※2022年10月25日配信メルマガVol.199より抜粋(一部加筆修正あり)
目次
スイスの高級時計ブランド「HUBLOT(ウブロ)」
高級腕時計ブランド「HUBLOT(ウブロ)」をご存じでしょうか?
https://www.hublot.com/ja-jp/homepage
十数年前まではさほど知られていませんでしたが、
近年、特に男性の間では人気が高いですよね。
ビス留めされたベゼルのデザインが、
船体にある舷窓(げんそう)のように見えることから
「舷窓」のフランス語の「Hublot」と名付けられたようです。
1979年にスイスで誕生した「HUBLOT」は、
金属性素材の本体にラバー素材のバンドを組み合わせるなど、
比較的新しい企業らしく、
他が考えないような斬新で個性的なデザインをいくつも生み出しました。
そして、「The Art of Fusion(異なる素材やアイデアの融合)」をコンセプトに、
セラミックやチタンといった新しい素材と
ステンレスやゴールドといった伝統的な素材を組み合わせた
「ビッグバン」シリーズが、
2005年に誕生すると特に人気を集めました。
「HUBLOT」の日本における改革
「HUBLOT」が日本でもよく知られるようになったのは、
ちょうどこの「ビッグバン」シリーズが登場した2005年頃です。
ちょうどその頃、
ジバンシー、イヴ・サンローラン、
タグホイヤー、シスレー、エスティローダーといった、
世界的な著名企業の日本における要職を務めてきた
高倉豊さんが日本の代表に就任しました。
高倉さんがウブロジャパンへの入社当時、
全然売れてないにも関わらず、
国内にはすでに50店舗ほど取扱店があったそうです。
しかし、社員はたった3名、
営業は契約社員しかいない状況。
50店舗もあると回りきれないし、
店舗スタッフもやる気がない。
ということで、まずは26店舗に縮小して、
1店舗あたりの売り上げを上げることに着手しました。
当然「なんだあいつは」と思われるわけですが、
高倉さんは逆に、そういう「非常識」という悪評を作ることを望んで
取り組んだのだそうです。
綺麗事を言わない、退路を断つという覚悟を見せたのですね。
顧客を定義し「余暇につけるセカンドウォッチ」のコンセプトを設定
そして「The Art of Fusion(異なる素材やアイデアの融合)」
をテーマにした「ビッグバン」シリーズを発売する際も、
消費者からすると、異なる素材やアイデアの融合と言われても、
平均価格150万円ほどの時計を「欲しい」とは思わないことに気づきます。
そこでまずは顧客を明確にすることにしました。
最初は「金持ちの遊び人」を顧客にしようという声もあったそうですが、
それだと流行り廃りもあるし、まともな人が買ってくれないし、
マーケットもさほど大きくないのでは?と考えました。
ある程度お金のある人…と考えると、
日本には400万社の社長がいることを思い出し、
地方の成功した社長を顧客と設定したのです。
ところが、日本人は保守的で、
高級時計といえば、一番に「ロレックス」を付けるのが一般的。
一方、「HUBLOT」なんて誰も知りません。
そこで高倉さんは、
「HUBLOTはセカンドウォッチでいい」
として、「余暇につける時計」というコンセプトを定めました。
顧客がよく読む雑誌に連載
それから、「HUBLOT」を地方の成功した社長に知ってもらうために、
「日経ビジネス」にタイアップの記事を連載することにしました。
記事は19人の著名人の連載となっていて、
ソニーの出井伸之さん、サッカーの井原正巳さん、シェフの三國清三さん、
タリーズの松田公太さん、くまモンの小山薫堂さん、野球の王貞治さん等、
そうそうたる面々に「余暇に何をやっているのか?」を語ってもらったんですね。
時計のことは一切話していませんが、
「みんなが憧れる人が余暇につける時計」という形でメディアに出しました。
こうすることで、「すごい人たちがつけてるけど、自分だけ知らなかった」
と思わせることに成功しました。
こうして興味を持ってもらったら売れたんですね。
そして、19人の著名人に払うギャラが気になるところですが、
それまで日本で「HUBLOT」は売れていない。
お金がないわけですが、時計はあるわけです。
つまり、時計をプレゼントしていきました。
ちなみに、日経ビジネスへの連載も、
当時はたまたまリーマンショックがあり、
広告主が次々といなくなったタイミングだったので、
ウブロジャパンのような無名の会社の仕事も引き受けてくれたのだとか。
こうしたチャンスをものにしながら、
地方の成功した社長はもちろん、
芸能人やスポーツ選手、セレブたちが愛用する
高級時計ブランドとなりました。
消費者が求める価値に寄り添い、競合と異なる位置に立つ
高級時計の王道といえば、
消費者の頭の中には「ロレックス」が思い浮かぶと思います。
一方、消費者が想起するブランドの立ち位置は相対的なものなので、
後発でこの王道を目指すのは、「ロレックス」からシェアを奪うことと同義です。
なかなか厳しいものがありますよね。
この点、「HUBLOT」は、ブランドの立ち位置を
王道ではなく「余暇につけるセカンドウォッチ」に定めたために、
「ロレックス」と戦わずに済んだのですね。
つまり、「いつもは王道のロレックスを身につけているけど、余暇はもう少し遊び心のある高級時計がしたい」という、消費者が求める価値に寄り添ったおかげで、
セカンドウォッチとして「HUBLOT」が選ばれるようになったわけです。
そもそも高倉さんの思考の出発点が
「競合とは同じことはしない」
「他がやらないことをやる」
ことだそうですが、
今の日本での「HUBLOT」の評価を見れば納得ですね。
【サムライツ(R)】公式メルマガ(無料) | |
姓 * | |
名 * | |
メールアドレス * |