講座やオンラインスクールを運営していると、Instagram・X(旧Twitter)・YouTubeなどで同じ講座名やブランド名を使う場面が増えます。
その際、「商標登録をしておけば、SNSアカウント名も自動的に守れるのでは?」と思う方も多いでしょう。
しかし、実際には商標登録とSNSアカウント名の保護はまったく別の制度です。
この記事では、商標登録をした場合にSNSアカウント名をどこまで守れるのか、またどのように連携して対策すべきかを解説します。
目次
結論:商標登録しても、SNSアカウント名そのものは自動的には守られない
商標登録をしても、権利が及ぶのは「同一・類似の名称を、同一・類似のサービス分野で使用する行為」に限られます。
つまり、SNSのアカウント名(@ユーザー名やURL)そのものをプラットフォーム上で独占できる権利は、商標登録によって直接は得られません。
SNSアカウントの取得や運用ルールは、各プラットフォーム(Instagram、X、Facebookなど)が定める利用規約によって管理されています。
したがって、「商標登録がある=アカウント名を強制的に奪える」という関係ではありません。
商標登録でできること
商標登録をしておくと、以下のような点でSNS上でも間接的な保護効果があります。
- 他人が同じ講座名・ブランド名でアカウントを開設した場合、「商標権侵害」として削除申請できる根拠になる
- なりすまし・模倣アカウントの報告時に、権利者としての証拠を示せる
- SNS広告(例:Instagram広告・LINE広告など)で、他人があなたの商標名を使って宣伝している場合に停止を求めることができる
このように、商標登録をしていれば、SNS運営側に「正式な権利者」として申し立てができるため、
削除・停止の手続きをスムーズに進めるための法的根拠となります。
SNSアカウント名を直接守ることができない理由
SNSのアカウント名の管理権限は、各プラットフォームにあります。
たとえ商標登録をしていても、以下のような理由で自動的に権利が及ぶことはありません。
- SNS運営会社は、基本的には商標権の有無よりも「先に登録したかどうか」でアカウント名を管理している
- 商標権を主張しても、SNS側がすぐに譲渡・変更を行う義務はない
- 商標権侵害は、指定商品・役務との関係で類似の範囲内に属するかどうかで判断するところ、SNSのアカウント名の使用が必ずしも侵害に該当するとは限らない
ただし、他人が明らかにあなたの講座名・屋号を騙る目的やなりすまし、混同を招く態様でアカウントを作っている場合には、
商標権を根拠に削除申立てが認められるケースがあります。
よくある誤解
「商標登録をすればSNSアカウント名も独占できる」→誤り
商標登録は法律上の権利ですが、SNSアカウント名の運用は民間プラットフォームの管理下です。
したがって、「商標登録=アカウント名の独占」ではありません。
「SNSで先に使っているから商標登録はいらない」→誤り
SNSで先に使っていても、商標登録をしていないと法的な独占権は発生しません。
他人に商標出願されてしまうと、逆にあなたのアカウント名や講座名が使えなくなるリスクもあります。
「商標登録すれば、なりすましを完全に防げる」→部分的に正しい
商標登録をしていても、SNS上で一時的に模倣アカウントを作られることは防げません。
ただし、削除申立てやブランド保護対応を迅速に行える点で非常に有効です。
実務でのブランド保護策
SNS上で講座ブランドを守るためには、商標登録と併せて以下の対策を行うのが効果的です。
- 商標登録をして権利の根拠を確保する
 → 商標登録があれば、SNSやGoogle広告などでの削除申立てが通りやすくなる。
- SNSアカウント名・ドメイン名を早めに取得する
 → 商標出願と同時に主要なSNSのアカウント名を確保しておく。
- なりすまし・模倣アカウントを定期的にチェックする
 → ブランド監視ツールや通知設定を活用して早期発見する。
- SNS運営会社に「商標権者として」正式に申し立てを行う
 → 各SNSには商標権侵害報告フォームがある(Instagram・X・Facebookなど)。
専門家ができるサポート
弁理士に相談すれば、
- 商標登録とSNS運用の整合性を踏まえたブランド戦略の立案
- 模倣アカウント・なりすましへの削除申請サポート
- 商標侵害報告の対応
- 商標権を活かした広告・広報の運用アドバイス
 など、実務に即したサポートを受けることができます。
まとめ
商標登録をしても、SNSアカウント名そのものを自動的に保護できるわけではありません。
しかし、商標権を持っていれば、
- 模倣やなりすましへの削除申立てがスムーズになる
- SNS広告や他人の不正使用に対して法的根拠をもって行動できる
 といった実質的な保護効果を得ることができます。
講座やスクール名をブランドとして育てるなら、
「商標登録で法的保護」+「SNS運用で早期確保」という二本柱で守ることが重要です。
これが、オンライン時代のブランド戦略の基本です。
