※2025年6月3日配信メルマガVol.335より抜粋(一部加筆修正あり)
目次
「十六茶」のプロモーション戦略「差し入れ大作戦」
アサヒ飲料の「十六茶」が「差し入れ大作戦」という新しいプロモーションを開始しました。
・「販売実績112%の「アサヒ 十六茶」、「差し入れ」で狙うブランド拡大戦略」
https://www.advertimes.com/20250529/article499386/
全国で約4万本のサンプリング実施という大規模な試みで、
注目すべきは、「顧客自身が他人に商品を差し入れる」という仕掛けです。
公式アカウントをフォローして、指定のハッシュタグをつけて投稿すると、
抽選で100人に「十六茶」のペットボトル(630ml)24本セットが当たるというキャンペーンで、
「差し入れ」というキーワードを使ってブランドの拡大を図っています。
「差し入れ大作戦」が有効な2つの理由
では、なぜこれが効くのでしょうか。
①記憶に残り、心理的ハードルも下がる
1つは、企業からの宣伝より、「知人からの差し入れ」の方が記憶に残りやすく、
心理的ハードルも下がるからです。
「ノンカフェイン」の特徴を活かして「止渇」と「健康」の価値訴求を行い、
家族や高齢者等への贈り物としての需要を開拓しているんですね。
しかし、これだけでは多額の費用をかけてプロモーションを行う理由がつきません。
②ニーズ発生時に思い出すきっかけになる
そこで、さらに検討すると、
「差し入れ」と「十六茶」を結びつけて記憶に残してもらうことで、
「差し入れしよう」と考えた時に、
「十六茶」を思い出すきっかけになるからだと思われます。
このような商品やサービスを購入しようとするときに思い出すきっかけのことを、
「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」と言いますが、
まさに、「水分補給のための差し入れをしたい時」に、
真っ先に「十六茶」を思い出してもらうためのキャンペーンになっているのですね。
「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」を多く作ると売上が上がる
そして、この「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」を
いかにたくさん作るか、というのが、
商品・サービスの売上に関わってきます。
なぜなら、人がものを買う時は、まずはニーズやウォンツが発生して、
それから頭の中の引き出しから、いくつかの商品・サービスを思い浮かべて、
好感度の高いものを選ぶ、という手順を踏むからです。
最初のニーズやウォンツが発生する状況が、
「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」なので、
なるべく多くのニーズやウォンツと商品・サービスが結びつく方がいいことがわかります。
したがって、「十六茶」が新しい「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」を設けて、
大きなプロモーションを打っているのも説明がつきますね。
小資本でも実施可能
そして、この考え方自体は、
プロモーションに多額の費用をかけられない中小規模の事業でも応用できます。
手順としては、
①お客さんがどんな時に自社の商品・サービスを買ってくれるのか、リサーチする
②「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」をピックアップする
③ニーズやウォンツを自社の商品・サービスが満たしてくれるという形で、LP(販売ページ)を作る
といったところです。
特に、今回の「十六茶」のように、
「知人に勧めたくなる理由」や「ちょっと贈りたくなるきっかけ」を設計できれば、
広告費をかけずともブランドがじわじわ広がります。
ぜひチャレンジしてみてください。
「十六茶」はジョイントベンチャーで大ヒット
ちなみに、「十六茶」はもともとシャンソン化粧品が1985年に発売した商品で、
商標登録もしています(登録第2028386号他)。
1993年にアサヒ飲料と提携して全国的に発売し、大ヒットしたとのこと。
原料の加工をシャンソンが行なって、アサヒが販売するという形を取っており、
タッグを組んで30年以上も成功し続けているのが驚きですね。
