広告や商品プロモーションにおいて、印象的なキャッチコピーはブランド価値を高める重要な要素です。
「このキャッチコピーを他社に真似されたくない」「商標登録で守れるのだろうか」と考える企業や事業者は少なくありません。
しかし、キャッチコピーはすべて商標として登録できるわけではありません。
本記事では、キャッチコピーと商標登録の関係について解説します。
結論:キャッチコピーも条件次第で商標登録できる
結論から言えば、キャッチコピーも一定の条件を満たせば商標登録が可能です。
ただし、登録の可否は「識別力の有無」によって大きく左右されます。
単に商品の特徴や宣伝文句を表現しているだけのコピーは登録できないことが多いのです。
キャッチコピーが商標登録できる条件
商標法上、商標は「自己の商品やサービスと他人の商品やサービスを区別するための標識」であることが求められます。
したがって、キャッチコピーが次の条件を満たす場合に登録可能性が高くなります。
- 独自性がある表現:造語やユニークなフレーズであること
- 識別力がある:単なる説明ではなく、ブランドやサービスを特定できること
- 使用実績がある場合:長期間の使用によって広く認知され、識別力が後天的に備わった場合
たとえばナイキの「Just Do It」のようなキャッチコピーは、単なる説明ではなく強いブランドイメージを伴っているため、商標として保護されています。
一方で「美味しい!安い!新鮮!」のような一般的な宣伝文句は、誰でも使いたい表現であり、識別力がないため商標登録は難しいとされています。
キャッチコピーの登録事例
商標 | 権利者 | 登録番号 |
---|---|---|
やめられない、とまらない (「かっぱえびせん」のキャッチコピー) | カルビー株式会社 | 登録第4913278号他 |
そうだ 京都、行こう。 (「JR東海」の京都観光キャンペーンのキャッチコピー) | 東海旅客鉄道株式会社 | 登録第5863308号他 |
Think Different (「Apple」のキャッチコピー) | アップル インコーポレイテッド | 登録第4281016号他 |
カラダにピース (「カルピス」のキャッチコピー) | アサヒ飲料株式会社 | 登録第5081832号 |
お、ねだん以上。ニトリ (「ニトリ」のキャッチコピー) | 株式会社ニトリホールディングス | 登録第5292375号 |
NO MUSIC,NO LIFE (「タワーレコード」のキャッチコピー) | タワーレコード株式会社 | 登録第4217934号他 |
お口の恋人 (「ロッテ」のキャッチコピー) | 株式会社ロッテホールディングス | 登録第5204707号他 |
The Power of Dreams (「HONDA」のキャッチコピー) | 本田技研工業株式会社 | 登録第4599911号他 |
ココロも満タンに (「コスモ石油」のキャッチコピー) | コスモエネルギーホールディングス株式会社 | 登録第5896748号 |
よくある誤解
「キャッチコピーは作った瞬間から自動的に守られる」と誤解されることがあります。
しかし、著作権が保護するのは創作的な表現に限られ、しかも短いフレーズは著作物性が認められにくいのが実情です。
そのため、著作権ではなく商標登録による保護を検討することが重要です。商標登録をしていなければ、他社に同じコピーを使われても差し止めができない可能性が高いのです。
※参考記事
実務での注意点
キャッチコピーを商標登録する際には、以下の点に注意が必要です。
- 商標調査を行い、既存の登録商標と類似していないか確認する
- 出願区分や指定商品・役務を誤ると期待した範囲で保護されないため、適切な区分や指定商品・役務を選ぶ
- 短く一般的な表現は識別力が弱く、登録が難しい
- 広告や販促資料で継続的に使用し、実績を積むことで識別力を補強できる
専門家ができるサポート
弁理士に依頼することで、キャッチコピーが商標登録可能かどうかの事前調査を行い、拒絶されにくい形で出願を進めることができます。また、登録後も不正使用があった際の対応や更新手続きについてもサポートを受けられます。
まとめ
キャッチコピーも条件を満たせば商標として登録し、独占的に使用する権利を得ることが可能です。単なる宣伝文句では難しいものの、独自性がありブランドを象徴するフレーズであれば十分に検討する価値があります。大切なコピーをビジネス資産として守るためにも、早めに専門家に相談し、商標戦略を立てることをおすすめします。