※2024年12月17日配信メルマガVol.311より抜粋(一部加筆修正あり)
アサヒの2つのヒット商品
「生ジョッキ缶」
ここ数年のアサヒビールの快進撃は目覚ましいものがあります。
例えば、2021年に発売開始した「生ジョッキ缶」。
缶の全面が開く仕様となった蓋を開けると、
生ジョッキのように泡が出る仕組みになっています。
缶を開けるときや泡が出る時の音、
そして泡が溢れてくる様子など、
五感で楽しめる新しい缶ビール体験が
若い世代を中心にウケて大ヒットしました。
本来は缶ビールで泡が立つことは「不良品」の証拠だったのですが、
これをプラスの価値に転換した点がイノベーティブですね。
「生ジョッキ缶」の商標登録はもちろんのこと(登録第6466697,6519948号)、
泡が立つ容器の構造についての特許も取得しています(特許第7161596号)。
「未来のレモンサワー」
そして、今年発売した「未来のレモンサワー」。
「生ジョッキ缶」と同様、フルオープンの蓋を採用し、
蓋を開けると生のレモンスライスが浮き上がってくる構造になっています。
サワーの音にレモンが浮き上がる動き、
そしてレモンの香りと味といった、
五感を刺激する要素が盛り沢山。
居酒屋で飲むような驚きと感動をもたらし、ヒットしています。
こちらも、「未来のレモンサワー」の商標登録(登録第6681957号)を取得し、
特許の方も審査中です(特開2023-172534)(→その後、2025年4月15日に特許になりました)。
ヒットを生んだ社長の「マーケティング」の捉え方
このように、立て続けにイノベーションを生み出し
ヒットさせているアサヒビールですが、
その秘密の一つに
実は現アサヒビール社長の存在が大きく関わっているようなんですね。
松山社長が元々マーケターであり、
出身であるP&Gが
「お客さんが気づいていない新たな価値を創造する」
という考え方をベースにしていたのです。
マーケティングというと、
つい「集客」を意味する言葉のように考えてしまいますが、
松山社長はもっと広く捉えていて、
「価値を生み出して顧客を創出すること」をマーケティングと定義しています。
売れる商品を作るには?
そして、「価値を生み出す」上で最も重要なのが、
「売れる商品を作ること」です。
売れる商品を作らなければ、
どんなに売り方に力を入れても売れません。
逆に「売れる商品」を作れば、
さほど売る努力をしなくても売れてしまいます。
では「売れる商品」をどう作るのか?
それは、
「まだ満たされていないニーズ(アンメットニーズ)を満たす」
ことです。
「生ジョッキ缶」と「未来のレモンサワー」も
缶のまま居酒屋のようなビールや酎ハイ体験ができるという、
まだ満たされていなかったニーズを満たしていますよね。
“快楽を与える商品”より売れる商品とは?
ただし、アサヒビールの事例は、
お客さんに快楽の感情を与えていますが、
それよりも売れる商品があります。
それは、
お客さんの不快の感情をなくす商品です。
わかりやすくいうと、
未解決の悩みを解消してくれる商品ですね。
例えば、「肝斑」と呼ばれる皮膚の疾患を改善する効果があるとして
唯一のOTC医薬品として認められた
第一三共ヘルスケアの「トランシーノ」があります。
それまでは市販の肝斑治療薬がなかったので、
未解決の悩みを解消してくれる商品です。
悩みを解消してくれる商品の方が、
お客さんは高いお金を払ってくれますので、
より中小企業向きと言えます。
自分の関わる業界で、
まだ満たされていなかったニーズはあるか?
それを満たすことで未解決の悩みを解消できるか?
考えてみるといいですね。