立体商標とは?商標専門弁理士がわかりやすく解説

「形」も商標が取れる?意外と知られていない保護手段

商標といえば、「文字」「ロゴ」「マーク」などを思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし実は、立体的な形状(3Dの形)も、条件を満たせば商標として登録することが可能です。

この記事では、「立体商標」とは何か、その登録要件や実例、意匠権との違いも含めて、商標専門弁理士が解説します。


立体商標とは?

商標法第2条第1項柱書では、「文字・図形・記号その他の立体的形状…」と記載されており、立体的形状も商標の一形態として明示されています。

ただし、「立体商標」という用語の定義自体は、商標法上に明文では規定されていません。
実務では、商品や包装、キャラクター像などの立体形状を「立体商標」と呼び、他の商標と区別して扱われます。


立体商標の登録要件と特徴

✅ 自他商品・役務の識別力が必要

商標は「自分と他人の商品やサービスを識別するための標識(自他商品・役務識別標識)」です。
したがって、単なる装飾・機能・形状ではなく、見ただけで「どこの商品か」がわかる程度の識別性が求められます。

✅ 使用によって識別力を獲得している必要があることが多い

立体商標の多くは、初めから識別力があると評価されにくいため、「使用による識別力の獲得(周知性)」が必要になります。


登録される立体商標の実例

実際に登録されている立体商標の多くは、「広告塔」「キャラクター像」「シンボル的な立像」など、象徴的な存在として認識されているものです。

一方で、商品の形状や包装容器の形状については、実務上、「機能的・一般的な形状である」として識別力がないと判断されることが多く、登録のハードルが非常に高いとされています。登録が認められるためには、長年の継続的なマーケティング活動、販売実績を通じた「その形状=特定のブランド」というお客さんの認識が必要です。

※立体商標の登録例

不二家の「ペコちゃん像」
(登録第4157614号)
ケンタッキーフライドチキンの「カーネルサンダース像」
(登録第4153602号)
早稲田大学の「大隈重信像」
(登録第4164983号)
コカ・コーラのビン
(登録第5225619号)
ヤクルトの容器
(登録第5225619号)
キッコーマンの卓上醤油瓶
(登録第6031041号)
Hondaの「スーパーカブ」
(登録第5674666号)

ショウワノートの「ジャポニカ学習帳」
(登録第5639776号)
明治の「きのこの山」
(登録第6031305号)

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意匠権との違いとは?

比較項目立体商標意匠権
保護対象自他商品・役務識別機能を有する形状物品・建築物・画像などのデザイン
登録要件識別力(または使用による識別力)、先願、公益に反しない等新規性・創作(非容易)性等
保護期間10年(10年ごとに更新可)最長(登録から)25年
使用実績の有無商品や包装容器の形状については、実務上求められることが多い不要(使用すると新規性を失う)

弁理士に相談するメリット

✅ 立体商標として登録可能かを実務的に判断できる

  • 「形状に識別力があるか」「過去の使用実績をどう証明するか」など、立体商標特有の審査ポイントに対応可能

✅ 意匠との併用・切り替え戦略も含めて設計できる

  • 登録ハードルが高い場合は、意匠権での保護を提案することも可能

まとめ|形そのものをブランドとして保護する手段、それが立体商標

  • 立体商標は、形状自体に識別力がある場合、商標として登録し、他者の模倣を排除することが可能
  • ただし、登録のハードルは高く、使用実績や象徴性が必要となるケースが大半
  • 自社のキャラクター像・店舗装飾・容器などの形状が「ブランド」として認知されているなら、弁理士とともに立体商標の可能性を検討しましょう。