目次
1. そもそも「商標異議申立て」とは?
- だれでも(競合企業でなくても OK)
- 商標掲載公報発行の日から2か月以内
に、特許庁へ「その登録は取り消すべき」と意見を出せる制度です(商標法43条の2)。
※登録前の“拒絶理由通知”と違い、登録後に取り消しを求める手続です。
2. 異議申立てができる3つの条件
条件 | 内容 |
---|---|
① 期限 | 商標登録が公報に掲載された日から2か月以内(延長不可) |
② 理由 | 商標法3条各号、4条各号など登録不可の理由に該当すること(識別力がない、先行商標と類似、周知・著名商標と混同、公序良俗違反など) |
③ 書式 | 「異議申立書」を電子/紙で提出し、証拠を添付 |
ポイント
期限さえ守れば「利害関係」は問われません。一般消費者でも提出可能です。
3. 申立て理由で多い6パターン
- 先行登録・出願商標と同一/類似(4条1項11号)
- 周知・著名商標と類似、混同を生じる(4条1項10号、15号)
- 品質・用途を直接表示する語で識別力がない、誤認を生ずるおそれがある(3条1項3号・4条1項16号)
- 他人の氏名・肖像を無断使用(4条1項8号)
- 外国周知・著名商標と同一/類似(4条1項19号)
- 公序良俗・差別的表現(4条1項7号)
4. 手続の流れ
STEP1 公報の監視
- J-PlatPat の「商標検索」や「商標番号照会」の公報検索で毎週チェック
STEP2 異議申立書の作成
- 登録番号・区分・申立人・申立理由等を記載
- 証拠(新聞記事、Webアーカイブ、販売実績資料など)を添付
⇒登録異議の申立ての理由及び必要な証拠の表示については、登録異議の申立て期間の経過後30日を経過するまでは要旨変更が可能です。つまり、申立て期限までに申立書に最低限の事項のみ記載して提出し、その後30日以内に詳細な申立て理由や証拠を添付して提出することができます(商標法43条の4)。
STEP3 提出と手数料納付
- 特許庁費用:3,000円+区分数×8,000円
(例:2区分なら 3,000+16,000=95,000 円) - 電子と紙(郵送)は手数料同じ。紙の場合は特許印紙を貼付(収入印紙ではない)
STEP4 審理(書面審理)
- 権利者へ写し送付
- 審理開始
- 取消理由(登録できない理由)があれば取消理由通知 → 権利者からの反論書面(意見書)があれば考慮
- 審理期間の目安:6〜8か月
STEP5 審決(決定)
- 取消決定 → 登録取り消し(不服なら権利者が取消訴訟へ)
- 維持決定 → さらに争う場合は「無効審判」を検討
5. 成功率を高める “証拠” の集め方
目的 | 有効な資料例 |
---|---|
先行商標の使用実績 | パッケージ写真、広告、売上資料、取引先パンフ |
周知・著名性の立証 | マスコミ記事、SNS フォロワー数、検索ヒット件数 |
出所混同の危険 | 消費者アンケート、混同例の問い合わせ記録 |
6. 費用と専門家に頼むメリット
項目 | 目安金額(税抜) |
---|---|
特許庁費用 | 3,000円+区分数×8,000円 |
弁理士手数料 | 15〜30万円程度(理由書作成・証拠整理込み) |
弁理士に依頼すると…
- 法的根拠に沿った申立書で説得力アップ
- 証拠の過不足をチェック
- 期限管理を代行してミスを防止
7. まとめ:異議申立ては“登録後30〜60日”が勝負!
- 公報掲載から2か月を過ぎると、異議申立てはできません。
- 不安な類似商標を見つけたら、すぐに証拠収集と弁理士相談が鉄則。
- 異議で取り消せなかった場合も、無効審判など次の手段があります。
自社の事業を進める上で障害となる他社商標を取り消すチャンスを逃さないよう、日頃から商標監視体制を整えましょう。
ただし、商標の異議申立てが成功する確率は10%前後とかなり低いので、無駄な費用をかけないためにも、成功可能性を慎重に見極めることも大切です。