トップブランドへの不満を解決して逆転した「モンスターエナジー」

トップブランドへの不満を解決して逆転した「モンスターエナジー」

※2023年4月11日配信メルマガVol.22 3より抜粋(一部加筆修正あり)

トップブランドに対する不満と新たなニーズが発生

前回、顧客に新しい価値観を植え付け、
「エナジードリンク」という新しい市場を生み出した
レッドブル」について解説しました。

「レッドブル」、驚きの戦略。「まずくて、高くて、量が少ない」から売れる!?
※2023年4月4日配信メルマガVol.222より抜粋(一部加筆修正あり) 「レッドブル」は「リポビタンD」にヒントを得て誕生した!? エナジードリンク市場で最…
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エナジードリンク市場で揺るぎない地位を確立したかに見えた「レッドブル」でしたが、
その一方で、「レッドブル」の顧客の一部には、
あるフラストレーションが溜まり始めていました。

それは、
「気分が上がるのはいいけど、もう少し「おいしくて」「安くて」「量が多い」ものが飲みたいよね」
という不満です。
「まずくて、高くて、量が少ない」という「レッドブル」は、
「だからこそ効きそうだな」という、いわゆる「コントラフリーローディング効果」で売れていたのですが、
次第に慣れてしまって、飽きられ始め、正反対のニーズが生まれたのですね。

「レッドブル」の不満を解決した「モンスターエナジー」

そこで登場したのが「モンスターエナジー」です。
おいしくて」「安くて」「量が多い」「モンスターエナジー」は、
2002年に米国で販売され、2012年に日本に上陸しました。

市場の拡大に応じてターゲットとする年齢層が広がってきた「レッドブル」に対し、
「モンスターエナジー」は、かつての「レッドブル」と同じ若年層男性をターゲットに定め、
コアに絞り込み
ました。

そして、「レッドブル」が185mlで税込205円なのに対し、
「モンスターエナジー」は355mlで税込205円と、
お得感を打ち出しました(当時の値段なので、現在は異なります)。
ターゲットの世代の人たちは、さほどお金に余裕があるわけではないので、
この値頃感に反応しました。

さらに、「レッドブル」が1つのフレーバーに限られていたのに対し、
「モンスターエナジー」は、発売当初から複数のフレーバーを展開
次々と新フレーバーが発売され、飽きっぽい若者を満足させることに成功します。

また、男性だけでなく女性もターゲットにするようになり、
特にピンク色の缶の「パイプラインパンチ」は
売れすぎて生産が追いつかないほどまでになりました。

マーケティングでも異なるアプローチを採用

こうした差別化された商品戦略に加え、
マーケティングにおいても、TVCMを展開する「レッドブル」に対して、
「モンスターエナジー」はSNSで認知を拡大していきました。
若い世代は、TVよりもSNSによる情報収集に重きをおく傾向があり、
SNSでのレビューを参考にして消費活動を行う流れがあるからです。

新製品を出す時も、正式発表前にあえて「流出」させて、
「待ち遠しい」気持ちにさせるのも巧みです。

また、サンプリングの配布も、「レッドブル」の4~5倍に当たる量を365日行っており、
サンプリングカーと配る人と一緒に写真を撮って、SNSにシェアしてもらうようにしました。

そもそも「モンスターエナジー」は「飲料メーカー」ではなく「ブランドメーカー」という意識があり、
Tシャツやパーカーやキャップ、ステッカーなどの公式グッズも展開して、
ブランディングに力を入れていったんですね。

こうして、若い世代から絶大な支持を得た結果、
ついに日本では、後発の「モンスターエナジー」が「レッドブル」のシェアを上回りました。
現在では、「レッドブル」が値下げに追い込まれ
逆に「モンスターエナジー」は値上げをして、逆転現象が起こっています。

業界2位が取るべきは、1位への不満に着目した「差別化集中戦略」

同業他社に強いリーダーブランドがあって、自社が2位の地位に甘んじている場合、
「モンスターエナジー」のような「差別化集中戦略」をとることは有効です。

まずは、ターゲットを、
リーダーにとって今さら参入が難しい、隙のある特定の狭い範囲に絞ることで、
参入障壁を築きやすい形にします。

そして、単に多フレーバー化、低価格化、増量化で差別化したわけではなく、
既存のエナジードリンクの顧客層の「不満」に着目して、
その「不満を解決する商品」を作って、結果的に差別化したわけですね。

特定の顧客層に、差別化された商品を投入するために、
必要なマーケティング施策を一点突破で実行する。
それ以外の層には見向きもしない。
これにより、ブランドの一貫性が生まれ、
狙った顧客に支持され続ける体制を作ることができます。

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