商標の更新を忘れたときの対処法を弁理士が解説

商標の更新を忘れたときの対処法を弁理士が解説

商標の更新を忘れるリスクとよくあるケース

商標は企業や個人のブランドを守る重要な権利ですが、「更新手続をうっかり忘れてしまった」という相談を受けることは少なくありません。

商標の更新忘れは、場合によってはブランド力の低下再取得の手間・コストにつながる重大な問題です。

本記事では、商標専門弁理士の視点から、更新を忘れてしまった場合の具体的な対処法と、未然に防ぐためのポイントを解説します。

商標の更新とは?基本的な仕組みと期限

商標権の存続期間と更新申請のタイミング

日本の商標権は、登録日から10年間有効です。ただし、更新申請を行うことでさらに10年ごとに延長可能です。更新申請は、存続期間満了日の6か月前から受け付けが始まります。

※参考記事

商標権の有効期間は?更新しないとどうなる?失効を防ぐポイント
商標権の有効期間、知らないと損するかも? 「商標権には有効期限があるの?」「更新を忘れると、商標が使えなくなる?」「更新手続きはいつ、どうやってすればいい?」 …
samuraitz.com

更新手続を怠った場合のリスク

更新手続を行わないまま期限を過ぎると、商標権は失効します。

これにより、他者が同じ商標を登録することが可能になり、自社の商品やサービスとの混同リスクが高まります。

商標の更新を忘れた場合に取れる対応策

更新期限後6か月以内:追納期間内での更新手続

実は、更新期限後も6か月間の猶予期間(追納期間)が設けられています。この間に「更新申請」と「更新料」に加えて「割増登録料の支払い」を行えば、商標権を維持することができます。

割増登録料は、更新料と同じ額ですので、結局2倍の費用がかかることになります。
例えば、区分数が1の場合(10年一括納付)は、

  • 更新期限内…更新料:43,600円
  • 更新期限後〜猶予期間内…87,200円(更新料:43,600円+割増登録料料:43,600円

ただし、天災等の責めに帰することができない理由により手続できなかった場合、「割増登録料の支払い」は不要です。

更新を忘れてしまった場合は、まず追納期間内かどうかを確認しましょう。

更新期限後6か月経過~1年以内:追納期間を過ぎた場合の権利回復手続

追納期間(更新期限から6か月経過)も過ぎてしまった場合でも、手続することができなかったことが「故意によるものでない」場合は、権利を回復できる場合があります。

権利回復手続できるのは、「手続ができるようになった日から2か月以内」&「追納期間経過の日から6か月以内」に限られています。

更新の申請書類に加えて、手続をすることができなかった理由を記載した「回復理由書」を提出する必要があります。

さらに、この場合も「更新料」に加えて「割増登録料の支払い」が必要になります。

  • 更新期限内…更新料:43,600円
  • 猶予期間経過後〜権利回復手続期間内…87,200円(更新料:43,600円+割増登録料料:43,600円

権利回復できない場合or更新期限後1年経過:再出願の検討

権利回復できない場合や、権利回復手続期間も過ぎてしまった場合、残念ながら商標権は完全に消滅となります。

この場合は新たに商標出願を行う必要がありますが、他者に同一又は類似の商標を先に取得されていないか、十分な調査が必要です。

商標更新忘れによるビジネスへの影響

権利喪失によるブランドのリスク

更新を怠り権利を失った場合、自社ブランドに対する信頼が損なわれる可能性があります。特に長年使用してきた商標であれば、その影響は計り知れません。

他者に権利を取られる可能性とその対策

第三者が失効した商標を登録してしまうと、元の権利者が使用を続けることが難しくなる場合があります。商標の監視や調査を通じて、こうしたリスクを最小限に抑えることが重要です。

専門弁理士が教える、更新ミスを防ぐ方法

管理体制の整備とリマインダーの活用

商標更新の管理には、期限の記録やリマインダー設定が不可欠です。社内での管理体制を整えることが、うっかりミスを防ぐ第一歩です。

自社で期限管理システムをお持ちの場合は、そちらを利用して更新期限を記録しておいてください。

お持ちでない場合は、Googleカレンダー等の外部サービスを利用することも便利です。

また、特許庁の方でも、納付期限日をメールにてお知らせしてくれる「支払期限通知サービス」を用意していますので、アカウント取得の上、登録してみてください↓
https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/kigen_tsuchi_service.html

弁理士への依頼で安心のサポート体制

弁理士に更新業務を依頼することで、期限管理や手続の漏れを防ぐことができます。また、予期せぬトラブルが起きた場合も、専門的な対応が可能です。

まとめと結論

商標の更新を忘れてしまった場合でも、回復のチャンスはあります。まずは落ち着いて現在の状況を確認し、必要な対応を速やかに行いましょう。商標は大切な無形資産ですので、日頃からの管理と専門家のサポート体制が鍵となります。

商標の管理や更新に不安がある方は、ぜひ商標専門の弁理士にご相談ください。期限管理の代行だけでなく、商標の再出願や監視サービスなど、幅広いサポートをご提供しております。お気軽にお問い合わせください。