・「成功はどこからやってくるのか？ ~「成功法則」の取扱説明書~」（岡本 吏郎 (著)）
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巷にあふれる成功本に違和感を覚えてきた人にこそ刺さる一冊です。
世にある成功法則では成功できない理由を解説しているので、自己啓発本を読む前に読むべき自己啓発本、ともいえます。
本書の概要
サイドA──成功法則で成功できない本当の理由
「毎日目標を書けば叶う？」…そんな軽やかなフレーズを頭ごなしに信じている人に、バッサリと切り込んできます。プラス思考を「結果論に過ぎない」と喝破し、「脳は3%しか使われてない」説は根拠がないと断定。おまけに、モーツァルトでアルファ波が出るというのも因果関係がないと指摘しています。
要するに、この世の中では科学的概念を通常の文脈から離れて使っていることが多くあり、成功法則と呼ばれるものと一歩距離を置いて付き合うことの重要性が説かれています。
そして、世の中には足元の火消しに追われているなど、成功法則を利用する次元に立っていない人がいて、成功法則以前の問題解決をしていないのが、成功法則で成功できない本当の理由なのだと述べています。
それでは、どのような手順を踏めば成功できるのでしょうか？
まずは、現在マイナスになっている状態をゼロに戻すこと。「Unfinished Business（未完結のわだかまり）」と言いますが、そこから逃げると同じような事件が起きるので、ここの解決を先決にするのだそうです。
次に、ノウハウに依存する心の弱さを認識して、すべての選択に責任を持つこと。
そして、心のメカニズムを知り、心のおもむくようにしてあげて、「ねばならない」という考え方をやめる。
最後に、「創発」の仕組みを頭に入れて待つのです。
これは物理化学者マイケル・ポランニーが提唱した概念で、「創発」により次元を上に上げなければ今の問題は解決できない構造なのだそうです。生命が誕生したのも、この「創発」が起きたからであり、無機物同士の結合が繰り返される中で偶然有機物が生まれたのですね。
「創発」のスイッチが入ると、自分が認識する能力を超えた存在「あいつ」がやってきて、「あいつ」によって物事が動かされ始めるとのこと。自分の中に潜む「あいつ」が顔を出す瞬間に出会うためには、主体的に自分を進歩させようとして、ストイックな準備をしながら気楽に実行することが重要だと説いています。
「創発」が起きるまで淡々と物事を続けるのはなかなか難しいですが、このような仕組みを知っていることで途中で諦めてしまうリスクが減らせると思います。
サイドB──「偶然を待つ力」が人生を変える！
後半では、「創発」を起こすカギとなる「偶然を待つ力」について解説されています。
「偶然を待つ力」が発揮されると、新規事業を始めようとしたら、たまたま新規事業の依頼が入ってきたり、たまたま飲みに行った先で手に入れた情報のおかげで、長年止まっていた事業が進んだり、ということが起きるそうです。
では、どのように手に入れるのかというと、端的にいえば、無意識の力を信じて、ぼーっとして「ありがとう」と声をかけながらゆだねる、というもの。なんだかスピリチュアルな感じもしますが、リスクもないので、それこそ偶然に全身をゆだねて浮く感覚で、試しにやってみるといいでしょう。
その他、日本人に合う「偶然を待つ力」を育む成功ノウハウとして、「全責任を持つ覚悟を決める」「リフレーミング」「目の前で起きたことをそのままとらえる」「対立した思考で物事を判断しない」といった方法が紹介されています。
そして、大衆との同質化の流れに逆らうために、人がやらないこと、実行しづらいことをスピード感を持ってやることが重要だと述べられています。
まとめ
読み終えた後、「何をすれば成功できるか？」ではなく、「どんなあり方でいれば、人生が自然と展開していくか？」という問いに変わっている自分がいました。
決して難しい内容ではないのですが、著者の岡本先生特有の、遠回りな言い回しや補足情報による脱線、抽象的表現、問いに対していつまでも回答が出てこない、雲をつかむような文章展開に、脳の負荷がかかって脱落する人もいるかもしれません。しかし、”わかりやすいノウハウ”を求める気持ち自体が、この本で指摘されている「心の弱さ」なんですよね。自分にとって必要な情報は勝手に入ってくる思って読み進めると、読後の世界の見え方が一変していることでしょう。
成功法則に違和感を持ったことがある人、他人の正解ではなく“自分だけの道”を探している人には、静かに勇気をくれる一冊だと思います。
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