • 「vitaminD1000」→ ほぼ説明
  • 「DHC マルチビタミン」 → 「DHC」がブランド核になりうる

ステップ2:成分名・効能ワードは「脇役」にまわす

  • 成分名や効能ワードそのものは、
  • ブランドの核ではなく
  • ブランドの魅力を補足する「サブ要素」に置く

イメージ:

  • 「◯◯ NMN」
  • 「◯◯ Iron Support」
  • 「◯◯ Collagen Beauty」

など、頭に“固有名詞”が来る構造にしてあげるだけでも、
権利面・マーケ面のどちらから見ても扱いやすくなります。

ステップ3:出願は「核になる部分」を中心に検討する

  • 登録したいのは「商品全体の長い名前」ではなく、
  • 長く使い続けるブランドのコア部分(造語+ロゴ)

という意識で、

  • 造語単体
  • 造語+ロゴ(図形商標・結合商標)

あたりから優先的に出願していくのが現実的です。

ステップ4:成分名っぽい造語は「必ず調査」する

  • 「なんとなくカッコいい成分名ぽい造語」を思いついたときほど、
  • すでに誰かが登録している可能性も高いです。

最低限、

  • J-PlatPatで同じ/似た名前の商標が登録されていないか
  • サプリ・健康食品の分野(第5類、第29類、第30類など)で既に使われていないか

をチェックすることをおすすめします。


6. まとめ:成分名は「ブランドの主役」ではなく「脇役」に

最後に、要点だけギュッとまとめます。

Q. 成分名を含んだサプリの商品名は、商標登録できますか?

  • 成分名+「サプリ」「タブレット」「カプセル」だけ
  • 例:「ビタミンCサプリ」「NMNタブレット」
    → 原則として登録はかなり難しい(説明的すぎる)
  • 成分名+造語・ブランド要素で、全体として固有のネーミングになっている場合
  • 例:「◯◯Cビューティー」「NMN◯◯」など
    → 登録の余地が出てくる(個別審査次第)
  • 成分名そのものが一般名称の場合
  • 「ビタミンC」「鉄」「NMN」など
    → その部分だけを商標として独占することはできない
  • 成分名そのものが他社の素材ブランド(登録商標)の場合
  • 造語っぽくても、実は誰かの権利の可能性
    → 無断で商品名に入れると、逆に商標権侵害リスクも

ざっくり言えば、

成分名は“ちゃんと伝えるべき情報”ではあるけれど、
ブランドとして長く守る「主役」に据えるのは難しい

という立ち位置です。

だからこそ、

  • ブランドの核になる造語(+ロゴ)をしっかり作る
  • 成分名は、そのブランドの魅力を補足する「脇役」に回す

という設計で考えると、

  • お客さまにも分かりやすく
  • 法律的にも守りやすく

バランスの良いサプリブランドになっていきます。

「今の商品名、どこまでが“説明”で、どこからが“ブランドの核”なんだろう?」
と一度切り分けてみるところから、見直しを始めてみてください。