出願した商標が審査で 「拒絶査定」 になってしまった――
それでもあきらめる必要はありません。商標法44条の「拒絶査定不服審判」 を請求すれば、特許庁の審判部(審判官3名の合議体)が再度審理し、登録の可能性が開けます。
本稿では 要件・期限・費用・手続フロー・成功率を上げるポイント をまとめました。
1. 拒絶査定不服審判とは?
項目 | 内容 |
---|---|
根拠条文 | 商標法44条 |
目的 | 審査段階での誤りを正し、登録の機会を再度与える |
請求人 | 出願人(代理人経由可) |
請求期間 | ・通常期限…拒絶査定謄本送達日から3か月以内(下記の特例あり) ・天災地変のような不責事由がある場合…その事由がなくなった日から14日以内(在外者は2ヶ月)かつ、3ヶ月経過後6ヶ月以内に限り請求可能 |
審理方式 | 審判官3名の合議体による書面審理(口頭審理も可) |
結論 | ◯ 登録審決(登録へ) × 拒絶審決(登録不可・取消訴訟可) |
2. 手続フロー
ステップ | 概要 | 期間目安 |
---|---|---|
① 拒絶査定謄本受領 | 審査官から「拒絶理由」を確認 | ― |
② 審判請求書提出 | 特許庁手数料 55,000円+(区分数×40,000円) | 出願人が3か月以内 |
③ 審理開始通知 | 審判番号付与、審判部へ移送 | 1~2週間 |
④ 拒絶理由通知(必要な場合) | 合議体が新たな拒絶理由を認定したときのみ送付 | |
⑤ 補正・意見書提出(必要な場合) | 反論は④が通知された案件のみ、補正は審判継続中可能 | 通知⇒30日以内に対応 |
⑥ 合議体審理 | 書面審理が中心。口頭審理や面接を申請可 | 約11〜13か月 |
⑦ 審決 | 登録可 → 登録料納付 登録不可 → 知財高裁へ取消訴訟(審決謄本送達から30日以内) | 審理終結通知後20日以内 |
期間の目安:全体で12~14か月が標準。
登録料納付:10年一括 32,900円/区分 または 5年分割 17,200円/区分。
3. 成功率を上げる5つのポイント
- 拒絶理由を“類型”で分解
- 4条1項11号(先行類似)なのか
- 3条1項各号(識別力欠如)なのか
- 4条1項7号(公序良俗)なのか等を整理し、反論・補正方針を決定
- 可能であれば補正で回避
- 指定商品・役務の削除・限定
- 審判請求と同時に補正書を提出するとスムーズ(区分を減ずる補正をすると、審判請求料が安くなる)
- 意見書に周知性・識別力の裏付け
- 売上資料・広告実績・SNSフォロワー数・記事掲載などエビデンスを添付
- 類似群コードを再チェック
- 先行商標との商品・役務の非類似性を主張できないか検討
- 過去の類似ケースの審決例を調査
- 類似ケースを探し、登録/拒絶審決に至った理由と反論内容を調べる。本件に応用可能なケースがあればモデリングして審判請求書を作る
- 口頭審理・面接審理を活用
- 特殊な事案や補正の可否をめぐる交渉は、審判官との直接対話で突破口が開けることも
4. 失敗しがちな落とし穴
パターン | 結果 | 回避策 |
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期限徒過 | 不服審判請求権喪失 | カレンダー管理+代理人依頼 |
補正幅オーバー | 要旨変更で却下 | 16条の2要件を厳守 |
証拠不足 | 識別力立証失敗 | 一次資料・客観データを揃える |
登録性調査不足 | 審判でまた新拒絶 | 新たな拒絶理由が通知されないか再調査 |
5. よくある質問(FAQ)
Q | A |
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審査段階で面接してもダメだった…逆転可能? | 補正+新主張&証拠で覆るケースは珍しくない。審判部の合議体が再判断。 |
審判請求後、補正は何回でもできる? | 審決前なら複数回可(ただし手続期間内)。 |
審決が維持されたらもう終わり? | 30日以内に知財高裁へ審決取消訴訟が可能。実務上は訴訟移行率は低い。 |
まとめ
- 拒絶査定不服審判(商標法44条)は登録を諦めないための再審チャネル。
- 3か月以内の請求+請求書・補正の内容の充実が鍵。
- 成功率を高めるには類似群再チェック・証拠・面接審理等使える手段を総動員。
登録を狙いに行く最後のチャンスです。弁理士と連携し、期限管理と補正戦略を万全にしてリベンジ登録を目指しましょう。