商標出願中・登録後に住所変更したら?必要な手続きと注意点を弁理士が解説

商標出願中・登録後に住所変更したら?必要な手続きと注意点を弁理士が解説

引っ越し後、特許庁への住所変更…忘れていませんか?

商標を出願中、あるいはすでに商標登録を受けた後に、引っ越しや事業所移転などで住所が変わることは少なくありません。
ところが、「特許庁に届出が必要とは知らなかった」というケースは意外に多く見られます。

住所変更の届出をしないままでいると、重要な通知が届かず、手続きの不備や権利喪失といったリスクが生じる可能性があります。

この記事では、商標専門弁理士の立場から、住所が変わったときに必要な届出と注意点、考えられるリスクと対策を分かりやすく解説します。


商標出願・登録後に住所が変わったら、届出が必要です

特許庁では、商標出願人や商標権者の住所を公的に管理しています。
この住所に基づいて、拒絶理由通知、審査結果、審判関係通知などの書類が送付されるため、現実の住所(法人なら登記上の住所)と登録上の住所が一致していることが望ましいです(現実の住所を明かしたくない場合は、せめて確実に郵送物を受け取れる他の住所を記載する必要があります)。

もし住所変更があった場合には、速やかに所定の手続きを通じて変更を届け出る必要があります。


出願中と登録後で手続きが異なります

✅ 出願中の場合:「住所変更届」

出願人が特許庁に「申請人登録(識別番号)」をしている場合、1通の「住所変更届」で、すべての出願に一括して反映させることが可能です(識別番号がない場合、まずは識別番号の付与を請求する必要があります)。

  • 届出先:特許庁長官
  • 記載事項:識別番号、旧住所、新住所、氏名又は名称など
  • 収入印紙代はかかりません

▶ 詳細案内:
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/tetuzuki/isdn_yoshiki.html


✅ 登録後の場合:「登録名義人の表示変更登録申請」

商標権者の住所が変わった場合は、「登録名義人の表示変更登録申請書」を提出し、登録原簿上の表示を更新します。登録1件ごとに手続が必要ですが、複数件をまとめて手続することもできます(その場合も、収入印紙代は件数分必要です)。

  • 届出先:特許庁長官
  • 記載事項:登録番号、旧住所、新住所、申請人の氏名又は名称など
  • 登録簿の情報が変更されるため、将来的な譲渡、ライセンス契約、審判請求、同じ名義による出願などにも関わってきます
  • 申請時には収入印紙代が必要になります(2025年現在:登録1件につき1,000円

▶ 詳細案内:
https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/iten/tetsuzuki_01.html


届出しないまま放置するとどうなる?想定されるリスク

✅ 拒絶理由通知や補正命令が届かず、対応できない

特許庁からの通知が届かず期日までに応答できなかった場合、

  • 拒絶査定が確定
  • 出願が却下
    といった結果を招く可能性があります。

✅ 第三者からの審判通知が届かず、反論機会を失うおそれ

  • 異議申立て、無効審判、不使用取消審判などが提起された際に、
    通知書類が届かなければ、反論や防御の機会を失うことになります。
  • 結果として、知らない間に権利が取り消されていたという事態にもなりかねません。

弁理士に依頼している場合の安心ポイント

✅ 代理人がいる場合、通知先は弁理士事務所になる

出願時に弁理士を代理人として指定している場合、
特許庁からのすべての通知は弁理士に送付されるため、出願人の住所変更による通知漏れリスクは大幅に軽減されます。

✅ 継続的な管理と届出手続きも依頼可能

  • 複数の出願・登録案件を一元管理
  • 必要な届出書類の作成・提出も代行可能
  • 今後の権利移転や更新を見据えた適切な記録管理も行えます

まとめ|住所変更も、立派な「商標権の管理業務」です

  • 商標出願中や登録後に住所が変わったら、特許庁への届出が必須です
  • 放置していると、通知不達による不利益や、権利喪失のリスクがあります
  • ご自身での対応に不安がある場合や、案件数が多い場合は、商標専門弁理士に依頼することで、安心・確実な管理が可能です

まずは、現在の登録内容と実際の住所が一致しているかを確認してみてください。