オンライン講座やスクール事業を立ち上げる際、「講座名を思いついたから、そのまま使い始めよう」と考える方は多いでしょう。
しかし、商標登録をしないまま講座名を使用することには大きなリスクが潜んでいます。
特に人気が出てから「同じ名前を他人に使われた」「突然使えなくなった」というトラブルになるケースが少なくありません。
今回は、商標登録をしないまま講座を展開した場合に起こり得るリスクと、その対策について詳しく解説します。
目次
結論:商標登録をしないと、ブランドを他人に奪われるリスクがある
結論から言えば、講座名を商標登録しないまま使っていると、他人に同じ名前を登録され、自分が使えなくなる可能性があります。
商標は「早い者勝ち」の制度であり、誰が最初に使い始めたかではなく、誰が先に出願・登録したかが権利者となります。
つまり、あなたが先に講座を始めていても、他人がその講座名を先に商標登録してしまえば、あなたが侵害者になるおそれがあるのです。
リスク①:他人に商標登録され、自分が使用できなくなる
講座名を登録していない状態で他人に先に出願・登録されると、以下のような問題が生じます。
- その名称を使い続けると「商標権侵害」になり、使用の中止を求められる
- チラシ・ホームページ・SNS・ロゴなど、既に作成したすべての素材を変更する必要がある
- 商標権者から損害賠償を請求される可能性もある
つまり、自分が築いたブランドでありながら、自分の講座の名称として使えなくなるリスクがあるのです。
特に、他人に悪意がなくても、偶然同じ名前を登録された場合でも同様の結果となります。
特に法人や大規模事業者が権利者だった場合、交渉が難航することもあります。
「知らなかった」では済まされないのが商標法の特徴です。
リスク②:模倣・便乗を防げない
商標登録をしていない場合、他人が同じ講座名や似た名前で活動しても、法的に止める手段がありません。
あなたの講座が人気になるほど、模倣や便乗を狙う人が現れやすくなります。
同じ講座名を使った別のセミナーが開催されれば、受講希望者が混乱し、信頼を損なうおそれもあります。

たとえば、「〇〇メソッド」「〇〇講座」といった名称を登録していなかったため、別の講師が同じ名前で講座を開催している
といった相談は実際に多く寄せられています。
リスク③:ブランド価値を守れない
商標登録をしていないと、あなたの講座名がどれほど有名になっても、法的には「誰でも使える名称」になってしまいます。
その結果、模倣講座や質の低い類似サービスが増え、ブランドイメージが崩れることもあります。
また、将来的に法人化やフランチャイズ展開を行う際にも、商標登録がないと契約やライセンスの基盤を作ることができません。
よくある誤解
- 「使っていれば自動的に権利が発生する」→誤り
商標は使用実績だけでは保護されず、出願・登録して初めて権利が発生します。 - 「SNSやドメインを押さえているから安心」→誤り
SNSアカウント名やドメイン取得と商標権は別の制度です。商標登録がない限り、法的保護はありません。 - 「講座名に自分の名前を入れているから大丈夫」→誤り
商標法上、同姓同名や類似表現でも混同があれば問題になることがあります。
例えば、「西野式呼吸法」(登録第6723154号)という商標が登録されていますが、同じ西野さんという苗字の人が呼吸法を教える講座名として「西野式呼吸法」を使ってしまうと、商標権侵害になってしまう可能性があります。
実務での対策
講座を本格的に展開する前に、以下の準備を行っておきましょう。
- 商標のデータベースで類似名を調査する
「J-PlatPat」などで、同じ区分(第41類など)の類似商標が登録されていないか確認します。 - 講座名が確定したら早めに出願する
使い始めてからでは遅いケースもあるため、ブランディング前に出願するのが理想です。 - 講座名・メソッド名・ロゴなどをそれぞれ保護する
文字商標・図形商標・ロゴマークなどをそれぞれ保護することで、より強い保護が可能になります。 - 定期的に模倣状況をモニタリングする
登録後も他者の模倣や類似商標の出願を監視することで、ブランドを継続的に守れます。
専門家ができるサポート
弁理士に依頼すれば、
- 類似商標の事前調査
- 出願書類の作成・手続き代行
- 拒絶理由への対応(意見書・補正書の作成)
- 権利侵害時の警告文や交渉サポート
など、商標登録から保護運用まで一貫した支援を受けることができます。
まとめ
商標登録をしないまま講座を展開すると、
- 他人に講座名を奪われる
- 自分が侵害者になる
- ブランドの信頼を守れない
といった重大なリスクがあります。
講座名やメソッド名は、あなたのビジネスを象徴する「資産」です。
商標登録を行うことで、安心してブランドを育て、長期的に事業を拡大していくことができます。
講座を立ち上げる際は、ぜひ早めに専門家へ相談し、自分のブランドをしっかり守りましょう。
