アパレルブランドや個人デザイナーからよく寄せられる質問のひとつに、
「服のロゴやタグのマークは商標登録できるの?」というものがあります。
結論から言えば──
洋服のロゴマークも商標登録の対象になります。
むしろ、ファッション業界ではロゴがブランド価値の象徴となるため、
商標登録で保護しておくことは非常に重要です。
この記事では、洋服のロゴマークを商標登録する際のポイントと注意点を、
実務の観点から詳しく解説します。
目次
結論:洋服のロゴマークは商標登録可能
商標法では、文字・図形・記号・立体・色彩など、
「自他の商品やサービスを識別する標識(=自他商品・役務識別機能)」 を有するものは商標登録の対象になります。
すなわち、ブランドの出所を示し、他人の商品・サービスと区別できる標識が保護されます。
そのため、洋服に付けるロゴマークやタグ、ブランドネームも登録の対象です。
登録できる例:
- 洋服やバッグのタグ・胸元のロゴマーク
- 靴や帽子のアイコンデザイン
- 「〇〇 TOKYO」「△△ Collection」などのブランド名ロゴ
- 特徴的な筆記体・図案・図形ロゴ など
登録によって、そのロゴを「自分のブランドを示すマーク」として独占的に使用できるようになります。
※実際に登録されているロゴ商標の例
| 商標 | 登録番号 | 権利者 |
|---|---|---|
| 登録第4699914号他 | 株式会社コム・デ・ギャルソン | |
| 登録第1374708号他 | ルイ ヴイトン マルチエ | |
| 国際登録1691653号 | Tommy Hilfiger Licensing B.V. | |
| 登録第4433096号他 | ニュー エラ キャップ エルエルシー |
洋服ロゴの商標登録で指定すべき区分
アパレル関連のロゴを登録する場合は、
販売形態や展開方法に応じて適切な「指定商品・役務(区分)」を選ぶことが重要です。
| 主な事業内容 | 登録すべき区分 | 指定商品・役務の例 |
|---|---|---|
| 洋服・靴・帽子の販売 | 第25類 | 被服,履物,帽子 など |
| バッグやアクセサリーの販売 | 第18類,第14類 | かばん類,財布,身飾品,時計 など |
| ブランド店舗の運営(小売) | 第35類 | 被服の小売又は卸売に関する業務(衣料品の小売等) |
| ECサイトでの販売(小売) | 第35類 | オンラインによる被服の小売又は卸売に関する業務 |
| ファッションスクールやスタイリング指導 | 第41類,第45類 | 教育,セミナーの企画運営,個人のファッションに関する指導 |
ポイント:
商標権の効力は「登録された指定商品・役務の範囲」で発生します。
洋服ブランドの販売だけでなく小売販売も行う場合は、
第25類(商品)+第35類(小売サービス)を併願すると実務上有効です。
商標登録のメリット
① 模倣・コピー商品の防止
他社や海外業者が似たロゴを使った服・バッグを販売した場合、
商標登録があれば差止請求や削除申立が可能です。
未登録だと、ロゴを真似されても法的対応が難しくなります。
② ブランド価値の確立と信頼性向上
ロゴに®マークを付けられるようになり、
「登録された正式なブランド」としての信頼を示せます。
百貨店やECモールの出店審査でも、有効な商標登録があると優遇される場合があります。
③ 海外展開・コラボ展開がしやすくなる
登録済み商標をもとにライセンス契約を結んだり、
国際出願(マドプロ出願)を通じて海外でも権利を保護することができます。
グローバル展開を見据えるブランドには必須のステップです。
登録時に注意すべきポイント
① 「装飾」と「商標的使用」の違いに注意
商標登録が認められるのは、
「自他商品・役務識別機能」を果たす使い方、
すなわち「ブランドとして出所を示す使い方」をしているロゴです。
たとえば、
- 胸元やタグ、ブランドネーム部分に表示 → OK:商標的使用
- 服全体の柄・模様として繰り返し印刷 → NG:装飾的使用
装飾的な模様は商標ではなく「意匠」や「著作権」で保護する対象になります。
ロゴを登録する場合は、「ブランド表示」として使用している位置や形態を明確にしておきましょう。
② ロゴの変更・リニューアル時は再出願が必要
商標権の効力は登録デザインそのものに及びます。
デザインを変更した場合、社会通念上同一といえる程度でなければ別商標扱いになります。
ロゴリニューアル時は新デザインでも出願しておくと安全です。
③ 海外生産・販売がある場合は海外出願も検討
海外での販売・製造を委託している場合、
現地業者や取引先に商標を先取り登録されるトラブルが多発しています。
日本登録後、主要市場(例:韓国・中国・アメリカ・EU)にも出願しておくのが安全です。
よくある誤解と正しい理解
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 洋服のロゴは商標登録できない | ロゴも図形商標として登録できる |
| 登録しなくても自分のブランドとして保護される | 登録しない限り、法的独占権は得られない |
| 模様やデザインはすべて商標で守れる | 装飾的デザインは「意匠」や「著作権」で保護 |
| ロゴを変えても同じ登録で大丈夫 | 変更内容によっては再出願が必要になる |
専門家に相談するメリット
弁理士に相談すれば、
- ブランドロゴの商標登録可否・識別力の診断
- 適切な指定商品・役務(区分)の選定
- 図形商標・文字商標の出願戦略立案
- 海外出願・ライセンス契約サポート
といった実務対応を包括的にサポートしてもらえます。
まとめ
洋服のロゴマークも商標登録の対象になります。
登録によって得られる効果は次のとおりです。
- ロゴの模倣・盗用を防止できる
- ブランド価値と信頼性を高められる
- 海外展開・コラボ展開に有利
- フランチャイズやOEM契約時の法的基盤になる
洋服ブランドのロゴは、デザインであると同時に「信用の象徴」です。
ブランドを長く育てるためにも、
ロゴマークの商標登録は早めに行うのが最善策です。