近年、コーチングやコンサルティング、セミナー業界などで「〇〇コーチ」「△△アドバイザー」といった肩書き風のネーミングを使う方が増えています。
その中で「自分の肩書きを商標として守りたい」「オリジナルの肩書き風ネーミングを登録できるのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回は、自分の肩書きや肩書き風の名称が商標登録できるかについて解説します。
結論:肩書きや肩書き風ネーミングも条件次第で商標登録できる
結論から言えば、肩書きや肩書き風のネーミングも商標登録できる場合があります。
ただし、登録の可否は「独自性」と「識別力」の有無に大きく左右されます。
一般的な職業名や役職を示すだけの肩書きは、商標としては認められにくいのが実情です。
商標登録できる肩書きとできない肩書き
商標法の観点から、商標は「自己のサービスを他人のものと区別するための標識」であることが求められます。そのため、肩書き風ネーミングが以下の条件を満たす場合は登録可能性が高まります。
- 独自の造語やユニークな表現を含む
例:「〇〇コーチ」「△△流アドバイザー」など - 単なるサービスの説明的な職業名や一般用語ではない
「占いカウンセラー」「生産性コンサルタント」などは、サービスの説明的な名称で識別力がなく、商標登録は困難です。 - 長期間使用し、一定の認知度がある場合
当初は識別力が弱くても、広く使用され知名度が上がると登録が認められるケースもあります。
つまり、「一般的な肩書き」ではなく、「ブランドを象徴する独自の名称」であれば、商標として登録できる可能性があるのです。
独自の肩書きの登録事例
商標 | 権利者 | 登録番号 |
---|---|---|
闘う弁護士 | 堀 鉄平 | 登録第5469421号 |
魔界の税理士 | 村上 裕一 | 登録第6544311号 |
メディカルクリエイター | 株式会社レーマン | 登録第6808824号 |
施術王 | 秋山 大輔 | 登録第6408853号 |
Chief Well-being Officer | 一般社団法人日本ビジネス道徳協会 | 登録第6200627号 |
インターネット・カウンセラー(IC) | 株式会社Nimbus Creation | 登録第6513234号 |
タノシニアン | 合同会社TANOSEAT | 登録第6627314号 |
パラレルワールドナビゲーター | 株式会社たいぞう | 登録第6885562号 |
心救師 | 株式会社まめの樹 | 登録第6220935号 |
よくある誤解
「自分が考えた肩書きだから自動的に権利が守られる」と思われがちですが、これは誤解です。
商標権は出願・登録を経て初めて成立するものであり、使用しているだけでは他者による模倣を防げません。
また、「肩書きが著作権で守られるのでは?」と考える方もいますが、短いフレーズや名称は著作物性が認められにくく、著作権での保護は期待できません。
実務での注意点
肩書きや肩書き風のネーミングを商標登録する際は、次の点に注意が必要です。
- 商標検索で先行登録を確認する:同じ区分で既に登録がある場合は拒絶されます。
- 出願区分や指定商品・役務を正しく選択する:教育・研修であれば第41類、コンサル業務であれば第35類など。
- 一般用語や説明的な表現は避ける:独自性を高めることで登録可能性が上がります。
- 長期的に使い続ける名称かどうか検討する:一時的なキャッチコピー的名称よりも、ブランドとして育てる意識が大切です。
専門家ができるサポート
弁理士に依頼することで、商標登録可能性の事前調査や適切な区分の選択、拒絶理由通知への対応などを専門的にサポートしてもらえます。特に肩書き風ネーミングは一般的な表現と紙一重であるため、専門家の判断を仰ぐことで無駄な出願を避けることができます。
まとめ
自分の肩書きや肩書き風ネーミングも、条件を満たせば商標登録によって保護することが可能です。ただし、一般的な職業名や役職では識別力がなく、登録は難しいでしょう。独自性を持たせ、ブランドとして活用していく名称であれば、商標戦略を立てる価値があります。ビジネスの信頼性を高めるためにも、早めに専門家へ相談することをおすすめします。