同じ名前の講座が他にもあったら商標出願はできない?講師が知っておくべき判断基準

同じ名前の講座が他にもあったら商標出願はできない?講師が知っておくべき判断基準

講座名をブランド化しようと考えたときに、「すでに同じ名前の講座が存在する」「似たような講座名を他の人も使っている」と気づくことがあります。

この場合、「もう商標登録はできないのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。

しかし、同じ名前の講座がある=必ずしも登録できない、というわけではありません。

今回は、同一・類似名称が存在する場合の商標出願の可否について、実務の視点から解説します。

結論:同じ名前があっても、条件次第で商標登録できる場合がある

商標登録は、同じ名前があるかどうか」だけではなく、指定商品・役務が先行登録商標の類似の範囲に属するかによって判断されます。
つまり、他人が同じ講座名を使っていても、

  • 商標として登録されていない場合
  • 登録されていても、指定商品・役務の類似範囲に含まれない場合
    には、登録できる可能性があります(相手の講座名が既に有名な場合を除く)。

商標登録の基本原則:「類似する指定商品・役務」での重複がNG

商標審査では、商標が「同一・類似」であり、かつ同じ又は類似する商品・役務(サービス)で使われているか(指定されているか)どうかが判断基準となります。

講座やセミナーは、「第41類(教育・セミナー・講演など)」に分類されます。
そのため、他の人が同じ講座名をすでに第41類等で登録している場合には、同一名称での登録は難しくなるのが一般的です。

一方、たとえば次のようなケースでは登録できる可能性があります。

  • 「〇〇アカデミー」が雑誌(第16類)の分野で登録されているが、あなたがセミナー(第41類)の分野で登録したい場合
  • 識別力のない説明的な名称でも、ロゴやデザインを大きく変えて識別力を持たせた場合
  • 他人が商標登録しておらず、単に使用しているだけの場合

このように、商標登録の可否は先行商標や識別力の有無等について判断されるのです。

商標登録されていない「使用中の講座名」との関係

すでに同じ講座名を使っている人がいても、
その名称が商標登録されていない限り、法的な独占権は発生していません。
したがって、あなたが先に商標出願すれば、あなたの方が正式な権利者になれる可能性があります。

ただし、この場合も注意が必要です。
商標法には「先使用権」という仕組みがあり、他人があなたより前に講座名を使っていた場合、その範囲に限って継続使用が認められることがあります(商標法第32条)。
ただし、先使用権が認められるには、

  • その名称が他人のサービスを識別できる程度に広く認知されていること
  • その他人の商標出願より前から継続的に使用していたこと
  • 不正競争目的の使用でないこと
    が必要で、実務上はかなりハードルが高いとされています。

つまり、「先に使っていたから安心」ではなく、「先に登録した方が強いというのが実情です。

よくあるケースと実務判断

ケース1:同じ講座名がGoogle検索で複数ヒットした

→ まず、商標のデータベース(J-PlatPat)で「類似の名前が商標登録済みかどうか」を確認
Google検索でヒットするだけでは商標登録されているとは限りません。
類似の商標登録がなければ、出願のチャンスは十分あります。

ケース2:似た講座名が商標登録されている

別のネーミングにする。一部を変更することで全体的に類似しないと判断されることもある。
例:「ミライメソッド」(登録第6686317号)→「ミライ式」(登録第6871231号)など。

ケース3:似た商標の登録はないが、説明的でよくありそうな名前である

→ そのまま文字商標として出願しても、識別力がないとして拒絶される可能性が高い。
この場合は、造語化して別の名前にしたり、名前を変えたくないならロゴと一緒の形にしたりして商標出願するのが現実的です。

実務でのポイント

  • 出願前に必ず商標調査を行うこと
    自分でJ-PlatPatを使って検索しても良いですが、専門家に依頼すれば「類似商標」まで含めて正確に判定してもらえます。
  • 名称を部分変更して出願する方法もある
    たとえば「ABC学校」が既に登録済みなら、「ABC講座」「ABC養成講座」として出願するなど、一部を変更することで審査に通る可能性もあります。
    例:「魔法使いの学校」(登録第6429334号)と「魔法使い講座」(登録第6476693号)と「魔法使い養成講座」(登録第6703536号)が、それぞれ別の商標権者により登録されています
  • ロゴマークと併願するのも有効
    同じ名称でも、図形やデザインを組み合わせた商標なら登録できる可能性があります。

専門家ができるサポート

弁理士に依頼すれば、

  • 類似商標の有無の調査
  • 出願すべき区分の選定
  • 登録可能性の診断
  • 拒絶理由通知への対応(意見書・補正書作成)
    などをサポートしてもらえます。
    講座ビジネスでは、講座名・メソッド名・講師名を一体的にブランド化するケースが多いため、複数出願を戦略的に組み合わせるのが理想です。

まとめ

同じ名前の講座が存在していても、必ずしも商標登録ができないわけではありません。
ポイントは、

  • 既存の商標登録の有無を確認する
  • 区分や識別力を工夫する
  • 専門家による類否判断を受ける
    ことです。

「他人が使っているから」とあきらめる前に、まずは商標データベースで現状を確認し、登録可能性を見極めましょう。
商標登録は早い者勝ちです。気づいた時点で早めに動くことが、あなたの講座ブランドを守る第一歩です。