商標権は“願書の記載”が命!──登録商標と指定商品・役務の範囲は願書で決まる理由

商標権は“願書の記載”が命!──登録商標と指定商品・役務の範囲は願書で決まる理由

商標権の内容は、願書に何をどう書くかに大きく左右されます。

というのも、商標法27条では、願書に記載した商標・指定商品(役務)が“そのまま登録の範囲”になることを明文化しているからです。

つまり、一度出願してしまうと書き漏らし・書き間違いは原則取り返しがつかないのです。


商標法27条とは?

  1. 登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。(1項)
  2. 指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない。(2項)
  3. 第一項の場合においては、第五条第四項の記載及び物件を考慮して、願書に記載した商標の記載の意義を解釈するものとする。(3項)

商標の範囲は願書の記載によって確定しますが、条文にはさらに次のポイントがあります。

観点内容
商標の態様標準文字出願の場合、標準文字で表した文字列そのものが権利範囲となり、書体・大文字小文字・色彩の差異は問われません。
– 図形・色彩・位置商標などは願書の【商標登録を受けようとする商標】の記載によって定まります。
詳細な説明の解釈(27条3項)登録商標の範囲を判断する際には、願書に添付した商標の詳細な説明見本(物件)も参照し、願書記載の意義を総合的に解釈することが法定されています。
→ 例:立体商標の場合、願書の図面だけでなく「正面・側面・背面」説明文により立体形状を特定。
指定商品・役務ニース分類(第1類〜第45類)に基づき、願書に列挙した範囲のみに効力が及ぶ。範囲外の商品・役務には原則として権利はおよびません

したがって、願書に書かない要素は権利でカバーできないばかりか、書き方が曖昧だと後の権利行使時に解釈で不利になる可能性があります。詳細説明と見本の内容まで含めて、「どこまでを保護したいか」をブレなく設計することが重要です。


願書でミスをすると起こる5つのリスク

リスク具体例
1. 対象外の商品・役務に権利が及ばない「化粧品」を書き忘れ、後の模倣品に差止請求できない
2. 広すぎる指定で拒絶使用しそうにない商品・役務へ拡大 → 使用意思欠如で3条1項柱書違反
3. 類似群コード誤認で先行商標抵触関連区分を網羅しすぎて4条1項11号に引っかかる
4. 補正が制限される出願後は原則「削除・限定・明確化」しかできない(商標法16条の2)
5. 登録後の取消・無効リスク不使用取消・無効審判請求の対象になる

願書に必ず盛り込むべき3要素

1. 商標登録を受けようとする商標

  • 標準文字、その他の文字、図形等
  • 特に色の指定がなければ、図形はモノクロ濃淡で提出がおすすめ(色彩商標を除く)

2. 指定商品・役務

  • ニース分類+具体的商品・役務名
    • 例:第25類「Tシャツ,帽子」,第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」

3. 出願人情報

  • 法人名・個人名、居所・住所
  • 代表者氏名(代理人によらない場合)

願書作成でのチェックリスト

  1. 先行商標調査で類似群コードを洗い出す
  2. 商品・サービスの現実と将来をマッピング
  3. JPO「商品・役務サポートツール」で標準記載を採用
  4. 区分追加の必要性を経営と相談
  5. 出願直前に弁理士によるセカンドレビューを受ける

まとめ

  • 商標法27条により、願書が商標権の“設計図”となる
  • 記載漏れ・過大指定は拒絶や権利行使トラブルの元
  • 願書は先行調査 → 区分設計 → 専門家レビューの3段階で万全を期す

商標をビジネス資産として最大化するには、願書段階から弁理士とタッグを組み、登録後のリスクをゼロベースで潰しておくことが最短ルートです。疑問があればお気軽にご相談ください。