位置商標とは?商標専門弁理士がわかりやすく解説

位置商標とは?商標専門弁理士がわかりやすく解説

マークの「配置」も商標になる時代へ

商標といえば、文字やロゴマークそのものを登録するイメージが強いかもしれません。
しかし実は、ロゴや標章が「どこに配置されているか」という位置そのものを商標として登録できる制度があります。
それが「位置商標」です。

この記事では、位置商標の基本から登録要件、実例、そして部分意匠との違いまで、商標専門弁理士がわかりやすく解説します。


位置商標とは?

位置商標とは、商品またはその包装における特定の「位置」に標章(マーク)を表示したものを保護する商標です。
商標法第2条第1項柱書の「その他政令で定めるもの」に基づき、商標法施行規則第4条の6でその態様が定められており、2015年から出願が可能になりました。

たとえば:

  • 靴の側面に特定のロゴを配置した場合(サムネ画像のコンバースのオールスターの位置商標登録もあります(登録第6103554号))
  • Tシャツの裾にブランドタグが常に付いている場合
  • 化粧品のキャップ部分に決まったマークがある場合

こうした「位置×標章(マーク)」の組み合わせが、商標としての識別性を持つ場合に、位置商標として登録可能です。


登録されるための要件

✅ 願書に位置商標である旨の記載があること

  • 位置商標であることを明記
  • 図や写真を用いて、実線・破線・着色等により標章とそれを付す位置を表す(例えば、商標に係る標章を実線で描き、その他の部分を破線で描く)

✅ 自他商品・役務識別力(識別性)があること

商標は、「自分と他人の商品やサービスを識別するための標識(自他商品・役務識別標識)」です。
単なる装飾ではなく、「その位置にあるその標章を見ることで、そのブランドの商品だとわかる」必要があります。

✅ 識別性が弱い場合は「使用による識別力の獲得」が必要

もし商標の識別力が明確でない場合には、その位置に継続的に使用され、広く認知されていることを立証することで登録の可能性が出てきます。

この場合には、長年にわたる一貫した使用実績の証明や、消費者調査、売上資料などが求められることもあります。


実際に登録されている位置商標の例

※位置商標の登録例

EDWINのズボンの後ろポケット左上方にあるタブ図形
(登録第5807881号)

(部分拡大図)

キユーピーマヨネーズの包装の上部に位置する網の目状の図形
(登録第5960200号)
日清の即席麺の包装の上下2箇所の周縁に付された図形
(登録第5807881号)
松屋の店舗外観のガラス窓や壁面の上部に付された図形
(登録第6305813号)
フレッドペリーのポロシャツの左胸、襟端周り、両袖口部分の図形
(登録第6028117号)
TASAKIの指輪上部に付された立体的形状
(登録第6502033号)

これらはすべて、「その位置にあること」自体がブランドを示すサインとして機能しているため、商標登録が認められています。


部分意匠との違いと使い分け

位置商標と比較されるのが、「部分意匠」です。両者には明確な違いがあります。

比較項目位置商標部分意匠
保護対象特定の位置にある標章(識別標識)物品の一部形状・模様・色彩など(デザイン)
登録要件識別力(または使用による識別力)、先願、公益に反しない等新規性・創作(非容易)性等
使用の必要性識別力がない場合は一定の使用実績が重要不要(使用すると新規性を失う)
保護期間10年(10年ごとに更新可)最長(登録から)25年

→ ブランドの「自他商品・役務識別」機能を守りたいなら位置商標「デザイン・見た目の新しさ」を守りたいなら部分意匠が基本方針です。


弁理士に相談するメリット

✅ ① 識別性や登録可能性の事前判断が可能

位置商標の審査は厳しく、形式だけではなく実質的な識別力が重視されます。
弁理士であれば、実際の使用実態や他の類似事例から、登録の可能性を予測できます。

✅ ② 出願図面・説明書の適切な作成をサポート

位置商標では、「どの位置に、どのように表示されるか」を正確に表現した図面と説明書が必要です。
経験のある弁理士であれば、審査官に伝わりやすい資料を整備できます。


まとめ|位置までもブランドとして保護する「位置商標」

  • ロゴや標章そのものだけでなく、「どこにあるか」もブランド価値に含まれる時代
  • 登録のハードルは高いが、位置商標を活用すればブランドの一貫性と差別性を強固に保護できる
  • 自社商品に該当しそうなものがある場合は、早い段階で商標専門弁理士に相談することをおすすめします。