目次
1. 無効審判って何をする手続?
- 無効審判(むこうしんぱん)は、すでに登録された商標でも「登録要件を満たしていなかった」と証明できればあとから無効にできる制度です(商標法46条)。
- 登録直後しか使えない「異議申立て」と違い、原則としていつでも請求可能。ただし例外もあります(後述)。
ポイント
- 対象商標に✕を付けても、審判で「無効」と決まるまでは効力が続きます。
- 手続は法律上は「口頭審理(審判官と審判当事者が会して口頭で主張・取り調べを行う)」が原則ですが、実際は「書面審理(書面で主張・取り調べを行う)」が主流です。
2. だれが・いつまで請求できる?
原則 | 例外 | |
---|---|---|
請求できる人 | 利害関係人(類似の商標を使用する人・商標権侵害訴訟の被告など) | – |
請求期限 | 制限なし(設定登録後いつでも) | 一部の無効理由については、除斥期間(登録から5年)経過後は請求不可 ex.) 先行商標との類似(4条1項11号、8条1項)、周知・著名商標との類似・混同(4条1項10・15号)など ただし、不正競争の目的や不正の目的で登録を受けた場合は、5年経過後も請求可能な場合あり |
利害関係人とは?
当該登録商標と類似の商標を使用する人、当該商標権者から侵害訴訟を提起されている被告などを指します。一般消費者が単独で請求することは想定されていません。
3. 無効審判でよく使われる“無効理由”6選
条文 | 主な内容 | 例 |
---|---|---|
4条1項11号 | 先に似た商標がある | 「ZUVOO」登録後に「ZUVO」を出願 ⇒ 無効請求 |
4条1項15号 | 周知・著名商標と混同 | 「COCA-KORA」など有名ブランドに近い表記 |
3条1項3号 | 品質・用途を直接示す語 | 「FAST CHARGE」(充電器) |
4条1項8号 | 他人の氏名・肖像を無断使用 | 有名シェフの顔写真ロゴ |
4条1項7号 | 公序良俗違反 | 差別的・卑猥な言葉 |
4条1項19号 | 不正目的での権利取得 | 代理店が勝手に本社ブランドを登録 |
4. 手続の流れ
STEP1 調査と戦略立案
- J-PlatPatで対象商標の情報を確認。
- 無効理由に合致するか洗い出し。
- 必要な証拠(新聞記事、販売実績、Webアーカイブ、SNS投稿など)を収集。
STEP2 無効審判請求書の提出
- 登録番号・請求人(被請求人)・請求の理由等を記載
- 特許庁費用:15,000円+区分数×40,000円
(例:2区分なら 15,000+80,000=95,000 円) - 電子と紙(郵送)は手数料同じ。紙の場合は特許印紙を貼付(収入印紙ではない)
STEP3 書面審理と反論合戦
- 特許庁が審理開始 → 権利者へ請求書の副本を送る。
- 権利者が答弁書で反論。
- 弁駁書で権利者の反論に対して反論。
- 必要に応じて口頭審理(対面またはオンライン)。
平均審理期間:11〜13か月(案件の難易度で変動)
STEP4 審決
- 認容審決(登録無効):登録は遡って無効になり、初めから存在しなかったものとなります。権利者が不服なら知財高裁へ訴訟(審決取消訴訟)。
- 棄却審決(登録維持):請求人が不服なら知財高裁へ訴訟(審決取消訴訟) or 異なる事実&新証拠で再度請求も可(同一の事実&同一の証拠に基づいた請求は「一事不再理」と言って認められません)。
5. 勝率を上げる“証拠”のポイント
目的 | 具体的資料 | コツ |
---|---|---|
先行使用・周知性 | 販売データ、広告資料、Webアーカイブ | 期間と売上規模をセットで示す |
混同の具体例 | 顧客アンケート、誤配送の記録 | 第三者の客観的データが有効 |
品質表示性 | 辞書・業界誌の定義、インターネットの検索結果、SNS投稿 | 「一般名詞化」を裏付ける資料を複数用意 |
6. 費用感と弁理士依頼のメリット
項目 | 目安(税抜) |
---|---|
特許庁費用 | 15,000円+区分数×40,000円 |
弁理士報酬 | 30〜100万円(調査・書面・口頭代理込み) |
追加調査・翻訳費 | 必要に応じ別途 |
弁理士に頼むと…
- 無効理由を漏れなく整理 → 説得力UP
- 証拠不足・形式不備を防止 → ミスや失敗の防止
- 審理での主張立証を代行 → 心理的負担ゼロ
7. まとめ
- 無効審判は登録商標をあとから消せる最終手段。
- 成功の鍵は (1) 適切な無効理由の選定 と (2) 十分な証拠。
- 例外的に「登録から5年を過ぎると無効にできない理由」もあるので、早めの相談が重要です。
ただし、商標の無効審判請求が成功する確率は30~40%程度と高くはないので、無駄な費用をかけないためにも、成功可能性を慎重に見極めることも大切です。
✔ 行動チェックリスト
- 権利侵害の恐れがある商標をJ-PlatPatで特定
- 無効理由が存在するか、5年以内か等確認 → 証拠収集スタート
- 商標専門弁理士に見積もり相談
- 書面提出→審理対応→審決まで並走
無効審判を上手に使い、自社ブランドを守り抜きましょう!