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個人名義の商標、相続でどうなる?放置はリスクです
商標は、特許や著作権と同様に「財産権」として扱われます。
そのため、商標出願人や商標権者が亡くなった場合には、その権利は相続の対象になります。
とはいえ、「名義はそのままでも問題ないのでは?」と考えて放置していると、通知が届かなくなったり、権利が失効したりする可能性も。
この記事では、個人名義の商標を保有していた人が亡くなった場合に、出願中・登録済のそれぞれで必要な手続きや注意点を商標専門弁理士が解説します。
商標は「財産権」なので、原則として相続の対象になります
- 出願中の商標も、登録済の商標も、個人の財産として相続対象になります
- 相続人が複数いる場合は、相続開始時点で法定相続分に応じて共有状態になります
- 相続人のうち1人が単独で権利を引き継ぐには、遺産分割協議などの対応が必要です
出願中の場合:出願人名義変更届(一般承継)
✅ 手続の概要
- 手続名:出願人名義変更届(一般承継)
- 手数料:0円(無料)
- 添付書類:
- 法務局発行の「法定相続情報一覧図(写し)」
または - 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍等の一式
- 法務局発行の「法定相続情報一覧図(写し)」
- 相続人が複数いる場合は、出願は共有状態として変更されます
登録済の場合:相続による移転登録申請書
✅ 手続の概要
- 手続名:相続による移転登録申請書
- 手数料:収入印紙 3,000円/件
- 添付書類(必須書面):
- 法定相続情報一覧図(写し)
または - 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍等の一式
- 法定相続情報一覧図(写し)
- 場合によって必要な書面:
- 遺産分割協議書(遺産分割協議の結果、一人だけがすべての遺産を相続することになった場合)
- 相続放棄の受理証明書(相続人が放棄している場合)
- 相続分不存在証明書(特別受益(生前贈与)を受けているため、相続分がないことを証明する場合)
📌 添付書類は相続関係の状況により異なります。
📌 登録原簿上の名義が相続人に更新されてはじめて、正式な権利者としての効力が発生します。
放置するとどうなる?
✅ 通知が届かず、手続き不能になることも
- 出願や登録名義が故人のままでは、拒絶理由通知や審判関係書類が旧住所・旧名義に送られてしまい、不達になる可能性あり
- 応答できなければ、出願却下や権利喪失のリスクがあります
✅ 使用していても、権利行使に問題が生じるおそれ
- 相続人が商標を使い続けていても、法的には無権利者とされるリスクあり
- 更新やライセンス、譲渡等の手続きも名義変更なしでは進められません
弁理士に依頼するメリット
✅ 相続関係の整理から手続きまで一括対応
- 複雑な戸籍・相続関係書類の収集や不備チェック
- 相続人が複数いる場合の共有対応や遺産分割協議にも配慮可能
✅ 他の知的財産も含めた相続対応が可能
- 商標だけでなく、特許・意匠・著作権等の一括管理と名義変更も相談可能です
まとめ|商標も相続されます。名義変更手続きは必ず行いましょう
- 商標は「相続財産」であり、亡くなった後も、正しい手続きを踏めば相続人が権利を引き継げます
- しかし、特許庁での名義変更手続きを行わないと、通知不達・手続不能・法的リスクが発生します
- 相続関係が複雑な場合や、権利の活用を検討している場合は、商標専門の弁理士に相談するのがおすすめです