会社分割は、事業の一部を新会社や他社に承継させる再編手法です。
会社分割によって事業を分割すると、商標権も分割後の会社(承継会社)へ移転させる必要があります。
商標権の移転は、契約や会社分割によって当事者間での合意や登記をしても、特許庁への移転登録が完了しなければ効力が発生しません(商標法35条で準用する特許法97条1項1号)。
したがって、会社分割により商標権を承継会社に移す場合も、特許庁での移転登録が不可欠です。
この記事では、会社分割による商標権の移転手続について、弁理士がわかりやすく解説します。
会社分割に伴う商標権移転の基本
会社分割には、大きく分けて「吸収分割」と「新設分割」があります。
いずれの場合も、承継する事業で使っている登録商標を新会社や他社に移転させるには、商標権の移転登録が必要です。
移転登録が完了しなければ、新会社がその商標権者として権利行使をすることも、第三者に対抗することもできません。
移転登録の申請手続
特許庁での商標権移転登録は、原則として承継人(新会社)が行います。
必要書類
- 会社分割による移転登録申請書(商標登録番号、被承継人&承継人等を記載)
- 収入印紙代:30,000円/件(弁理士に依頼する場合は、別途弁理士の手数料が発生)
- 承継人であることを証明する書面
- 承継人の登記事項証明書(商業登記簿謄本)
- 被承継人による権利承継を証明する書面
- 会社分割承継証明書
- その他
- 被承継人の印鑑証明書
登録のタイミング
会社分割の効力発生日以降、できるだけ速やかに申請するのが望ましいです。
遅れると、承継人が商標権者としての立場を行使できない期間が生じ、差止請求やライセンス契約などの権利行使に支障が出ます。
実務上のポイント
- 移転登録完了まで権利行使不可
登録完了までは承継人は権利者ではないため、商標権に基づく権利行使ができません - 移転対象を明確化
トラブルを防ぐために、会社分割計画段階で商標権の承継対象を明確にしておくことが重要 - ライセンス契約の承継確認
商標権とともに専用使用権・通常使用権も承継する場合は、別途承諾や契約更新が必要な場合があります
まとめ
会社分割で事業を承継させる際、商標権の移転は単なる形式的手続ではなく、
事業ブランドの継続性や法的安定性を守るための重要なステップです。
弊所では、会社分割契約書の商標権条項のチェックから、特許庁への移転登録手続までワンストップで対応可能です。
「移転対象の整理」「部分移転に伴う混同リスクの事前評価」も含めてサポートいたしますので、ぜひご相談ください。