同じ店名がすでに商標登録されていた場合、どうすればいい?対処法と今後の選択肢を解説

同じ店名がすでに商標登録されていた場合、どうすればいい?対処法と今後の選択肢を解説

飲食店や美容サロン、スクールなどを運営していると、
使いたい店名を調べたら、すでに誰かが商標登録していた
というケースは珍しくありません。

その場合、必ずしも「もう使えない」と諦める必要はありません。
登録済みの商標との関係を正確に把握し、状況に応じて適切に対応することが大切です。

この記事では、同じ店名がすでに商標登録されていた場合の確認方法と、取り得る対応策をわかりやすく解説します。


結論:すぐに使用中止する必要はない。まず「登録内容と指定範囲」を確認する

商標登録は、「登録された名称」だけでなく、
指定商品・役務の範囲(=どの業種・サービスに使うための商標か)によって効力が決まります。

したがって、同じ店名が登録されていても、
あなたの事業がその指定範囲と重なっていない場合は、問題なく使えるケースもあります。

まず確認すべきは以下の3点です。

  1. 商標の登録番号と権利者
  2. 登録されている商標の表記(文字・ロゴなど)
  3. 登録された指定商品・役務(区分)

これらは特許庁のデータベース「J-PlatPat」で誰でも無料で調べることができます。


登録内容の確認ポイント

① 登録されている指定商品・役務をチェック

同じ店名でも、登録された指定商品・役務が異なれば併存が可能です。

登録されている指定商品・役務あなたの業種登録商標と衝突する可能性
飲食物の提供(第43類)美容サロン(第44類)低い(非類似)
花の小売(第35類)英会話教室(第41類)低い(非類似)
飲食物の提供(第43類)カフェ(第43類)高い(同一役務)

同一または類似の指定商品・役務で登録されている場合のみ、権利衝突の可能性があります。


② 商標のタイプ(文字/ロゴ)を確認

登録されているのが「ロゴ商標(図形商標)」の場合、
文字自体ではなくデザイン全体に権利が及ぶケースもあります。

たとえば、相手が「ロゴ付きデザイン」で登録しているだけなら、
同じ文字でも別の字体・構成で登録できる可能性もあります。

ただし、これはケースバイケースで、
文字商標がロゴ商標(図形商標)に類似すると判断される場合もあります。


③ 登録が有効かどうか(更新・取消状況)

商標権は登録から10年で更新が必要です。
更新されていなければ権利が消滅しています。
また、「不使用取消審判」により取り消されている場合もあります。


登録済み商標がある場合の主な対応策

1. 業種やサービスが異なる場合は、そのまま使用・出願できる

登録商標の指定商品・役務が自社事業と重ならない場合、
あなたも同じ名前を使って問題ありません。
また、非類似の指定商品・役務について出願することも可能です。

例:
登録商標「SORA(第43類:カフェ)」
→ あなたの事業「SORA(第41類:英会話教室)」なら出願可能。


2. ロゴや表記を変えて出願する

称呼(読み方)は同じでも、デザインや文字構成を工夫すれば登録できることもあります。

例:
登録:「bliss」
出願候補:「ブリスアイランド」「Bliss Kitchen」「Mr.Bliss」など。

ただし、「称呼・観念」が同じだと類似と判断され得るため、
“見た目の表記変更だけ”では不十分な場合もあります。
弁理士による類否判断の確認が推奨されます。


3. 登録商標の権利者に使用許諾(ライセンス)を得る

相手の登録商標と事業内容が重なる場合でも、
権利者が許可を出せば使用可能です。
ライセンス契約(通常使用権契約)を結べば、合法的に店名を使い続けられます。

ただし、交渉が決裂した場合は、その商標を使用し続けることができない点に注意が必要です。


4. 商標登録の無効審判・取消審判を検討する

次のようなケースでは、登録自体を無効・取消にできる可能性があります。

  • 実際に使われていない商標(3年以上不使用)
    → 「不使用取消審判」で取消を請求可能(商標法第50条)
  • 明らかに他人の著名ブランドを模倣した登録
    → 「異議申立・無効審判」で登録を取消・無効化できる場合あり

ただし、審判手続は時間と費用がかかるため、
専門家と相談のうえで慎重に進めましょう。


商標が取れない場合のリブランディング戦略

どうしても同一・類似の商標がすでに登録されている場合は、
新しい名称を検討することも現実的な選択肢です。

リブランディングのポイント

  • 読みや意味が被らない新しい造語を作る
  • 現在の名前に別の言葉を加える
    ただし、「TOKYO」「JAPAN」「101」「PRO」などの地域名・数字・一般的な付加語は、
    それ自体に識別力がない
    ため、既存の商標に類似と判断される場合があります。
    そのため、同一・類似の商標がすでに存在する場合には、
    新しい意味・印象を与える識別力のある語を加えることが重要です。
    • NG例:「LUNA TOKYO」「LUNA+」「LUNA 101」 → 類似と判断される可能性が高い
    • OK例:「LUNA FELICE」「LUNA TERRACE」「LUNAVIA」 → 非類似と判断される可能性あり(新しい造語)
  • 変更後の名称で商標調査を行い、将来のトラブルを防止

よくある誤解と正しい理解

誤解正しい理解
「同じ名前が登録されていたら絶対に使えない」指定商品・役務が異なれば使える場合がある。
「他県なら大丈夫」商標権は全国で効力を持つ。地域は関係ない。
「ロゴを少し変えればOK」称呼・観念が同じなら類似と判断される可能性がある。
「古い登録は無視できる」10年ごとに更新されていれば有効。取消されていない限り効力あり。

専門家に相談するメリット

弁理士に相談すれば、

  • 登録済み商標の詳細調査(類否・区分・効力範囲)
  • 使用可能性の判断・出願方針の提案
  • 登録済み商標との交渉・ライセンス契約支援
  • 不使用取消・無効審判の手続き対応

など、法的リスクを最小限に抑えながら最適な対応を選ぶことができます。


まとめ

同じ店名がすでに商標登録されていても、
以下のような場合にはまだチャンスがあります。

  • 指定商品・役務が異なる
  • デザインや構成を工夫して非類似化できる
  • 権利者から使用許諾を得られる
  • 不使用や無効理由がある

逆に、同一業種で登録済みの場合は、
無断使用を続けると商標権侵害にあたる可能性があります。

まずは落ち着いて登録内容を調べ、
弁理士に相談して安全なブランド戦略を立てましょう。

あなたの店名を「トラブルの火種」から「守られたブランド」へ。
その分岐点が、今です。