RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる

RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる

・「RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる」(デイビッド・エプスタイン (著), 東方 雅美 (翻訳), 中室 牧子 (その他))
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専門特化だけでは足りない。幅広い経験と思考が、未知の課題を突破する最強の武器になるという信念の書です。

本書の内容

本書の根幹メッセージは、「”深さ”を追求する前に、“幅”を持っておくことの価値を認めよう」ということです。変化が速く、先が見えにくい現代社会では、専門分野だけに閉じこもると、既存のパターンには強くても新しい問題に対応できない脆さが露呈する…著者はそのように指摘します。

「親切な世界(ルールが明快でフィードバックが早い状況)」と「意地悪な世界(ルールが曖昧で環境が変わりやすい状況)」という二つのタイプを対比し、後者の環境では“レンジ”(経験の幅や多様性)がむしろ強みになる。早期から専門に特化しすぎることは、意外にもその世界での対応力を制限してしまうということなんですね。

確かに、狭い範囲の専門特化については生成AIの活用が進んできており、人間が活躍する場面は減っていくように思います。人間の強みはむしろ、幅広い知識や情報を統合して新しいものを創造したり、さまざまな状況に順応していくことにあるのかもしれません。

意外なことに、テック系企業の創業者では、50歳の人は30歳の人よりも大成功する確率が2倍近く、大きく成長している企業も、創業時の平均年齢は45歳だったという調査結果があります。専門特化よりも、幅の広さや多様な経験、分野横断的な思考こそが、複雑化する世界の課題に対応するために必要なのだということですね。

さらに、幅を持つことがどう能力につながるかも、実例と研究を通じて示されます。たとえば、アスリートや芸術家が複数の経験を持っていたり、異なる分野の学びを持ち寄ることで問題解決力が高まった例など。こうした事例が「専門家だけでは対応できない変化の激しい世界で、どう生き残るか」のヒントになっています。


読んで感じたこと

この本を読みながら、「専門特化こそ正義」と思って、実際にそのようにキャリアを重ねてきた自分が、知らず知らずのうちに選択肢を狭めていたなという気持ちが湧いてきました。専門を深めることにも価値はあるけれど、それが自分の可能性を閉じることにもなりうるという視点は、新鮮であり怖くも感じました。

また、「遠回りの経験」や「幅広く試すこと」が、見た目には効率が悪く見えても、結果的に予想外のところで効きを発揮する場面があるという事例は、自分の日常や仕事の選択にももう少し「遊び」や「好奇心」を追う余白を持とうという気持ちを与えてくれました。

専門家や経験を重ねた人だけでなく、若手やキャリアの転換期にある人にも、この本のメッセージは救いになると思います。「幅を持つこと」に早すぎることも遅すぎることもないでしょう。


こんな方におすすめ

  • 早期から専門特化を迫られていて、「この道でいいのか」と迷いを抱えている人
  • 多様なスキルや経験を持っているけれど、それをどう活かしていいか分からない人
  • 新規事業や変化の速い業種で働いていて、未知の問題に対応する力を求められている人
  • 自分のキャリアの選択肢の可能性を、もっと広げたいと思っている人

この本を読み終えたとき、頭の中で「専門 vs 幅」という白黒思考が少し柔らかくなり、「幅を育てること」が自分の生き方や働き方にとっての強みになりうるという確信が残りました。知識の幅を広げたいと思っている人には、間違いなく手に取ってほしい一冊です。

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