補正が認められない!?商標の”補正却下”を避けるコツと不服がある時の対応方法

補正が認められない!?商標の”補正却下”を避けるコツと不服がある時の対応方法

願書や審判で提出した補正書が
要旨を変更するものと認められるため却下する(商標法16条の2)
と判断されると、補正は無効となり審査・審判は補正前の内容で進みます
すると、登録の可能性が下がることが多いので注意が必要です。
ここでは要旨変更の基準・典型例・救済手段をまとめます。


1. 補正却下の根拠と効果

区分根拠条文ポイント
要旨変更による補正却下商標法16条の2– 出願の要旨(商標・指定商品役務の範囲)の核心を変える補正は不可
– 却下確定で補正はなかったものとみなされる

補正却下の決定が確定すると、登録の可能性は大きく低下する可能性あり。
争う場合は補正却下不服審判(商標法45条)または補正却下後の新出願(商標法17条の2で引用する意匠法17条の3)を検討します。


2. 要旨変更と判断される典型例

NG 補正例理由
「APPLE」→「APPLE GARDEN」商標に新語を追加
「BANANA MOON」→「BANANA」商標の一部(付記的部分ではない)を削除
第30類「菓子」→「菓子,パン,飲料」指定商品を追加・拡大
第25類「Tシャツ」→「被服」範囲を包括化し拡大
図形商標の色彩削除や形状変更商標の同一性喪失
hoyano
hoyano

実際の事例:出願後、拒絶理由通知への対応のために「手続補正書」を提出して、出願当初の指定役務中に含まれていなかった、第38類「インターネット接続の契約」を追加したところ、商標登録出願の要旨を変更するものと判断され、当該補正が却下されました。その後、補正却下不服審判を請求しましたが、覆りませんでした(補正却下不服審判2022-500004)。


3. 要旨変更を避ける3原則

原則OK 補正例NG 補正例
商標は変更しない「JIS」「JAS」「プラマーク」「エコマーク」「特許」「意匠」等、付記的部分の削除要素の追加・付記的部分以外の削除、色彩変更(モノクロ・グレースケール化)、標準文字化
範囲は限定のみ「衣料品」→「ティーシャツ,ワイシャツ類」「ティーシャツ」→「被服」
明確化だけ行う「菓子」→「和菓子,洋菓子」「菓子」→「菓子,パン」

4. 補正却下への不服対応フロー

  1. 補正却下決定謄本を受領
  2. 対応策を検討
    • 補正却下不服審判を検討(商標法45条)…3ヶ月以内に請求
    • 補正却下後の新出願の可否を検討(商標法17条の2で引用する意匠法17条の3)…3ヶ月以内に出願。手続補正書を提出した時に出願されたものとみなされる。補正内容が不可欠な場合は出し直しが早い
    • 何もしない
  3. 審査結果を待ち、エビデンスを整備して拒絶理由通知に備える

5. 実務チェックリスト

  • 補正は削除・限定・明確化に絞る
  • ニース分類・類似群を再確認し追加・拡大は禁止
  • 商標に手を加える場合は新出願を原則
  • 却下決定が来たら 期限管理(審判請求3ヶ月以内)を最優先

まとめ

  • 補正却下=補正無効化。要旨変更を避ける補正設計が必須。
  • 却下後は補正却下不服審判補正却下後の新出願でリカバー。
  • 出願段階から弁理士レビューで要旨変更NGラインをクリアし、リスクを最小化しましょう。