ファッションブランドの価値は「デザイン」だけでなく、「ブランド名」や「ロゴ」にも宿ります。
しかし、商標登録を後回しにした結果、他人にブランド名を奪われる・模倣されるといったトラブルは後を絶ちません。
この記事では、アパレルブランドを守るために今すぐできる5つの実務的なアクションを紹介します。
今日からできる小さなステップが、将来のブランド価値を左右します。
目次
1. まずは「ブランド名・ロゴ」が登録されているか調べる
商標トラブルの多くは、「知らずに他人の登録商標を使っていた」ことから始まります。
ブランド名を決めたら、特許庁のデータベース「J-PlatPat」で類似商標を検索しましょう。
チェックポイント
- 同じ名前や似た名前が登録されていないか
- 同じ区分(衣料・バッグなど)で出願・登録がないか
- ロゴや図形部分に似たデザインがないか
弁理士に依頼すれば、文字・図形・類似称呼などを総合的に調査してもらえます。
「調べてから使う」ことで、後からブランドを変更するリスクを防げます。
2. 文字商標とロゴ商標を両方出願する
アパレルブランドでは、ブランド名(文字)とロゴ(図形)の両方を登録しておくのが理想です。
| 登録形態 | 主な保護対象 | メリット |
|---|---|---|
| 文字商標 | ブランド名そのもの | フォントや色を変えても使用可能 |
| ロゴ商標 | デザイン・図案・シンボルマーク | 視覚的な模倣(似たデザイン)を防止できる |
ブランドを長く展開するなら、両方を併願しておくことで見た目・名前の両面から保護できます。
3. 適切な「指定商品・役務」を選んで出願する
商標権の効力は、登録された「指定商品・役務」の範囲にしか及びません。
アパレルブランドなら、次の区分を中心に検討しましょう。
| 業種・展開内容 | 主な区分 | 指定商品・役務例 |
|---|---|---|
| 洋服・靴・帽子の販売 | 第25類 | 被服、履物、帽子 |
| バッグ・アクセサリー | 第18類、第14類 | かばん類、財布、身飾品、時計など |
| 店舗・ECサイト運営 | 第35類 | 被服の小売・卸売に関する業務 |
| ブランドスクールや講座運営 | 第41類 | 教育、セミナーの企画運営 |
ブランドを複数ジャンルで展開する場合は、複数区分の併願を検討しましょう。
4. 使用実績を記録しておく(証拠を残す)
商標は登録して終わりではなく、「継続して使っている」ことが重要です。
登録から3年以上使っていないと「不使用取消審判」で登録が取り消されるおそれがあります(商標法第50条)。
記録しておくべき証拠
- 商品タグ・ラベル・パッケージの写真
- ECサイトの商品ページや広告
- SNS・Web広告でブランド名を使っている投稿
- 展示会・POP UP出店時の看板・DM
これらの使用実績を定期的に保存しておくと、権利維持の証拠として有効です。
5. 海外展開を見据えて国際出願の準備をする
人気ブランドになるほど、海外での商標の先取り登録が増えています。
特に中国・韓国・東南アジアなどでは、日本ブランド名の無断登録が多発中です。
日本で登録した商標を基礎に、
「マドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)」に基づく国際登録出願を行えば、
一度の出願で複数国に権利を拡張できます(ただし、マドプロの締約国以外では直接外国出願が必要)。
こんな場合は国際出願を検討
- 海外のOEM工場で製造している
- 海外ECやインスタグラム経由で販売している
- 将来、現地出店・ライセンス展開を考えている
よくある誤解と正しい理解
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 登記やSNS登録をしていれば名前は守られる | 商標登録をしなければ独占権は得られない |
| ロゴを変えたら自動的に保護される | 新しいロゴは別商標として出願が必要 |
| 海外で売る予定がなければ国内登録だけで十分 | 先取り登録を防ぐために早期の国際出願が有効 |
| 小規模ブランドだから登録はまだ早い | むしろ小規模ブランドほど早期出願がリスク回避になる |
専門家に相談するメリット
弁理士に相談すれば、次のようなサポートを受けられます。
- ブランド名・ロゴの登録可否調査
- 適切な指定商品・区分の選定
- 出願書類の作成と手続き代行
- 国際出願(マドリッド・プロトコル)対応
- 登録後の使用・管理・更新サポート
まとめ
アパレルブランドを守るために、今すぐできることは以下の5つです。
- 類似商標を検索して確認する
- 文字商標とロゴ商標を併願する
- 正しい区分で出願する
- 使用実績を証拠として残す
- 海外出願(マドリッド・プロトコル)を検討する
商標は「ブランドの信用を形にする法的ツール」です。
ファッションを愛するあなたのブランドを、
名前の面から確実に守るために、今すぐ一歩を踏み出しましょう。

