商標登録しないままフランチャイズ展開するとリスクがある?ブランドを守るための実務的ポイント

商標登録しないままフランチャイズ展開するとリスクがある?ブランドを守るための実務的ポイント

フランチャイズ(FC)展開を検討している店舗オーナーや講座運営者から、
商標登録をしていない状態でもFC展開できるのか?
という質問をよく受けます。

結論から言えば──
商標登録をしないままフランチャイズ展開を進めるのは、非常にリスクが高い行為です。
フランチャイズ契約では「商標権の使用許諾」が中核に位置づけられるため、
登録がない状態では法的保護も契約上の安定性も欠けてしまいます。

この記事では、商標を登録しないままFCを展開する際に起こり得るリスクと、
ブランドを守るための実務的対応を解説します。


結論:商標登録なしのFC展開は「ブランドが守れない・奪われる」危険がある

商標登録をしていない場合、
フランチャイズ本部(オーナー)は「そのブランド名を独占的に使う権利」を持っていません。
そのため、加盟店がその名前を使っていても、
法的には「誰の権利でもない」状態になってしまいます。

結果として、以下のようなトラブルが発生するおそれがあります。


商標登録をしないままフランチャイズを展開する主なリスク

① 加盟店や第三者に商標を先に登録される

商標は「早い者勝ち」の制度です。
本部が商標を登録していない間に、加盟店や外部の第三者が同じ名前を先に出願・登録してしまうと、
本部であってもその商標を使えなくなる可能性があります。

実際に起こり得るトラブル:

  • 元加盟店が独立して同名の店を展開し、商標を登録してしまう
  • 本部が後から商標登録しようとしても、既に他人名義で登録されていて拒絶される
  • 自社ブランドであるにもかかわらず「商標権侵害」として警告される

このような場合、店舗名・ロゴ・看板・SNSアカウントをすべて変更せざるを得なくなります。


② 契約上の「ブランド使用許諾」が無効になるおそれ

通常のフランチャイズ契約では、
「本部が保有する商標を加盟店に使用させる」という条項が含まれます。

しかし、商標登録がされていなければ、
本部には法的な商標権が存在しないため、
その使用許諾条項自体が無効と判断されるリスクがあります。

加盟店側から「本部には権利がない」と主張されると、
ロイヤリティ(商標使用料)の請求根拠が崩れてしまいます。


③ ブランドの品質管理・統一が難しくなる

商標を登録していない状態では、
他人による同名ブランドの使用を止める法的手段がありません。

そのため、以下のような問題が起こりやすくなります。

  • 同じ名前の別店舗が勝手に開業し、サービス品質がばらつく
  • 顧客が混同し、ブランド価値が下がる
  • 加盟店間で「どの店が本部の直営か」分からなくなる

商標登録をしていれば、無断使用の差止請求・損害賠償請求が可能ですが、
登録がないとこうした防衛措置を取ることができません


④ 海外展開時にブランドを奪われるリスク

海外での商標も「早い者勝ち」です。
国内で登録していないうちに、海外の代理店や取引先が同じ名前を現地で商標登録してしまうと、
自社ブランドであっても輸出・販売ができなくなることがあります。

実際、日本発ブランドがアジア諸国で先取り登録され、
現地で使用できなくなった事例は多数あります。


実務的に取るべき対策

① フランチャイズ展開前に商標出願を済ませる

少なくとも「ブランド名」「ロゴ」「サービス名」など、
加盟店が使う名称は出願しておくことが必須です。
審査には通常6〜9か月かかるため、早期出願が安全です。

② 契約書には「商標権の帰属・使用条件」を明記

  • 商標権は本部が保有すること
  • 加盟店はライセンス契約に基づき使用できること
  • 使用態様や地域・期間を明示すること
    これらを明確にすることで、トラブルを防げます。

③ 登録後は使用実態を管理・記録

商標は登録しても「使っていなければ取消」される制度(商標法第50条)があります。
加盟店での使用実績を本部が把握・証明できるよう、
定期的に広告や店舗写真を記録しておくことが重要です。

④ 海外展開予定がある場合は国際出願も検討

マドリッド協定に基づく「国際登録出願」を利用すれば、
日本の登録を基礎にして複数国へ同時に出願できます。
海外フランチャイズでは特に必須のステップです。


よくある誤解と正しい理解

誤解正しい理解
開業届や法人登記をしていれば名前は守られる商標登録しなければ名称の独占権は得られない
商標は人気が出てから登録すればいいFC展開時点では「登録済み」であることが重要
契約書に「商標使用を許諾」と書けば有効登録がなければ商標権の使用許諾は無効の可能性
登録しなくても加盟店がブランドを守ってくれる登録していないと、むしろ加盟店が権利を取るリスクがある

専門家に相談するメリット

弁理士に相談すれば、

  • 商標出願・登録の優先順位設計(ブランド名・ロゴなど)
  • 類似商標の調査と出願戦略
  • FC契約書における商標条項のレビュー
  • 海外出願やライセンス管理のサポート

といった実務面のリスクを包括的に防止できます。


まとめ

商標登録をしないままフランチャイズ展開すると──

  • 加盟店や第三者に商標を奪われる
  • 契約上の商標使用許諾が無効になる
  • ブランド品質の統一が崩れる
  • 海外展開時に名称が使えなくなる

といった深刻なトラブルにつながります。

フランチャイズビジネスは「商標権を中心とするブランドライセンス事業」です。
商標を登録しないまま進めることは、家の基礎を作らずに建物を建てるようなもの。

安心してFCを拡大するために──
展開前の商標出願が、最も確実なリスク回避策です。